本の山が崩れて

『文藝別冊 バッハ』

(河出書房新社、2012)が

出てきたことは

何回か触れた通りです。

 

久しぶりに読み直して

以前はあまり関心が持てなかった

加藤拓未が執筆している

「ジャンル別 3段階鑑賞法 声楽曲編」を

興味深く読んだということも

少し前に書いた通りです。

 

バッハの教会カンタータへの関心が

再熱したというか

以前とは違う風に聴く

きっかけとなったのは

ミリアム・フォイアージンガーの

BWV51を収録したCDのライナーを

読んだからでした。

 

それ以来

ソプラノ独唱カンタータを

よく聴くようになったんですけど

上記「3段階鑑賞法」で

確認してみたところ

加藤が薦めるBWV51の録音が出てて

それが今回ご案内のディスクなのでした。

 

すでに廃盤であるため

Amazon で注文しといたのが

昨日、ようやく届きまして

一聴してみたところ

感銘を受けたので

取り上げる次第です。

 

アン・モノイオスのBWV51収録盤

(米Dorian: DOR-90306、2002.5.7)

 

演奏は

グレッグ・ファンフゲルド指揮

バッハ祝祭管弦楽団と

ベツレヘム・バッハ合唱団。

 

ソリストは

アン・モノイオス(S)

ダニエル・テイラー(C-T)

フレデリック・ウーリー(T)

クリストファーレン・ノムラ(B)です。

 

録音は2001年5月に

ベツレヘムの第1長老会派教会で

行なわれました。

 

 

ソプラノ独唱カンタータである

BWV51の他に

《昇天節オラトリオ》BWV11

カンタータ第34番

《おお永遠の火、おお愛の源よ》BWV34 が

収められています。

 

ディスクのタイトル前半

The Ascension Oratorio

《昇天節オラトリオ》の英語表記で

後半の and Two Festive Cantatas

「二つの祝祭カンタータ」

という意味になります。

 

BWV34は

聖霊降臨節・第1日目用で

イエスの昇天後、10日目

120人の信徒たちの上に

神からの精霊が降った

という出来事に基づくのだとか。

 

BWV51は

「三位一体節後 第15日曜日

およびすべての機会」用に

と自筆譜には書かれていますが

本来は別の用途のために書かれた

と考えられています。

 

聖霊降臨節の次の日曜日のうち

第15回目の日曜日のため

ということになりますから

収録順序としては

BWV11 → BWV34 → BWV51

となりそうなものですが

「すべての機会に」とあるので

許容範囲なのかもしれません。

 

ライナーに

何か書いてあるかもしれませんが

輸入盤なので対訳がなく

すぐには分かないのでした。(^^;ゞ

 

 

アン・モノイオスは

《昇天節オラトリオ》でも

アリアを歌ってますけど

最初聴いたとき

少年が歌っているのか

と思ったほどでした。

 

続く BWV51 の独唱も

少年のように聴こえたので

これが加藤拓未の琴線に触れたのか

と思ったものの

ライナーを確認して女性だと知り

再生機を変えてからは

女性としか聴こえなくなった

というオチがつきます。( ̄▽ ̄)

 

いずれにしても見事な歌唱で

自分の現在のところのお気に入り

マリア・ケオハネ版と比べても

甲乙つけ難いくらい。

 

エリオット・ガーディナーの

モンテヴェルディやバッハの録音に

参加しているようですので

今までに聴いたことが

少なくとも一度はあるはずですけど

まったく気づきませんでした。

 

慌てて手持ちのディスクを確認し

持っていないもので気になるものが

欲しくなってしまったという(苦笑)

 

 

BWV51のトランペットは

ローレンス・ライト

という人ですが

この名前で検索しても

同姓同名の作家・映画脚本家ばかり

ヒットしますけど

こちらの記事によれば

 

 

バッハ祝祭管弦楽団の

主席トランペット奏者のようです。

 

上掲の記事を読んで

ラリーがローレンスの愛称だと

初めて知らされましたが

それはともかく。

 

バッハ祝祭管弦楽団は

以下の記事よれば

 

 

モダン楽器による演奏団体のようなので

おそらくピッコロ・トランペットを

吹いているものと思われますが

歴史的奏法を踏まえているだけあってか

モノイオスの繊細な声を遮ることなく

バランスの良い演奏を聴かせています。

 

 

他のソリストでは

ダニエル・テイラーが

以前、当ブログでも

ペルゴレージ《スターバト・マーテル》を

バッハが編曲した詩篇 第51番に基づく

《消し去りたまえ、いと高きものよ、

わが罪を》BWV1083 を歌った

ディスクを2枚

紹介したことがありますから

 

 

 

おおっ、とか思ったり。

 

《昇天節オラトリオ》では

第4曲目のアリアを歌っていますが

このアリアは後に

《ミサ曲 ロ短調》BWV232 の

〈アニュス・デイ〉へ

転用されています。

 

《昇天節オラトリオ》自体は

グスタフ・レオンハルトが指揮した盤で

確か一度、聴いているはずですけど

そんなことは忘れており

びっくりさせられました(笑)

 

 

《昇天節オラトリオ》は

レチタティーヴォとソロのアリアが

くっきりクリアなのに対し

合唱が分厚くて

輪郭が明瞭でないので

今ひとつかと思いますけど

各アリアは聴き応えがありました。

 

合唱の方は

まだBWV34の方がクリアかな

という印象を受けています。

 

ベツレヘム・バッハ合唱団のメンバーは

ソプラノ14+15

(第1群+第2群。以下同じ)

アルト18+9

テノール9+6

バス12+9

ですから

全員が参加しているとすれば

分厚くなるのも

しょうがないんですけど。

 

 

自分は古楽原理主義者なので

モダン楽器によるものである

ベツレヘム・バッハ合唱団と

バッハ祝祭管弦楽団の演奏を

これ以上、集めようという気には

今のところなりません。

 

本盤に関しては

アン・モノイオスという

ソプラノの存在を

教えてもらっただけでも

価値のある1枚でした。

 

て、偉そうに書いてすみません。(^^;ゞ

 

 

何はともあれ

来年もこんな感じでしょうが

当ブログを

よろしくお願いします。

 

みなさま

良いお年を。(^^)/