ロック自叙伝 その189
スティーリー・ダンの不思議なサウンドに酔わされた会場も正気
を取り戻すとメインアクトのWingを待ちわびた。
何か言い残して消えていたNancyがやっと戻ってきた。
「順番待ちが長かった。」とのことで、どうも姉のAngieに電話
でスティーリー・ダンの報告をしていたらしく、結構お気に召した
もよう。
意外にNancyは気が利いてポテチコーラを買ってきた。あるいは
姉にこずかいを持たされているのか。
そうこうするうちステージ照明が灯いて、Wingsのセットが浮か
び上がった。 AmplitubeのギターアンプとVOXのベースのアンプ
と二個タムのドラムセットといたってシンプルなセットのほかには
アップライトピアノと honerのキーボードb-50が並ぶ。なにやら
コンガやボンゴなどのパーカッションもあるぞ。
やがてドラマーが現れセットに座ってやおらオフビートを刻み
始め、8ビートに変わるともう一人がボンゴを始める。
パーカッションが次第に消えて、再びドラムソロにもどる。
「これはPAチェックなんやろか?」
「さあねえ。リハーサルかもねえ。」
前列からざわめきが起こり突然スポットライトがポールを照らす
と場内に大歓声が走った。