メキシコペソ生活76

  VAMOS MEXICO

　先々週12日に8.20円台に下落して年初来安値を更新したペソ/円相場は、期待どおり先週8.69円台まで反発しました。

　17日に8.472円前後で取引が始まると、その後は上値下値ともに切り上げながら続伸し、20日にはおよそ2週間ぶりに8.692円前後まで上昇しました。メキシコの大統領選・議会選を受けたペソ売りの負の連鎖はようやく一巡した模様です。

　なお、20日にはシェインバウム次期大統領が新政権で通商交渉を担う経済相にエブラルド前外相を起用すると発表。ロイター通信によれば、エブラルド氏はトランプ政権を含む米国との外交を無難に運営して、企業寄りの人物と評価されていることから、市場はこの人事を好感した模様です。そのほか、先週はドル/円が157円台から一時159円台に上昇するなど円が下落。そうした円安の動きもペソ/円を押し上げる要因となりました。

　
　最近のメキシコ市況は大統領選挙・総選挙後の混乱が続いていたが、先週後半から、通貨ペソ、ボルサ株価指数、10年国債の市況が徐々に回復している。選挙後では、ペソ円が6.49％安、ドルペソが8.05％安、ボルサ指数が3.35％安、10年国債が10.37％で選挙後の最悪の事態（ペソ円8.212、ドルペソ18.7356、ボルサ51807、10年国債10.59％）からは反発。年間ではペソ円は4.22％高で12通貨中10位。依然、円よりは強い通貨です。
　この間には、AMLO大統領の「ペソは強い経済のため堅調に推移する」中銀総裁の「過度な動きには介入する可能性」財務省からは「連邦税収は2024年の最初の5か月で過去最高となった」米国務省の「メキシコの司法改革について「透明性」の重要性を強調」などの発言もメキシコ市場を支えてくれました。
　
　メキシコ以外でも、5月末から6月始めに、南ア、欧州議会選挙が続き、市場は混乱しました。ただいずれも落ち着いてきた。いずれも民主主義国家なので、国家に損害を与える政策は、修正される。「ならず者的カオス」状態にはならない。実体は混乱していないが表面的な事象を追う市場が混乱したということです。

　ただメキシコの場合、もともと財政赤字拡大、不安定な貿易経常収支があるのは事実である。その中で金利差だけ求めた資金が右往左往したのだろう。シェインバウム次期大統領は、AMOLO大統領の財政拡大によってもたらされた赤字を認識、改善に努めると発言。ニアショアリングが進むことで税収も増加しているので改善させることは十分可能だと思います。
　貿易経常赤字は、ニアショアリングの進展による資本財の輸入増で赤字が膨らむことがあるが、それは前向きな赤字であって将来の安定黒字が想定されます。

　そして、シェインバウム次期大統領は19人の国務長官のうち最初の6人と法律顧問1人を発表しました。
　閣僚は男性3名と女性3名で構成されて、これは男女平等の公約と一致している。またシェインバウム氏も科学者であるが科学に造詣の深いルイス氏を新設される科学・人文・技術・イノベーションの長官に任命しました。
　注目は、前述のように経済相にエブラルド前外相を起用したことで、「USMCA（米国・メキシコ・カナダ間の自由貿易協定）」は

2年後に見直し時期を控える。外交経験豊富なエブラルド氏への期待は大きい。トランプ大統領が再選された事態にも対応していくためには適任かもしれない。6月27日にさらに6人の閣僚人事を発表する予定らしいです。

　今後は6月24日の6月前半の消費は物価を経て6月27日の政策金利決定となる。2024年1Qの民間支出が23年4Qよりも拡大したことがわかった。総需要は経済が堅調に推移していることを示しておりインフレ再加速のリスクにより、中銀が金融政策を緩和することを思いとどまらせる可能性がある。2024年1Qの総需要は前四半期比1.5％増加し、2023年4Qを0.4％上回った。1Qの民間支出は前四半期比1.5％増加し、4Qを0.9％を上回りノリノリです。
　そこでシェインバウム次期大統領の最初の仕事は事は、2025年度予算を策定することだ。ここでの最優先事項は財政赤字を縮小することだ。財政赤字は2018年のGDP比2％から2024年には5.8％にまで拡大する見込みで、それによって同国の債務は持続可能であるという明確なシグナルを送ることになる。
　次の課題は減速ぎみの経済を再び加速させることだ。成長を加速させるために多くの西側諸国が推進している「ニアショアリング」つまりは中国よりも友好国や地理的に近い国にサプライチェーンを移す動きを活用すべきだ。

　パンデミックと中国との緊張の高まりの両方に対する反応であるこの傾向は、メキシコにとってより多くの外国投資を誘致する重要な機会となる可能性があります。