原題;FEAR NO EVIL
製作年:1981
監督;フランク・ラロギア
脚本;フランク・ラロギア
音楽;フランク・ラロギア、デヴィッド・スピア
出演;ステファン・アーングリム、エリザベス・ホフマン、キャスリーン・ロウ・マッカレン
(ネタバレあり)
堕天使ルシファーと3大天使の闘いを描くホラーです。

人間に転生した堕天使ルシファーを滅ぼすため大天使ミカエル、ガブリエル、ラファエルが地上に派遣された。
ラファエルはデイモン神父に、ミカエルはその妹マーガレットに転生したが、ガブリエルは行方不明だった。
ルシファーが転生したボナモは、ニューヨーク湾の島の一つに建つローレンス城に潜んでいた。
デイモン神父は、ローレンス城に単身乗り込み、ルシファーを倒す。
しかし最期にルシファーは復活を予言した。
3天使が揃わねば真に聖務を果たすことはできない。

1963年に生まれたアンドリューは、教会で洗礼を受けていて突然血を流す。以後、彼の家族は諍(いさか)いが続き、家は寂れていく。
18年後が経ちアンドリューの誕生日、父親がケーキをひっくり返したことから夫婦ゲンカが始まり、転倒した母親の頭にアイロンが落下するという事故がおきてしまう。
「お前は何者だ?」父親はアンドリューに向かって叫ぶのだった。
アンドリューは学業では抜群で、高校では開校以来の秀才といわれている。

アンドリューの父親は郵便配達員で、近所に住むマーガレットとは親しくしていた。
マーガレットの兄デイモン神父は、ルシファーとの対決を殺人罪に問われ刑務所で獄死していた。
アンドリューの父親だけはデイモン神父が人殺しなどではないと信じている。
マーガレットは、ガブリエルの出現を待ち続けていた。
アンドリューの母親は事故以来廃人同様になっている。
ローレンス城は、建設主ボナモが発狂して姿を消したとされていて、多くの作業員も行方不明となっていた。
アンドリューは、この城の再建を夢見ている。

アンドリューは劣等性のトニーににらまれていた。
トニーはシャワールームで中性的なアンドリューにキスするというセクハラをするのだが、口がなかなか離れなくなり、二人が痙攣する事態となる・。
マーガレットは教会を訪れ、デイリー神父に真実を打ち明ける。だがデイリー神父には理解できず、マーガレットが自分たちの殺人を認めたくないだけだと考えていた。
アンドリュ-の同級生ジュリーは彼に抱かれる夢を見る。起きると背中には引っかき傷ができていた。
体育の授業に遅刻したアンドリューは50回の腕立て伏せを命じられる。
苦痛の極限に達した時、アンドリューの目が金色に光り、操られたのか興奮状態に陥った体育教師の投げた球でジュリーのボーイフレンドが死んでしまう。
マーガレットが兄の墓前で祈りを捧げていると木の枝が落下してきて負傷する。
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ジュリーは牢屋でリンチにあうデイモン神父の幻覚に襲われていた。
やがてジュリーは声に導かれ真夜中にマーガレットの家を訪れる。
マーガレットはジュリーがガブリエルの転生だと気づき、ともにルシファーと闘うように説得した。
アンドリューは犬を殺して納屋でその血を飲み、反キリストの儀式を行う。
高校では毎年屋外ステージを組んで上演される宗教劇の準備が始まっていた。
凶事が起こると兄の予言を聞いたマーガレットは上演の中止を求めるが相手にされない。
アンドリューの父親は酒場で「息子は悪魔だ」と暴れて取り押さえられる。
その頃、ローレンス城ではアンドリューが地中からゾンビを出現させていた。どうやら行方不明になっていた作業員たちらしい。
帰宅したアンドリューの父親は拳銃で妻を射殺する。

ボートを借りてローレンス城に乗り込もうとしたマーガレットとジュリーは、ジュリーの捜索手配が出ていたため警察に通報され逮捕されてしまった。
ローレンス城に繰り出してパーティーをしていたトニーたちはゾンビの襲撃を受ける。
演劇はキリスト磔(はりつけ)の場面になり、役者が本当に血を噴き出して息絶えてしまう。会場はパニックとなる。逃げまどう群衆を落雷が襲う。
パトカーは現場に急行。どさくさまぎれにマーガレットとジュリーは脱走する。
ゾンビに襲われ恋人を見捨てて逃げるトニー。乗ってきたボートも沈められていた。
城の中に逃げ込んだトニーはなぜか胸がふくらんでいた。彼はアンドリューの目前で自分の胸を刺して死ぬ。
アンドリューは最後に残ったブレンダを祭壇で刺し殺す。
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ようやく到着したマーガレットとジュリーは十字架の杓を手にアンドリューを追いつめた。アンドリューの手を取り自分の胸に当てて祈りを捧げるマーガレット。
アンドリューは死んだボーイフレンドに姿を変えてジュリーを惑わせようとする。
間に入ったマーガレットの首を折って殺したアンドリューは、変身してルシファーの正体を現す。

ジュリーは輝きだした十字架の光をルシファーに当てる。その時、ジュリーにミカエルとラファエルの姿が重なっっていく。
ついにルシファーは光を発して滅びたのだった。
クライマックスは少しあっけなく感じられます。
今考えると、この頃のオカルト映画って「ヘルスネーク」(1974)、「アビィ」(1974)、「サスペリア」(1977)、「インフェルノ」(1980)など、意外なほどあっけないクライマックスの作品が多かった気がします。

「オーメン」(1976)の影響もあるのでしょうが、堕天使ルシファーと三大天使の闘いというテーマは着想としてなかなか面白いと思いました。
ただし、そのスケール感ある設定と、低予算な中身とのギャップが残念でもあります。
この内容だったら地元に棲む魔女の末裔(まつえい)と霊能者の闘いくらいにしておいたほうが説得力があったかもしれません。
やや詰め込みすぎの印象もあって
ルシファーが何を企んでいるのかも、よく分からずに終わってしまいます。
まさかゾンビ作業員を使っての古城再建だけということではないでしょうが。

演出が特に下手というわけではなくて、序盤の家族が洗礼のため教会に向かうシーンの長回しとか、けっこう映画が好きなんだな、と感じさせる部分もあります。
フランク・ラロギア監督は、結局3作を撮ったのみのようですが、
「刑事ジョン・ブック/目撃者」(1985)のルーカス・ハースを主演に迎えた第2作「汚れなき瞳の中に」(1988)はなかなかの佳作でした。

アンドリュー役のステファン・アーングリムは、子役出身で「巨人の惑星」(1968~)のレギュラー出演を始めとしてテレビを中心に活動、近年では「フリンジ」(2008~)や「アロー」(2012~)などにゲスト出演しているようです。

ジュリー役のキャスリーン・ロウ・マッカレンは、アングルによってはミック・ジャガー似に見える濃い顔立ちで、天使の転生に見えないのがちょっと残念でした。舞台を中心に活動してトニー賞にノミネートされたこともあるようです。映画出演は本作のみで、まだ二十歳のときで最低の演技だったと本人が評しているとか。

マーガレット役のエリザベス・ホフマンは1980年に「大草原の小さな家」(1974~)に出演して55歳くらいでデビュー、その後も「7月4日に生まれて」(1989)、「ダンテズ・ピーク」(1997)などに出演して2023年に97歳で亡くなったそうです。



