「プー あくまのくまさん」(2023)から始まった、著作権の切れた作品のキャラクターを使ってホラー映画化してしまうシリーズの一作。
ピーターパンとピノキオが待機しているようです。
製作者はこの世界観をプーニヴァースと称して、
これまで使ったキャラクターを結集させた超低予算ホラー版アヴェンジャーズを作っているとか。
パロディといえば「エイリアン」シリーズのどれかで見たような構図も出てきました。
邦題はあくまでもダジャレネタです。
今回暴れるのは化学廃棄物でクリーチャー化した成獣で、
小鹿でもゾンビでもありません。
小鹿のバンビは母鹿を猟師に殺され、
ようやく成長して愛する女鹿との間に子鹿ができたと思ったら、
女鹿はと子鹿を守ろうとしてトラックにひき殺され、
子鹿も行方不明。
そのうえ湖の水は化学廃棄物に汚染されていて、それを飲んだバンビは怪物化してしまいます。
鹿は話さないのでバンビという名は森に住む老婆マリーがそう呼ぶだけですが。
バンビは復讐のため森に入ってきたた人間を殺しまくります。
ストーリーとしては、マリーの家に集まった家族と、謎の行動をとる3人のハンターが、次々とバンビに襲撃されていくというものでした。
主人公は、離婚した夫サイモンが息子ベンジーを祖母マリーのもとに連れていくと言っていたのにドタキャンしたため、
急遽自分で連れていくことにした母親のザーナです。
まずザーナたちの乗った車が襲撃され運転手が殺され、母子はなんとか逃げてマリーの家にたどりつきます。
次の犠牲者は運転手の安否を確かめに出たマリーの息子ジョシュアで、
ハンターの誤射で頭を撃ち抜かれます。
ハンターの正体は?科学廃棄物投棄の黒幕は?といった謎がちょっとしたアクセントになっていました。
森ではウサギたちも牙を持った肉食獣に変化していて事態は悪化していきます。
バンビとザーナの子供に対する情愛がテーマともいえますが、
ザーナが守ろうとするのはあくまで息子ベンジーのみ。
バンビの姿が見えたら車を降りていた者たちはためらわずに見捨てて発進させ、
結果的に過失とはいえ一人を惨殺しているので、
終盤で善人ぶっても納得できない部分がありました。
それを含めて人間悪が色濃く描かれていて、
熊の駆除問題で騒いでいる人たちが見たら大喜びするのではないでしょうか。
バンビのCGも低予算映画としてはまあ悪くない出来で襲撃シーンは迫力があります。
ザーナ役のロクサンヌ・マッキーは「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011~)に出演したこともあるとのことで演技も悪くありません。
事情を熟知しているはずのハンターが平気で単独行動するとか、
大爆発に巻き込まれたはずのマリーが傷一つなく服すら汚れていないとか、
突っ込みどころもありますが、
このシリーズの中ではそれなりに楽しめる出来栄えでした。
サイモンが一族を祖母の家に集めた目的は明かされませんが、
一族全員を死なせて財産の一人占めを狙ったのではないでしょうか。
表に大きな円柱が並ぶ立派な邸宅に住んでいましたし。