百舌鳥古墳群15(大阪府堺市)2024年1月19日
文化財保護法では貴重な国民的財産を保存し、一般公開など活用に努めるように定めている。陵墓も同じように文化財として扱い、公開を求める動きも始まってはいます。
しかしながら、宮内庁は頑なに「陵墓は十分保全管理されており
文化財保護法による史跡指定等は必要ない」との立場を崩さない。
被葬者も「現在の治定を覆すに足る確固たる資料はない」との
見解を繰り返す。それも道理だろう。古墳として客観的な事実が
続出した場合、歴代天皇の実在性はおろか、天皇家万世一系の根幹を揺るがす事態になりかねません。
百舌鳥古市古墳群の巨大古墳は、ヤマトの大王墳であることは
間違いないでしょう。しかしそれが直ちに後代の天皇に治定されるとの考えには無理があります。
ただ聖域の重い扉は僅かずつではあるが開きつつある。書陵部の担当者個人としては、透明度の高い調査研究に携わりたいはず。
同庁が保全や整備に伴う発掘現場を研究者らに公開して、今年で40年になる。研究者側の要望に応じた立ち入りも2008年に始まり回数を重ねている。水質やホタルの生態など自然環境調査の定期的な立ち入りも地元自治体に許可しています。
同庁による調査成果は毎年刊行される書陵部紀要で逐次報告されており、築造年代などを探る重要資料となっている。時には文中で遺跡名を紹介することもあり、陵墓が文化財的な価値を持つことは認めてはいます。
世界遺産登録にあたって、地元自治体と文化庁は一部の構成資産について「○○天皇陵古墳」など陵墓名のみ表記した。考古学者の多くは「世界遺産に登録されるのは学知が価値づけた古墳群であり『陵墓群』ではない。遺跡名を併記すべきだ」と批判している。
名称の一元化には陵墓と文化財のふたつの実態があることを隠してしまう。併記することが学びのきっかけになるはずです。