舞台となる巡星(メグリボシ)では、地下にあるエネルギー源をめぐって二つに勢力が長年にわたって戦争を続けていました。
現在は表面上和平が結ばれていますが、水面下では策謀がめぐらされ、対立が続いています。
巡星の軌道上には無数の大型デブリが浮かび、コントロールを外れて落下すれば甚大な被害を及ぼします。
ヒロインのラコは対デブリチームのロボット整備士で、父親は超天才科学者です。
その父親が、理論上は不明ですが、二人の人間の魂が共鳴することによって絶大なエネルギーを発するシステムを開発、リコの共鳴相手として地球から少年ヨウが強制的に召喚されます。
ヨウはミュージシャンを目指していますが進学を望む両親と板挟みになっており、バンドを抜けた仲間の対応にも戸惑っている、貞本義行のキャラクターデザインが似合う悩める少年です。
いきなりラコの意識世界に召喚されてもそれほど動揺も見せず、一気に状況把握して対応していく姿はちょっと違和感もありますが、
与えられた状況には順応しやすい性格ということなのかもしれません。
今回、巡星を争って対立する二大勢力は背景的な存在にとどまり、
メインとなるのは地下のエネルギー源全てを消滅させ、巡星を破滅させることによって戦争を終結させようとするテロリスト姉弟と、それを阻止しようとする主人公たちの戦いです。
リコとヨウは地下エネルギーを結晶化することによって、さらに効率的なエネルギーを作り出し、世界の対立を弱めることを望んでいます。
かなり複雑な世界観と壮大な展開が約90分に収められているため、
説明不足な部分が発生し、ストーリーも駆け足となってしまった印象が残りました。
簡単なセリフで説明されてしまう事柄も多く、置いてけぼり感も否めません。
劇場は女性観客が多く、おそらく主人公ヨウ役の声優・白岩瑠姫の人気なのでしょう。
ストーリーの横糸として、ミュージシャンとして生きる決意を固め、
主題歌でもある楽曲「巡星」を完成していくヨウの成長が描かれています。
歌声をアピールする演出となっているので、歌声が流れるシーンではプロモーションビデオ的な印象が強くなっていますが、
なかなかの熱唱ふりで盛り上がり、企画意図は成功していると感じました。
犯行に及ぶ男が、ヨウの曲を少年時代に聞いたことがあるとかのパラドックス設定が難解さを増す要因にもなっていて、約90分で描き切るなら、もっとストーリーを簡略化したほうが良かったと思います。