ヴィヴァルディの

オペラからのアリアを

コンサートのプログラムになりうる

魅力を持った曲として

再発見した功績は

チェチーリア・バルトリに

帰されると思われます。

 

実際にそれを証明してみせた

といえそうなのが

前回ご紹介のライヴ

《ヴィヴァ・ヴィヴァルディ!》

だったわけです。

 

そのライヴが企画された

きっかけとなったと思われる

オール・ヴィヴァルディ・プログラム

というべきCDが

今回ご案内のこちら。

 

バルトリ『そよ風のささやき』

(ユニバーサル ミュージック

 POCL-1909、1999.12.22)

 

当時の原盤レーベルは

イギリスのデッカ。

 

器楽伴奏は

ジョヴァンニ・アントニーニ指揮

イル・ジャルディーノ・アルモニコで

合唱が伴う曲に

アルノルト・シェーンベルク合唱団が

加わっています。

 

録音は1999年7月。

 

 

このCDは

日本でのリリース時

要するに本盤が出たときに

店頭で見たような記憶が

あるんですけど

当時はバロックの中でも

器楽曲に興味があったため

当然ながらスルー。

 

なのにその後

これを買ったきっかけは

少し前の記事

ちょっと書きましたけど

ユリア・レージネヴァが

本盤を聴いて

ソプラノ歌手を目指した

というインタビューでの発言を

読んだからです。

 

輸入盤だと

まだ廃盤ではないはずですけど

(つい最近、LPレコードになりました)

どうしてもタスキ(オビ)付きの

邦盤が欲しいという

例によって悪い病気が出て

レージネヴァの話を知ってから

入手するまでに時間がかかったのも

今では良い思い出。( ̄▽ ̄)

 

 

本盤より先に

前回ご紹介のDVDを

たまたま観ていたわけですが

実際にCDを入手して聴いてみると

収録曲が微妙に異なっており

DVDの方は器楽曲も

演奏されていたのに対し

本盤はオペラからのアリアのみ。


〈双方からの風に翻弄されながら〉

が入ってないのは残念ですけど

それに勝るとも劣らないアリアが

やはり《グリゼルダ》から採られて

歌われています。

 

弦楽合奏曲《四季》の

〈春〉や〈冬〉の旋律を

彷彿させる伴奏が聴かれる

アリアもあって

興味は尽きません。

 

バルトリの

コロラトゥーラの凄さ、見事さが

伝わってくる曲がいくつも

入っているのはもちろん

しっとりとした曲も入っていて

ヴィヴァルディのオペラ・アリアの魅力を

十全に伝える1枚になっている

と思います。

 

 

そしてこちらも

買ってすぐ聴いた時より

今現在の自分の方が楽しめていて

いろいろな演奏をそれなりに

聴いてきたからかなあ

と改めて思いました。

 

名盤だという評判よりも

聴く方が経験を重ねて

曲に慣れている方が

楽しめるということは

長らくバロック音楽を

それなりに聴いてきたことを通し

強く実感されることだったりします。

 

 

驚いたのは

バルトリ自身が

トリノの国立図書館に赴き

ヴィヴァルディの手稿譜を見て

曲をセレクトしていること。

 

当時における世界初録音が

6曲も含まれているのは

そのためでもあります。

 

そうした事情が

ライナーで書かれているのを読み

古楽演奏マニアとして

興味をそそられました。

 

このライナーの解説を

読めたというだけでも

邦盤を探して買った甲斐が

あったというもの。

 

 

なお、邦盤タイトルは

冒頭に収録された1曲目

《テンペのドリッラ》

(本盤だと

 《テムポー渓谷のドリッラ》と

 訳されていますが)

からのアリアのタイトルです。

 

ちなみに

弦楽合奏曲《四季》の

〈春〉の旋律が

流用されているのは

このアリアです。

 

ジャケット(ライナーの表紙)の

バルトリの澄ました横顔も相まって

さわやかな曲が収録されている

という感じが漂ってますけど

〈そよ風のささやきに〉に続く曲は

《グリゼルダ》からの激情あふれるアリア

〈恐ろしい嵐のあとは〉なのでした。

 

このイメージの落差に

ハートをつかまれると

バルトリの、というか

ヴィヴァルディのアリアの

虜になってしまうわけですね。

 

原盤のタイトルは

The Vivaldi Album

邦盤では意味を汲み言葉を補って

「ヴィヴァルディ・オペラ・アリア集」

と訳して副題にしています。

 

 

器楽伴奏の

イル・ジャルディーノ・アルモニコは

リコーダー奏者の

ジョヴァンニ・アントニーニが

1985年に創設した

イタリア初の古楽アンサンブル。

 

鍵盤奏者リナルド・アレッサンドリーニが

その1年前に創設した声楽アンサンブル

コンチェルト・イタリアーノ、

そして1990年に

ヴァイオリニスト

ファビオ・ビオンディが創設した

エウローパ・ガランテ。

 

この三つのグループが登場したことで

イタリア系の奏者が牽引する

古楽ムーブメントが起こり

ヴィヴァルディなど

イタリア系の音楽家のイメージや

イタリア系の音楽家の楽曲の奏法を

刷新したというふうに

記憶しています。

 

特にエウローパ・ガランテの

《四季》の録音が大いに話題となり

自分は基本的に

邦盤しか買わなかったにも関わらず

評判に釣られて

輸入盤を新譜で購入して聴き

すごいと思ったことを

昨日のことのように思い出します。

 

それだけに

バルトリの本盤を買ったとき

イル・ジャルディーノ・アルモニコ

という名前が載っているのを見て

おおっ! と思うと同時に

懐かしみを覚えた次第です。

 

 

レージネヴァの

ソロ・デビュー盤において

器楽伴奏を担っているのも

イル・ジャルディーノ・アルモニコで

あの時も、おおっ! と思ったことは

同盤を紹介した記事でも書きました。

 

バルトリに憧れて

歌手を目指したレージネヴァだけに

あえてこのアンサンブルが

配されたのか。

 

バルトリの盤を買ったことで

そんなことを考えさせられたりも

したのでした。