ロック自叙伝 その183
「この新人バンドはとんでもない連中なのかもしれん。」と俺はこの先のシフトチェンジが気になりはじめた。
小太り男が「次の曲は"Fire in the Hole"」とだけ告げるとhonerのF37がホンキートンクなコード Dm7 E7, Gm7* Dm7, ×2 でイントロをストロークする。
大口の痩せ男はスローナンバーを噛みしめるように歌い始めた。
この曲は、今まで聴いた中で最も謎めいたロックではないポップ
ジャズの魔力に俺は襲われた。
マイナーな7/9の変拍子和音。ドミナントな7th和音とフラットな9th和音? 7thの反転でドミナントな和音は、しだいに安定する。
メガネ野郎の渦巻くスライドギターがこの曲をとてもパワフルにしている。メガネ野郎は小太り男の比べてとても控えめで、居心地の悪そうな感じがする。たぶん誰かの後釜にスカウトされたばかりに違いない。小太り男がすぐに辞めさせそうな気がする。
そんな外れ物の印象とは違って、メガネ男のギターワークは見事な冴えを見せて弾きまくる。彼のギターサウンドがバンドの屋台骨を支えているのは間違いない。