前回ご案内

レア・デザンドレが歌う

ヴィヴァルディのオラトリオ

《ユディットの勝利》からのアリア

〈松明と毒蛇を携え、ものものしく〉

の映像の最後で

CDのジャケットが写りましたが

そのジャケ写を見た途端

「あ、これ持ってる!」

と思い出しまして。

 

そこで探そうと思いたち

CDの山をひっくり返し

さんざん苦労させられて

結局、最初に探した山に

紛れ込んでいたのを見つけ

ウンザリさせられた次第です。

 

それはともかく何はともあれ

出てきたCDがこちら。

 

Vivaldi Jupiter

(ナクソス・ジャパン

 NYCX-10101、2019.10.25)

 

原盤は Alpha レーベルで

原盤の企画品番は

ALPHA 550 となります。

 

録音は2018年11月に

フランスのアラス歌劇場で

行なわれました。

 

上掲は国内流通盤で

原盤ライナー解説の日本語訳付き。

 

 

日本語訳だと

デザンドレ Desandre は

「デザンドル」となってますが

これはフランス語読みでしょうか。

 

ワーナーミュージック・ジャパンの

サイト内のプロフィール記事では

「デザンドレ」表記だったりします。

 

また、アンサンブルも

「ジュピテール」と訳されてますが

これもフランス語読みで

ローマ読みは「ユピテール」のはず。

 

ということがありまして

前回の記事と今回とで

表記の揺れが生じるのは

ご海容いただければと思います。

 

 

それと、CDのタイトル

Vivaldi Jupiter

英語読みすると

「ヴィヴァルディ・ジュピター」

ですけど

アンサンブル・ジュピテールと

掛けてあると思われますので

「ヴィヴァルディ・ジュピテール」

でしょうね。

 

2行に分かち書きされると

ヴィヴァルディに

ジュピター(ユピテル)という

歌劇があるように思いかねませんけど

そういう作品はありません。

 

ヴィヴァルディは

バロック音楽界において

ジュピターにも喩えられる存在だ

というニュアンスをこめた

タイトルなんでしょう。

 

「ヴィヴァルディ:

 アリアと様々な協奏曲」

タワーレコード・オンラインでは

 「メゾ・ソプラノのためのアリアと

 様々な協奏曲」となってますが)

という副題は邦盤のみのものです。

 

 

こちらの盤を買ったころは

ヴィヴァルディの声楽曲

特に宗教曲の面白さに開眼して

激ハマりしていたころにあたり

ヴィヴァルディの新譜で

面白そうなものがあると

買っていた時期だった

かと思います。

 

ただ、

本盤に収められている声楽曲は

オペラからのアリアがメインで

宗教曲やカンタータでもないのに

よく買ったなあと思いますが

久しぶりに聞いてみると

なかなか面白く聴ける1枚でした。

 

それは

ある程度ヴィヴァルディの声楽曲を聴き

少しは経験を積んだかなと思える

今になって聴いたからということも

与っているように思います。

 

 

新譜で購入して

最初に聴いた時は

宗教曲の中から

アリアをひとつ抜き出して歌う

というのは、どうよ

とか思っていたはずの

《ニシ・ドミヌス》のアリア

〈そのかたが、愛する者たちに〉。

 

これは当ブログでも

ジュリア・ドゥイ=フェラン

YouTube での演奏を皮切りに

何回か取り上げたことのある

〈主は愛するものに〉です。

 

 

あと

歌劇《グリゼルダ》からのアリア

〈双方からの風に翻弄されながら〉

Agitata da due venti

チェチーリア・バルトリの歌唱で

よく知られるようになった

有名曲ですね。

 

手元には

パリのシャンゼリゼ劇場で

2000年9月に行なわれたライヴ

《ヴィヴァ・ヴィヴァルディ!》の

DVDがありますけど

 

《ヴィヴァ・ヴィヴァルディ!》DVD

(アイヴィー 100229、2001.8)

 

YouTube にアップされている

以下のものと同じかな。

 

 

〈双方からの風に翻弄されながら〉

(アイヴィー盤だと〈2つの風に乱されて〉)は

プログラムの最後の方なので

この曲だけを聴くのであれば

以下のものが便利かと思います。

 

 

コロラトゥーラの凄さが

よく分かりますし

たいへん迫力のある映像ですが

すごいパッセージを歌い上げた時に

ちらりと見せる笑顔がいいですね。

 

 

上で

バルトリによって

知られるようになった曲

と書いたのは

こちらは後に

韓国人カウンターテナー

カンミン・ジャスティン・キムが

キムチリア・バルトリ

Kimchilia Bartoli と称し

パロディにする際

選択された曲だからです。

 

 

この映像は

バルトリの歌唱を見て知っていると

とにかく笑えるんですけど

伴奏を担当する

リシャルド・ボードリー

Lichald Bordley が

ピアノひとつで弾きこなすのも

何気にすごいと思っています。

 

 

それはともかく

ジュピテール盤にはアリアの他に

ファゴット協奏曲 ト短調 RV495

チェロ協奏曲 ト短調 RV416

リュート協奏曲 ト短調 RV93

という器楽曲が3曲

収められています。

 

このうち

ファゴット協奏曲は

ファゴットの音が

サックスのように

聴こえるようなところもあって

これがバロック時代の

ファゴットの音なのかと

びっくりさせられました。

 

リュート協奏曲も

以前、聴いたことのある

ヤコブ・リンドベルイのものより

リュートの音が

くっきりはっきりと

聴こえるように思います。

 

これは

日本語解説にもあるように

弦楽合奏ではなく

室内楽編成で

演奏されているから

でしょうかね。

 

 

上に書いたことからも

分かるかもしれませんが

白沢達生による日本語解説は

曲を鑑賞する上で

非常に助けになりました。

 

日本盤のタスキ(オビ)には

「次々と新たな才人が現れる

 近年のフランス古楽界の

 競争率とクオリティ。」

と書かれていて

これなんかを根拠に

フランスの古楽界が元気だというのが

自分だけの印象ではないことが分かる

と書いてしまうと

手前味噌になるかしらん。( ̄▽ ̄)

 

 

あと

今回聴き直して

思い出しましたけど

原盤ライナーや日本語解説には

言及されていない

ボーナス・トラックが

ついてます。

 

Discogs のデータによると

We Are the Ocean

という曲のようですが

まるでフォークソングのようで

なぜこれがボーナストラックとして

入っているのかは不詳です。

 

もしかしたら

ジュピテールのオリジナルだから

なのかもしれません。

 

 

原盤CDのライナーには

前回ご案内の YouTube の映像と

同じアングルの写真が載っていて

前回の映像がプロモーション用である

ということが、よく分かります。

 

ところが

本記事を書いている時

上記のプロモ映像とは違う

デザンドレとジュピテールによる

オラトリオ《ユディトの勝利》からのアリア

〈松明と毒蛇を携え、ものものしく〉の

面白い映像を見つけたので

以下に貼り付けておきます。

 

 

なんか、

ライブハウスのようなところで

ライブハウスに出演するような感じの

衣装を着て歌っても

まったく違和感なく聴けるのがすごい。

 

トーマス・ダンフォードなんて

リュートを弾いているようには見えず

まるでポップスかロック・バンドの

演奏者のように見えます。

 

ヴィヴァルディはロックだった!

と思わず叫びたくなりますね。( ̄▽ ̄)