ロック自叙伝 その179
Dickey'sを出てセントラルガーデンを抜けフィルモアストリートを北に上ると、直ぐにフィルモアウエストに着いた。
ホールはほとんど満席で前座の登場を待っていた。俺たちは2階の
中央当たりの席についてステージを見ていた。
暫くすると例のプロモーターのビルグラハムが現れて、 opening performance 「Steely Dan」を紹介した。
俺は初めて聴いたその名前をNancyに尋ねた。
「知らないわよ。わたしはAngeyじゃない!」とお咎め受ける。
今夜は余計なお尋ねは慎むべしと身に染みる。
ステージには、ギターが2台とベース、キーボード、ドラムの他に
ボーカルらしいアフロのロングヘアが立っている。
右側の小太りのギターがカウントを取って最初の曲が始まった。
左端の小柄なメガネ野郎がいきなりリードを弾きまくる。
野郎のギターはテレキャスタイプだがイクイップはストラットに改造しているようで、野太いトーンでメインテーマを華麗にリードソロをとる。
出だしは、まるでサザン・ロックみたいなのが、その後ピアノがリードしてからは一転、洗練され曲調に変わってしまう。
リードソロに次いで、 DーA/C#ーBmーAのギターシャッフルでAメロのボーカルが入る。ボーカルは意外にも右後ろのキーボードの痩男がとる。
痩男はやたら巨大な大口をゆがめて、苦行であるかのように馬面
の離れ目を閉じて歌う。