『昭和カタコト歌謡曲〈女声編〉』

(日本コロムビア COCP-39523、2016.6.29)

 

外国人アーティストが

日本語で歌った曲ばかりを集めた

アンソロジーの女声編。

 

以前こちらでも紹介した

フランス・ギャルが日本語で歌う

「夢みるシャンソン人形」も

収められています。

 

やはりこちらで紹介した

エミー・ジャクソンの

唯一の日本語歌唱曲

「天使のいたずら」も収録。

 

 

その他で

知っているといえそうなのは

ベッツィ&クリスと

アグネス・ラムですかね。

 

アグネス・ラムの歌う

「雨あがりのダウンタウン」は

 

『レコード・コレクターズ』

 2015年1月増刊号

70年代ランク外のリストに

あがっている作品ですが

何と作曲が弾厚作だと知って

びっくり。

 

というのも

ご存知の方もいるかと思いますが

弾厚作は加山雄三の

作曲する時の筆名ですから。

 

 

名前だけなら

ゴルファーのローラ・ボーも

知ってますけど

日本語で歌って

レコードまで出しているとは

知りませんでした。

 

人気があるから

雑誌の表紙を飾ってもらおう

という発想は

まだ分かるんですけど

どうして

日本語で歌わせようという発想が

出てくるのか。

 

日本の業界関係者の頭の中は

謎としかいいようがありません。

 

 

誰が歌っているのか

知らなかったけど

「エマニュエル夫人」の歌自体

というかメロディーは

知ってます。

 

ただ、日本語バージョンがあるとは

知りませんでした。

 

 

ダニエル・ビダルの

「オー・シャンゼリゼ」なんかも

曲の方は知ってましたけど

誰が歌っているのかは知らず

それだけに

創唱者が日本語で歌っているとは

思いもよらず。

 

あと、弘田三枝子のカバーで有名な

「ヴァケイション」を

創唱者のコニー・フランシスが

日本語で歌ったものを

収録しています。

 

 

日本人がカバーしてヒットしたものを

創唱者に日本語で歌ってもらおう

というあたり

フランス・ギャルに

日本語で歌ってもらうのと同様の

倒錯的なものを感じてしまうのは

自分だけでしょうか。

 

それを粛々とこなすだけでなく

上手く歌いこなしてしまう

向こうのアーティスト

特にヨーロッパ系のアーティストの

力量とプロ意識には

脱帽という他ありませんけど。

 

 

サンドラ・アレキサンドラという

もちろん、本名じゃないでしょうけど

駄洒落みたいな名前の人が歌う

「夜霧よ今夜もありがとう」は

石原裕次郎の持ち歌として

よく知られているかと。

 

意外と上手く歌いこなしてて

ちょっといい感じ。

 

サンドラ・アレキサンドラではもう1曲

佐良直美の持ち歌として知られる

「いいじゃないの幸せならば」が

収録されています。

 

こちらは

半間巖一という人の編曲になる

ギター・アレンジが

実にカッコいい。

 

 

カンツォーネ歌手ミルバの歌う

「ウナ・セラ・ディ東京」は

ザ・ピーナッツの持ち歌として

知られているかと思いますが

もともとは「東京たそがれ」(1963)

というタイトルだったそうです。

 

ミルバが改題して歌ったあとに

ピーナッツの方も改題して

再録したのだとか。

 

これは知らなかったので

びっくり。

 

知らなかったといえば

「ウナ・セラ・ディ」の意味を

検索してみたところ

One Twilight of Tokyo を

イタリア語に訳したら

Una sera di Tokyo となるらしく

なんのことはない

元の曲名のイタリア語訳だと

今回、初めて知った次第で。

 

ミルバのカンツォーネ調

「ウナ・セラ・ディ東京」

実にいい雰囲気です。

 

 

カテリーナ・ヴァレンテも

「ウナ・セラ・ディ東京」を

カバーしているそうですが

ここに収録されているのは

「恋のバカンス」。

 

ビッグ・バンド風のアレンジが

いい感じなんですけど

編曲者が書かれていないのが残念。

 

ドイツのアレンジャーなのか知らん。

 

 

「バラ色の桜んぼの木と白い林檎の木」

という長いタイトルの曲を歌うのは

フランスのシャンソン歌手イヴェット・ジロー。

 

もともとはアンドレ・クラヴォーという人が

1950年に歌ったものだそうですけど

あたう限り原曲の意味を汲み取った

訳詞のすばらしさもさることながら

日本語に直しても

シャンソンのように聞こえるというか

日本人のシャンソン歌手が歌っているように

聞こえてくるから、不思議。

 

 

マーガレット・アンと

テレサの声質は好み。

 

それだけでなく

日本語歌唱がきわめて自然。

 

テレサは当時14歳で

勝新太郎の事務所に

所属していたのだとか。

 

それもあって

日本人アイドルと比べても

遜色ない気がします。

 

遜色ないといえば

ヴィッキーもそうかな。

 

 

自然という意味では

ジューン・フランシスや

ジョニー・デイビスも、そう。

 

ジューン・フランシスの歌は

まるで渚ゆう子の歌みたい。

 

ジョニー・デイビスの曲に

「蝶の羽音に」という歌詞があって

「蝶のハートに」と

聞こえなくもないんですが

「蝶のハートに」と歌っても

前後の意味と矛盾しないから不思議。

 

作詞は三浦徳子ですが

これは偶然なのか狙ったのか。

 

狙ったのだとしたらすごいけど。

 

 

カーン・リーの反戦歌

「雨に消えたあなた」(1970)は

しみじみとした良い歌で

後に加藤登紀子も歌ったのだとか。

 

森山良子の「さとうきび畑」(1969)や

シルヴィ・バルタンの印象的な名曲

「悲しみの兵士」(1969)などを

連想させるところもありました。

 

当時はベトナム戦争の最中でしたし

こういう歌が多かった

ということですね。

 

 

そのシルヴィ・バルタンの

日本語歌唱曲を収録していないのが

ちょっと残念。

 

とはいえ

鷲巣功による

各曲の解説も読みごたえがあり

昭和歌謡ファン

中でも女性歌手が好きな方であれば

聴いて損はない1枚だと思います。

 

男声編も出ていますが

そっちは……どうしましょうね。( ̄▽ ̄)

 

 

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