『聴かせてよ愛の歌を』

(清流出版、2007.9.4)

 

副題「日本人が愛したシャンソン100」

 

戦前から戦後にかけて

日本人に愛されたシャンソン100曲を

レビューした本です。

 

付録として

レビューした中から選んだ

25曲を収録したCDが

付いてきます。

(上掲写真のCDケースは

 自前のものです、念のため)

 

 

冒頭に

「近代シャンソンの100年」と題して

プロローグ代わりのシャンソン史を

配しているほか

各曲のレビューのあとには

「シャンソン史を綴った人々」と題し

重要なアーティスト20人が

フィーチャーされており

これ1冊で1990年代までの

フランス・シャンソン史が鳥瞰でき

自分のような初学者にとって

たいへん勉強になる本でした。

 

何より、語り口が良いというか

肌にあってしまい

読み出したら止まらなくなり

持ち重りのする本であるにもかかわらず

久しぶりに寝る間も惜しんで

読みふけりたくなった本でした。

 

実際は眠気に負けて

途中で読むのを

止めざるを得ませんでしたが。(^^ゞ

 

 

前の記事にも書いた通り

シャンソンというのは

フランス語で歌われた唄を指しますが

この手のディープ・ソング紹介本で

まず紹介されることのない

60年代のフランス・アイドル歌謡

いわゆるイェイェも取り上げられてて

びっくり。

 

シルヴィ・バルタン「あなたのとりこ」

フランス・ギャル「夢見るシャンソン人形」

フランソワーズ・アルディ「さよならを教えて」

さらにはセルジュ・ゲンズブール

(本書ではガンズブール表記)とジェーン・バーキン

あるいはブリジット・バルドーとの

「ジュ・テーム〜モワ・ノン・プリュ」が

取り上げられた

シャンソン・ガイド本なんて

想像がつきますか?

 

 

100選の最後には

パリ発のワールド・ミュージックも

取り上げられています。

 

こういう選定からも分かる通り

いわゆる「おフランス」大絶賛ではないし

いわゆる「おフランス」なシャンソンでも

ダメなところはダメと書いているところに

書き手の鑑識眼と矜持が感じられ

一本筋が通っていて

読んでいて気持ちがいい。

 

単なる教条的なお勉強本になっていない

ゆえんでもあります。

 

こういう

うるさ方の書き手が褒めるからこそ

今さらな感があったり

教条的すぎる感があったりする

超有名曲でも

聴いてみたくなるわけでしてね。

 

 

上にも書いたように

付録としてCDが付いていて

100曲の中から25曲セレクトされ

最も良い状態の録音を選んで

リマスタリングされたものを収録。

 

そのリマスタリングを担当したのが

前回紹介したCDを出した

オフィス・サンビーニャです。

 

この本の仕事をした御縁で

前回紹介したCD

『シャンソン歴史物語』が

新たにリリースされたのでした。

 

 

こちらの付録CDの方には

「枯葉」(1954)や

「愛の讃歌」(1950)も

収録されています。

(カッコ内は録音年。以下同じ)

 

前者は

誰の歌唱が日本での定番なのか

分かりませんけど

ここではコラ・ヴォケールの歌唱が

収録されています。

 

後者はもちろん

エディット・ピアフの歌唱。

 

 

『昭和カタコト歌謡曲〈女声編〉』に入っていた

イヴェット・ジローが日本語で歌う

「バラ色の桜んぼの木と白い林檎の木」も

「バラ色の桜と白いリンゴの花」(1950)という題で

アンドレ・クラヴォーのフランス語歌唱が

収録されています。

 

著者の蒲田耕二によれば

イヴェット・ジローの歌唱は

「リズムを追うだけで精いっぱい。

聴いてられない」(p.145)とのことで

彼女の歌唱では収録されていません。

 

 

『シャンソン歴史物語』とのダブりは

ダミアの「かもめ」だけですので

(ダブりがあったのかと驚きましたが)

2枚合わせれば全48曲

驚くほどクリアな音で聴くことができます。

 

こちらの盤だと

スクラッチノイズが耳につくのは

リシュエンヌ・ボワイエが歌う

「愛の言葉を」(1930)くらい。

 

その「愛の言葉を」や

イヴェット・ギルベールが歌う

「辻馬車」(1934)、

イヴ・モンタンが歌う

「セーヌの恋」(1950)などの

ピアノ伴奏の音は

実に美しいですね。

 

ダミアの「人の気も知らないで」(1931)や

ジャクリーヌ・フランソワの

「マドモワゼル・ド・パリ」(1948)、

カトリーヌ・ソヴァージュの

「パリ・カナイユ」(1953)なんか

オリジナルで聴いてるはずがないんですけど

(多分、日本人の歌い手が唄うのを

 聴いているからでしょう)

聴き覚えがあって

懐かしいし、いい感じです。

 

 

日本人が日本語で歌うシャンソンは

全否定されているのが

ちょっと寂しいところですけど

この年齢になって

新しい世界の蒙を開いてくれた

という意味で

自分にとっての

絶賛愛読指南本確定の1冊です。

 

これでまた

レコードやCDを探すようになり

財布の紐がユルくなるかどうか

微妙なところですけど

ジョルジュ・ブラッサンスのレコードは

ちょっと欲しいかもなあ。

 

おやおや。┐(´∀`)┌

 

 

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