背負投の場合、釣り手(襟を持つ手)の肘を畳んで入るという技の特性上、自分の釣り手の自由が奪われていない状況を作り出す事が重要になって参ります。
特に「ケンカ四つ」(右組み(釣り手が右手)vs左組み(釣り手が左手))の場合、釣り手の攻防は熾烈になります。
今回は影浦選手の背負投を題材に、掲題のテーマで考察してみたいと思います。
考察のネタとして使う動画はこちら
対戦相手の佐藤選手からすると、影浦選手の技で最も警戒すべきは背負投です。動画でも、序盤からほとんどの場面で佐藤選手が釣り手を下から持ち、影浦選手に釣り手を下から持たせない状況をキープする事によって背負投を無効化しています。
一方の影浦選手、背負投に入るためには何とか釣り手を下から持ちたいところですが、佐藤選手も警戒しており、中々状況を作らせてもらえません。
解説:釣り手を下から持ちたい理由
【白】がケンカ四つで釣り手を上から持った状態。【青】の釣り手が邪魔になり、背負投で肘を畳む動作の妨げになります。
【白】がケンカ四つで釣り手を下から持った状態。【青】の釣り手に邪魔されることなく肘を畳むことができます。
話を戻して、動画の4:35~、影浦選手が釣り手を下から持つ場面が現れます。
佐藤選手、すかさず背負投を無効化すべく、影浦選手の釣り手の上から内側に肘をこじ入れます。
ここで影浦選手の巧いところは、釣り手の自由を確保する事を優先するのではなく、敢えて釣り手は上から肘を入れられた状態のまま引き手を取りに行ったところ。
もしも釣り手を下から持ち、かつ釣り手の自由が利く状況だったら、おそらく佐藤選手は警戒して引き手を取らせてくれなかったでしょう。
佐藤選手に「組み勝っている」と意識させることによって、背負投を警戒させることなく引き手を確保した上で、瞬間的に釣り手の肘をずらしてガードを外し、間髪入れずに背負投に入っています。
背負投は、組み手で比較的不利な状態からでも、体をずらしたりしながら一瞬でも状況を作ることができれば入れる技だと思います。