ロック自叙伝その282
次の日も、その次の日も、俺たちは自然に準備室に集まった。
誰が「行こう」と言ったわけでもない。 ただ、放課後のチャイムが鳴ると、足が勝手にそっちへ向かっていた。
目的なんて一切なかった。 文化祭に出ようとか、誰かを見返してやろうとか、そんな色気心は一切なかった。 ただ、誰かがギターを手に取れば、誰かがピアノの椅子を引き、誰かがドラムスティックを握る。 それだけだった。
ミチルは相変わらずコードを間違えるし、シンジはベースを弾きながらギターの未練を口にする。 ヨウコのはリズムが走りがちで、俺はそれを抑えるのに必死だった。 俺がドラムをやるとほかの皆もパートを変える。
でも、不思議と誰もイライラしなかった。 音がズレても、笑ってごまかせた。 大したテクなんて、誰も持っていなかった。 だけど、気持ちだけは、確かに通じ合っていた。
そんなある日だった。
「ちょっと、これ合わせてみない?」 ミチルが、ノートの切れ端を差し出した。 そこには、彼女が書いた詩が走り書きされていた。
「タイトルは?」 「まだない。でも、なんか…帰ってきた感じの歌」 「帰ってきた感じ?」 「うん。どこか遠くに行って、 でも、またここに戻ってきたっていう、そういう感じ」 
俺はその言葉に、胸の奥底がじんわありと熱くなるのを感じた。 サンフランシスコの霧、ジム・マーシャルの声、そして阿波の山の匂い。 全部が一瞬で蘇った。
俺はギターを手に取り、コードを探った。 Amから始めて、F、C、G。 どこか懐かしくて、でも新しい響き。次のサビに俺はCmaj7の分解3コードを突っ込んだ。
その瞬間、控室に風が吹いた。シンジがベースで低音を押支え、ヨウコが静かにリズムを刻む。 ミチルのピアノが、少し遅れて割り入ってきた。 最初はバラバラだった音が、その瞬間には、ぴたりと重なった。 ![]()

その瞬間、空気が変わった。
誰も言葉を発さなかった。 ただ、音がすべてを語っていた。 まるで、ずっと前からこの4人で演奏していたかのように、音が流れた。
それは、うまく言葉にできない感覚だった。 でも、確かに「これだ」と思った。 俺たちの音。俺たちだけの、まだ名前のない音楽。
演奏が終わると、しばらく誰も動かなかった。 ミチルが、ぽつりとつぶやいた。
「……今の、録っとけばよかったね」
「いや、また出せるよ」 俺はそう言った。





















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