柔道が足りてない! -7ページ目

柔道が足りてない!

昨今、柔道人口の減少が深刻みたいなので、皆様にちょっとでも興味を持って頂けるような柔道ネタなど書いて行ければと存じます。

連日、熱戦が繰り広げられている世界柔道選手権ブダペスト大会ですが、初日の60kg級で優勝したアブラゼ選手(ロシア)が、「加藤返し」を多用していました。

 

通称「加藤返し」(加藤スペシャル)は加藤博剛選手の得意とする寝技の技術で、腕緘のように相手の腕をロックしてひっくり返し、裏固や後袈裟固で抑える技です。


技に入りやすい事と、まだあまりカウンター技術が浸透しておらず返されにくいという使い勝手の良さから、最近「加藤返し」を愛用する選手が増えている印象です。


それでは、腕を絡める「加藤ロック」に捕らえられた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?


世界柔道選手権では、とにかく腹這いになって返されないように耐える選手が多い印象でしたが、結局返されて抑え込まれてしまう場面も多く見られ、あまり良い対処方法ではありません。

素早く反応できる場合は、昨年の全日本選手権で佐々木選手が加藤選手との対戦でやったように、捕らえられた腕を上から跨ぐようにして腕挫十字固で切り返すのが良さそうです。



また、「加藤ロック」の状態は、実はお互いに加藤返しに入れる形でもあるので、相手の腹に後頭部を当てるようにして潜り込み、逆回転の加藤返しで切り返す方法もアリかと思います。
 

どちらの対処方法も、相手と「Tの字」の位置関係(横棒が相手、縦棒が自分)になるのがポイントです。

ちょっと早いですが、世界選手権の開催が迫ってきましたので、放送予定のお知らせです。

ネット中継の予定などは未定のようなので、現時点で分かっている分だけ。

阿部一二三選手と最後まで五輪代表を争った66kg級の丸山城志郎選手など、注目選手の活躍が期待されます。

ちなみに、地デジ放送は1日のみですが、大会は6/6~6/13の8日間です。


◆フジテレビ
https://www.fujitv.co.jp/sports/judo/world/index.html

2021/06/13(日)16:05
階級別ダイジェスト

2021/06/13(日)24:30
男女混合団体戦中継

 

 

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(追記)以下、地デジ以外の放送予定です。

 

◆JSPORTS 2 ※無料放送

 

2021/06/06(日)22:30

60kg級、48kg級

 

2021/06/08(火)22:00

66kg級、73kg級、52kg級、57kg級

 

2021/06/10(木)22:30

81kg級、90kg級、63kg級、70kg級

 

2021/06/11(金)22:30

100kg級、78kg級

 

2021/06/12(土)22:30

100kg超級、78kg超級

 

2021/06/13(日)22:00

男女混合団体戦

 

足を掛けたり背負ったりせず、手の崩しだけで投げる技は、通称「空気投げ」と呼ばれ、難易度の高さで話題となる事が多いようです。

その「空気投げ」ですが、正式には「浮落(うきおとし)」と「隅落(すみおとし)」に分類されます。

浮落(うきおとし)
後述する隅落と似ていますが、受(投げられる人)から見て前方向に投げると浮落になります。

 

「投の形」で一番最初に行う技が浮落ですが、この際には片膝を着きながら引き落とす勢いで投げます。

実践で使う場合は、相手の大外刈を透かしてカウンターで合わせたりします。

足を掛けない支釣込足みたいな感じで極まる場合もありますが、やはり相手がこちらの足を刈ろうとして軸足一本になった瞬間、かつ相手の刈り足を透かして、その勢いを利用すると巧く掛かる印象です。
 

ウィキペディアによると、「内股すかし」も元々は浮落の一種として扱われていたようです。


また、最近ではアゼルバイジャン式の浮落が話題となっています。

 


隅落(すみおとし)
浮落と同様、手の崩しだけで投げる技で、受から見て後ろ方向に投げると隅落になります。

 

三船十段の有名な「空気投げ」は、この隅落です。



シドニー五輪60kg級決勝、野村忠宏さんの隅落。


実践では、相手の支釣込足や小外刈を透かし、仰け反った相手に体を浴びせて極める形が多いようです。


また、近年多く目にする形として、内股や払腰を潰し、相手の釣り手側に捲り返す技は隅落に分類されています。

 

 

興味の湧いた方は、IJFの柔道テクニックサイトで、技名称(Uki otoshi、Sumi otoshiなど)で検索してみてください。

実際に国際試合で使われた場面の動画も検索可能です!

2018年7月に開催されたバクー世界選手権81kg級決勝戦で、モラエイ選手が藤原崇太郎選手を投げた「居反り」風の肩車はインパクト大で、以降この技を真似する選手も現れました。

 

 


当時、この技を初めて見たときの感想は「今のは何だ?」でしたが、リプレイを見返して、小生は違和感を覚えました。


というのも、「肩車を掛けながら後方に倒れるのは反則」というルールがあったように記憶していたからです。

今更ながら、モラエイ選手の「居反り」肩車が何故お咎め無しなのか、経緯を調べてみました。


まず、全日本柔道連盟が2014年当時のIJFルールを和訳した「国際柔道連盟試合審判規定2014~2016」によると、「立ち姿勢や膝をついた姿勢から、肩車のような技でまっすぐ後方に倒れること」は反則負けとの記述が見られます。

しかしながら、IJF公式サイトのアーカイブを探してみたところ、ルールを記載した資料『IJF Sport and Organisation Rules (SOR)』が残っているのは2010年、2015年、および2017年以降だったのですが、2010年版には本件は明記されていませんでした。

次に2015年版を見ると「肩車のような」という記載は無くなっていますが、「技を掛けながら、あるいは掛けようとしながら、まっすぐ後方に倒れること」は反則負けといった内容の記載がありました。

この条文は2018年10月版まで存在する事が確認できます。

ということは、厳密には2018年7月のバクー世界選手権の時点では、「居反り」肩車は「技を掛けながら、あるいは掛けようとしながら、まっすぐ後方に倒れること」に抵触しており、反則負けとするのが正しかったのではないでしょうか?

しかし、結果的に「居反り」肩車は黙認され、辻褄合わせのためか、次の2019年6月版SORでは「技を掛けながら、あるいは掛けようとしながら、まっすぐ後方に倒れること」を禁止する記載は完全に削除されました。

つまり、2019年6月以降、「居反り」肩車は反則では無くなったという事でしょう。


個人的に心配しているのは、日本国内で上記のルール変更について周知されていないのではないか?という事です。
先日のオンライン審判講習会でも、本件に関して特に言及はありませんでした。

「居反り」肩車が解禁された事を知らずに「反則負け」の判定をしてしまうと、試合がひっくり返ってしまいます。

これは、IJFルールがあまりにも頻繁に変更される事による弊害といって良いかと思います。

柔道には、どうしても怪我が付き物です。
特に大きな怪我をすると回復までに時間が掛かり、その間は柔道ができない事になってしまいます。

注意喚起も兼ねて、「こんな怪我をしました」という情報をシェアしたいと思います。


まず、怪我をしやすい状況ですが、以下のようなシチュエーションが多かったように記憶しています。

重量級との試合や乱取り中
重量級との乱取りは非常に良い稽古になりますが、同時に怪我のリスクも高くなります。

日頃あまり使わない技を使ったとき
乱取り中、咄嗟の閃きで日頃使わない技を掛けたりすると、イメージに身体の動きがついていかず、怪我をしがちです。

「今日は軽めの稽古にしとくか」などと思っているとき
「乱取りは常に全力!軽めの稽古などありえない」という方には縁のない話かと思いますが、生涯柔道を続けていこうとすると、軽めの稽古にしておきたい日だってあります。
 

軽めにしておく事と気を抜く事は本来全く別物のはずですが、つい無意識に気を抜いてしまいがちです。


また、乱取り相手に了解を得ておかないと、「こちらは軽めのつもりだったけど相手は全力だった」という事になり、怪我のリスクが高まります。

「今日は技がキレるな」などと思っているとき
調子が良い時ほど、逆に慎重さを欠いてしまいがちです。

何らかの「無理」をしているとき
無理やり強引な技を掛けたり、相手の技を無理に耐えようとしたり、急激な減量中だったりといった「無理」は、怪我の前兆と言って良いかと思います。



それでは、身体のどこを怪我しやすいのか、個人的な体験のいくつかを例に挙げてみたいと思います。


柔道の怪我で頻度が高く、しかも一度負傷すると復帰まで長い期間を要するのが膝です。

小生の場合、乱取りで重量級の相手に「立ち背負い」を掛けようとした際、返そうとした相手に斜め後ろから右膝に乗られ、膝から下が前にずれるような形で受傷。


診断結果は「右膝前十字靭帯断裂および半月板損傷」で、復帰まで1年近く掛かり、復帰後も1年ほどはテーピングとサポーターで固定して稽古していました。

 


「背負い使い」の宿命、肘の怪我です。

背負投と肘の怪我に関しては、別の機会に詳しく検証してみたいと考えていますが、小生も乱取りで背負投に入ろうとした際に右肘(釣り手)の内側側副靭帯を損傷。半年ぐらい整形外科に通ってリハビリをした記憶があります。


また、左肘に関してはブラジリアン柔術の練習で腕挫十字固を何百回と喰らい続けた結果、可動域が狭くなってしまいました。


試合で、相手の体落で投げられそうになった際、ポイントを取られないように体を捻ろうとして左肩から畳に落ち、負傷。「肩鎖関節損傷」との診断でした。

肩鎖関節が亜脱臼すると鎖骨の肩側の終端部(肩の上辺り)が出っ張ってしまい、見た目のインパクトが強くてびっくりしました。

ちゃんとリハビリしたおかげで現在は全く違和感は残っていませんが、鎖骨は出っ張ったままです。

足の指
乱取りで、日頃あまり使わない「浮技(うきわざ)」を掛けた際に、足の指が畳に引っ掛かってしまい、左足親指を負傷。
おそらく骨折していたと思われますが、病院には行かずに治したため、左足親指の付け根は外反母趾の形で固まってしまいました。

また、寝技で右足の中指を畳に引っ掛けてしまい、脱臼したこともありました。
指が変な方向に曲がってしまったのでびっくりして、咄嗟に自分で元の位置に戻しましたが、本当は自分で戻すのは良くないみたいです。
小生の場合は、幸い骨折していたわけでは無かったようで、ほぼ元通りに完治しました。

手の指
寝技の際、右手親指に乗られてしまい、突き指するような形で骨折。完治までは3か月ぐらいだったかと。

 

他の指も、柔道衣に引っ掛かって幾度となく負傷していますが、テーピングをすることで、ある程度は予防できるようです。

 

 

 

上記以外にも、尾てい骨、肋軟骨、手首など、枚挙に暇がありませんが、「相手に怪我をさせない、自分も怪我をしない」を常に心がけて、柔道を楽しみたいと思います。