レア・デザンドレと

トーマス・ダンフォードの

《イディル》

バルバラの

〈ねえ、いつ戻ってくるの?〉

Dis, quand reviendras-tu?

が歌われていることを知り

聴き比べのために購入したのが

こちらの盤です。

 

"La Voix des Géants" Collection: Barbara

(墺 Le Chant du Monde:

 274273637、2017.12.1)

 

購入は Amazon ですが

リリース年月日は

タワーレコード・オンラインに

拠りました。

 

〈巨匠たちの歌声〉コレクション

"La Voix des Géants" Collection

というシリーズの第27巻にあたる

紙ジャケ仕様の2枚組です。

 

 

バルバラの名前は

なんとなく知ってましたが

CDを買うのはもちろん

バルバラの歌だと意識して聴くのも

初めてだったりします。

 

とにかく

〈ねえ、いつ戻ってくるの?〉

が入っているCDを

と思って買ったもので

他に何が入っているのか

ということは

あまり気にせず書いました。

 

ライナーに書かれている

情報を基に調べてみたところ

1955年リリースの

レコード・デビュー盤から

1962年の4曲入りシングル盤を中心に

その間のLP盤からの曲も含め

2枚にまとめられたもののようで

そのため代表作というか

出世作の〈黒いワシ〉は

入っておりません。

 

逆に

日本でリリースされている

1枚もののベスト盤だと

〈ねえ、いつ戻ってくるの?〉

を収めたCDが見当たらず

海外でリリースされていて

〈ねえ、いつ戻ってくるの?〉も

〈黒いワシ〉も聴けるベスト盤は

ちょっとお値段が張るようでしたし

こちらを購入することに決めたのでした。

 

 

LP盤の

《バルバラ、ブラッサンスとブレルを歌う》(1960)と

《バルバラ、ブレルを歌う》(同)が

まるまる入っていますけど

ジョルジュ・ブラッサンスおよび

ジャック・ブレルという名前に

曲がりなりにも聞き覚えがあったので

おおっ、と思いました。

 

その一方で

《レクリューズのバルバラ》(1959)から

全9曲中5曲収録されてるんですが

〈レクリューズ〉が

シャンソン史上有名な

1951年創業のビストロだと知らず

(あるいは失念していて)

なにこれ? とか思っちゃったり。(^^;ゞ

 

 

そんなこんなで

ひと通り聴いてみた印象は

フランスの古いモノクロ映画に

流れているような感じ

というものでした。

 

50年代半ばから

60年代初めの演奏を

収めているからということも

あるんでしょうけど

嫌いな雰囲気でもないので

楽しめました。

 

深夜にひとり

イヤホンをつけて聴くのが

ベストだと思います。

 

 

ところで手元に

蒲田耕二『聴かせてよ愛の歌を』(2007)

というシャンソンの参考書があるんですが

この本のバルバラの項を見てみたら

散々ないわれようだったのには

辟易させられてしまいまして。

 

いくら

「初心者をミスリードしないように、

 つまらない歌はつまらないと

 はっきり書いた方がいいのである」(p.478)

というスタンスだからといって

これはないよなあ、とか思ったり。

 

バルバラが音楽学校に通い

フォーレやデュパルクの歌曲を学んだ

という情報はありがたかったんですけど

その伝記的情報に続いて

いうまでもなく、クラシックの才能がポピュラーでもそのまま通用するとは限らない。どだいクラシックとポピュラーでは、歌のフィーリングがまったくちがう。そのことは、音大出のいわゆる「日本のシャンソン歌手」の歌がたいてい聴くに堪えないことからも明らかだろう。バルバラが彼ら彼女らと同じレベルだとはいくらなんでも思わないが、なまじクラシックの頭声の発声法を学んだためにシャンソンをうたうための地声がダメになったことは間違いない。(p.422)

とか書いてありました。

 

前に読んだ時は

さほどとも思いませんでしたが

レア・デザンドレの《イディル》を

聴いた後だったこともあって

ちょっと眉を顰めた次第です。

 

ただその後に

クラシックがバルバラに与えた影響はマイナスのそればかりではなくて、クロマティックな進行を多用した彼女独特の繊細なメロディ・ラインにはフォーレやドビュッシーの好ましい影響を見て取ることができる。非和声音を大量にとり入れて調整をあいまいにぼかし、ふわふわ浮遊するような夢幻的な雰囲気を作り出すのはドビュッシーがよく用いた手だ。ポピュラー音楽の生命は何も旋律美のみにあるわけではないが、こうした作風がとりわけ初期の彼女の歌に優美な抒情性と気品を与え、当時大流行していたツイストやサーフィンの刺激的な活気とは趣味と感覚の上で相容れない音楽ファンの飢えをみたしたことは事実だろう。(pp.422-433)

と書いているのは

参考になりましたけど。

 

 

歌詞カードがないのはもとより

解説も英文と仏文で

簡単に書かれているだけに

やや気になる記述があるとはいえ

蒲田の本が解説代わりとなり

助かりました。

 

本はやっぱり

買っておくものです。( ̄▽ ̄)

 

 

ああ、もうひとつ

ちょっと偏向してんじゃないの

と思われるような記述があったので

参考までに引用しておきます。

 初期のバルバラは、青白い文学趣味の歌詞といい、ぎくしゃく不自然に跳躍する技巧的なメロディといい(特に65年の〈孤独〉)、力を抜いた鼻歌調のヴォーカルといい、日本のいわゆるニュー・ミュージックをしばしば連想させる。というより、ぼくの嫌いな中島みゆきその他はこの時代のバルバラを手本にしていたのではなかろうか。彼女のファンはフランスでも日本でも、どういうわけか男性より女性の方が多いのである。(略)しかし〈黒い太陽〉に始まる68年の録音は、飛躍的に充実する。このころのバルバラには、歌詞に凝るだけではなく、リズムとサウンドに対する関心の芽生えがはっきりと見られる。(p.426)

「というより、ぼくの嫌いな」以下の一文は

あえて書かなくともいいような(苦笑)

 

なぜ男性より女性にファンが多いのか

という問題設定は

面白いと思うんですけど

書き手の女性観が

やや偏向しているため

突っ込んで考えられていかず

残念という感じです。

 

 

それはそれとして

〈黒い太陽〉に始まるバルバラの歌を

聴いてみたいと思った次第です。

 

聴いてみないことには始まらない。

 

今回購った盤には

バルバラのオリジナル曲は少なく

上記〈黒い太陽〉はもとより

せめて〈黒いワシ〉や

〈ナントに雨が降る〉くらいは聴ける

CDを買い足すべきかなあと。

 

聴くだけなら

ネットにアップされてるもので

いいんですけど

モノとして持っていたいですし。

 

……こうやってまた

懐が寂しくなっていく(遠い目)