あまり柔道に馴染みの無い方でも、井上康生さんの得意技であった「内股」はご存知かと思います。
これと似た技に「跳腰」というのがあります。
内股と跳腰の違いですが、
内股は右脚で相手の左脚(左組の場合は左脚で相手の右脚)を内側から跳ね上げる技
跳腰は右脚で相手の右脚(左組の場合は左脚で相手の左脚)を内側から跳ね上げる技
と考えて頂いて概ね差し支えないかと思います。
ちなみに技の分類としては、内股は足技、跳腰は腰技であり、似た技であっても本来は理合(技の原理)の異なる技です。
しかしながら、近年は跳腰のように相手を腰に乗せて跳ね上げる理合の内股が主流となった事で、跳腰と内股の境界が曖昧になり、厳密には跳腰と思われる技であっても内股と呼ぶ傾向が強くなっています。
「内股」を得意としている代表クラスの選手達の技を見ても、跳腰タイプの技を使っている選手の方がむしろ主流である事が分かるかと思います。
【跳腰タイプ】
丸山城四郎選手
大野将平選手
村尾三四郎選手
ウルフアロン選手
志々目愛選手
芳田司選手
【(本来の)内股タイプ】
原沢久喜選手
大野陽子選手
新井千鶴選手
興味深いのは、投げ込み等では跳腰タイプの技を使う選手であっても、実際の競技ではいわゆる「内股タイプ」の技を掛ける事が多い点です。
おそらく、跳腰のように相手を腰に乗せるつもりで内股を掛けると実践で巧く投げる事ができるため、技の要点を感覚として身に付ける目的で跳腰タイプの技を練習するのではないかと思います。
他にも大外刈など、練習で掛ける技と実践で掛ける技の形が異なるものは結構多いように感じますが、いずれも技の要点を身に付けるために敢えて実践とは異なる形で練習するのだと考えられます。