オフェリー・ガイヤール『ヴィヴァルディ:協奏曲集』

(キングインターナショナル

 KKC-6199、2020.5.30)

 

原盤は Aparté レーベルで

2020年2月27日に

リリースされた2枚組の

国内流通盤です。

 

リリース年はいずれも

タワーレコード・オンラインに拠ります。

 

録音は2019年8月27日から9月3日で

できたてホヤホヤの新譜

といえそうな1枚ですね。

 

 

オフェリー・ガイヤールは

フランスのチェリストで

したがって正確にいえば

チェロ協奏曲集となりますが

なぜか日本流通盤の邦題から

チェロの文字が抜けています。

 

チェロ協奏曲だけでなく

チェロが伴奏を務める

声楽曲(アリア)が2曲

収録されているからでしょうか。

 

 

もっとも原盤のタイトルは

I colori dell'ombra

オリヴィエ・フーレ執筆の

ライナーのタイトルにもなっていて

日本語ライナーだと

「陰翳の色彩」と訳されています。

 

「陰影」ではなく「陰翳」なのは

フーレが谷崎潤一郎の

『陰翳礼讃』の一節を

エピグラムにしているからでしょう。

 

 

合奏を務めるのは

プルチネッラ・オーケストラで

2挺のチェロが必要な楽曲に

日本人チェリストの酒井淳が

共演者として加わっています。

 

ファゴット(バスーン)との

二重協奏曲もあり

ファゴット奏者は

ハヴィエル・ザブラという人。

 

そのファゴットとの二重協奏曲が

チェロ協奏曲 ホ短調 RV409 で

以前、フルニエが演奏する

ヴィヴァルディの

チェロ・ソナタを編曲した

チェロ協奏曲を紹介した際に

ホ短調協奏曲もあると書いたのは

今回の RV409 のことです。

 

 

声楽曲の歌い手は

ルシール・リシャルドー(メゾ・ソプラノ)と

デルフィーヌ・ガル(コントラルト)で

後者は、以前こちらのブログにおいて

カンタータを歌ったCD

取り上げたことがあります。

 

それに惹かれて買った

というところが

なきにしもあらずなんですけど

器楽曲の演奏が例によって

エモエモのエモで

そのカッコよさに

圧倒されてしまいました。

 

ホ短調協奏曲 RV409 なんて

こんな曲だとは思わなかった

というくらい

エモかったです。

 

 

通奏低音が楽章によって

オルガンとチェンバロを使い分ける

というのは

もはや当り前みたいですね。

 

それだけでなく

ギター、テオルボ、ハープは

まだ当り前、

プサルタリーまで持ち出して

不思議な音色を醸成しています。

 

プサルタリーが使われるのは

シンフォニア ハ長調 RV112 の

第2楽章 アンダンテと

チェロ・ピッコロのための協奏曲 ロ短調

RV 424 の第2楽章 ラルゴにおいて

(かな?)

 

 

上のシンフォニア ハ長調では

パーカッション

(タンバリン)も加わるので

イベリア半島辺りの舞踊曲を

聴いているような感じもしたり。

 

ホ短調協奏曲の第3楽章における

ギターの奏法も

スペインな印象を

醸し出している気がします。

 

 

シンフォニアに関しては

音楽劇などの導入として

作曲されたものが多いそうなので

想定される音楽劇をイメージすると

舞踊曲風になるのかもしれません。

 

だとしたら

どんな音楽劇を想定したのか

それについてひと言

ライナーでふれてくれてもいいのに

とか思っちゃいますけどね。

 

 

プサルタリーやパーカッションが

ヴィヴァルディの直筆譜に

指定されているのかどうか

素人考えでは

ちょっと疑問なんですけど

ヴィヴァルディ自身

通奏低音などは当時の慣習もあって

かなり省筆されているようなので

ここまでイマジネーションを

展開する余地が生まれるんでしょう、たぶん。

 

ヴィヴァルディの演奏は

今が旬だということを

強く感じさせる1枚だと思います。

 

 

ちなみに

日本流通盤なので

ライナーの訳が付いてますが

アリアの歌詞の対訳は

付いていません。

 

これにはびっくりでした。

 

 

また

これは原盤の問題ですけど

CD1が約53分

CD2が約38分という

バランスの悪さは

いかがなものかと思います。


これにもびっくりでした。

 

 

そのCD2には

ピエタ慈善院のチェリスト

テレーザのために書かれた

チェロ協奏曲 変ロ長調が

収録されています。

 

テレーザのために書かれた曲は

全部で3曲あるそうですが

いずれも不完全な形でしか

残っていないのだとか。

 

今回、ヴィオラ・パートに基づいて

オリヴィエ・フーレが復元した

緩徐楽章のラルゲットのみ

収録されています。

 

異様に重苦しいのが印象的な1曲。

 

 

また、こちらは

テレーザと関係ありませんけど

チェロ協奏曲 イ短調 RV419 が

単楽章(アレグロ)のみの収録です。

 

定旋律の上を

ソロ楽器が出入りするあたり

ボレロみたいなところもあって

面白い楽章ではあるんですが

短くて物足りないのが残念。

 

なんで3楽章すべてを

収録しなかったんでしょう。

 

収録してくれれば

もう少し尺が増えて

CD1とのバランスも

よくなっていたでしょうに。

 

……と考えるのは

貧乏性なのかしらね。(´∀`;)

 

 

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