2シーズン全6話で放送された警察コメディです。
まさかの劇場版が公開されるので、
ちょっとおさらいをかねて書いてみました。
オダギリジョーは、監督デビュー作「ある船頭の話」(2019)が国際映画祭で受賞するなど思いがけず評価が高かったので、
そのイメージをひっくり返したくなり企画したということです。
主人公の青葉一平(池松壮亮)は鑑識課で警察犬オリバー(オダギリジョー)のハンドラーを担当しています。
一平は洞窟の占い師(香椎由宇)から大殺界を宣告されていて、
オリバーが着ぐるみのおっさんに見えています。
オリバーは、伝説的な警察犬ルドルフの血を継いでいますが、
昼間から酒を飲み、犬なのを良いことに女性に抱きついて顔を舐めまくるのが大好きというスケベおやじキャラです。
一平はオリバーと普通に会話することができますが、
周囲には犬相手に独り言を言っているように見えています。
鑑識課には他に、
昼行燈タイプの課長(國村隼)、
妙に自信家で先輩風を吹かす漆原冴子(麻生久美子)、
警察犬ラッキーのハンドラー、柿崎ユキナ(本田翼)、
異動を狙っている現代っ子、三浦(岡山天音)がいます。
一平も含めて捜査能力には疑問がありそうな顔ぶれで、
普段はぐうたらなオリバーが一番活躍しているように見えました。
オリバーはスマホの操作もできます。
多数の遭難者を救助してスーパー・ボランティアと呼ばれる全国的な人気者・小西(佐藤浩市)は
山中で女性の死体(玉城ティナ)を発見しました。
死体は12年前に11歳で失踪した北條かすみでしたが、死後数日しか経っていません。
一方、一平が特殊詐欺事件を追っていたとき、
オリバーは菓子缶に入った拳銃と耳を掘り出します。
拳銃はかすみの射殺に使用されたもので、
関東明神会組員、渡(仲野太賀)の指紋が検出されました。
しかし、渡はすでに若頭、龍門(松重豊)の女、関根ミラ(佐久間由衣)とともに身を隠しています。
関東明神会は、宗手(永山瑛太)率いる半グレ集団TMTと抗争しており、
元ルドルフのハンドラーで北條かすみ事件を担当したルポライター、溝口健一(永瀬正敏)も調査を開始、
街の名士、神々廻(ししば、橋爪功)とその運転手(甲本雅裕)は謎めいた行動をとり、
謎の男マイケル(染谷将太)が暗躍、
情報源となるホームレス、裸足のチョウスケ(柄本明)たちも怪しげな動きを見せます。
裸足のチョウスケの情報から辿り着いたキャバレーに客として潜入した一平とオリバーは楽屋で麻薬を発見、
その店はTMTと関りがあり特殊詐欺にも関与していたようです。
功を焦ったユキナが単独行動中、ミラと間違われて拉致されてしまいました。
麻薬で逮捕された男の情報から組織犯罪対策課の轟(くっきー!)がTNTの拠点をガサ入れ、
そこにユキナの匂いが残っていたことからオリバーと一平は半グレの一人を尾行して、
とある倉庫に行きつきます。
残り放送時間の関係から、ここにユキナが監禁されていると判断、
オリバーが野良犬に変装して潜入しユキナを確認しました。
警官隊が集結する中、龍門率いる関東明神会も倉庫に殴り込んできます。
ラップバトルで戦闘開始、続いて登場人物が一斉に踊り出します。
オリバーは着ぐるみで誰だか分らないのをいいことにブレイクダンスしていました。
3者入り乱れての争いの末、ユキナは救出され、
宗手は取り逃がしたものの、龍門逮捕に成功します。
ところが龍門はパトカーに連行される途中で毒殺されてしまいました。
というところで第1シーズンは終了、
第2シーズンはスーパー・ボランティア小西が行方不明になるところから始まります。
第2シーズンでは小西の妻(風吹ジュン)と娘(河合優実)、
雑誌編集者(松たか子)、
京都弁の刑事(黒木華)、
キッチンカーの兄弟(松田龍平、松田翔太)、
かすみの幼馴染(浜辺美波)も加わって真相に迫っていきます。
シシド・カフカは、会話を邪魔するかのようにドラムを叩き続けるだけの役で登場しました。
さらに嶋田久作、高良健吾、渋川清彦、細野晴臣、火野正平、村上淳ほか、
まだまだ名前の売れた出演者がいて大河ドラマが作れるのではないかと思ってしまうほどです。
内容的には小ネタの連続で、
佐藤浩市は警察の表彰式で志茂田景樹風のファッションを披露、
(実際にスタッフが志茂田景樹御用達の店で購入したとか)
失禁して放尿というセリフを繰り返したりもします。
松重豊は「孤独のグルメ」のセルフパロディーを演じ、
柄本明のセリフは押忍の連発で意味が字幕で表示され、
橋爪功は日本では知る人もあまりいなさそうなマーティン・スコセッシ監督の初期短編「The Big Shave」(1967)にこだわり、
永瀬正敏はのちに探偵マイクとなったとされます。
染谷将太は眉をつなげたメイクで登場、本家の我修院達也も出演していました。
玉城ティナは第1シーズンでは死体と11歳当時の写真のみでの出演です。
今時知っている人がどれくらいいるのか分からない左卜全(ひだりぼくぜん)の「老人と子供のポルカ」をフューチャーされていました。
麻生久美子のセリフは半分くらい小ネタだったんじゃないかという印象が残っています。
美しい死体の発見で始まり、街に潜む闇の深さに言及したナレーションで終わる第1シーズンは、
おそらく「ツインピークス」のオマージュではないかと思います。
第2シーズンのラストで真犯人が突然ゴムマスクをはがして意外な素顔を見せヘリで逃亡するのは、
「怪人二十面相」のパロディーという気がしました。
シーズン2も残り10分くらいで複雑怪奇に入り組んだ人間関係の中、
はたして真相にたどりつけるのかと思いきや、
ドラマがいきなり舞台劇となってしまいます。
客席からオリバーと小西が観劇する中、
関係者が次々と犯行を自白したり歌ったりし始めます。
犯人の手口はミステリーとしては掟破りでご都合主義な部分もありますが、
まあ本格ミステリーではないので仕方ないでしょう。
かなりの強引な荒業ですが、とにかくストーリーをまとめてみせたのはさすがでした。
オダギリジョーはこれまでにも「時効警察」(2006~)と「熱海の捜査官」(2010)で風変わりな刑事ドラマの経験があり書きやすかったのかもしれません。
感情に訴える演出を避けて、ナンセンスコメディに徹しているので、
好き嫌いが分かれる作品ですが、
全体的に明るいトーンで楽しめる作品に仕上がっていました。
劇場版がどのような内容に作られているのか楽しみです。