前回のリブート版「ファンタスティック・フォー 」(2015)が不発だったので10年ぶりに再リブートとなった本作は、同じことやっても仕方ないと考えたのか「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」(2007)のリブートとなっています。
4人が超能力を得てから4年が経ち、正体を隠さないヒーローとして認知され、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズ(ペドロ・パスカル)は教授として教鞭をとり、妻のインビジブル・ウーマンことスー・ストーム(ヴァネッサ・カービー)は政治的手腕を発揮してもいます。
「銀河の危機」では二人の結婚までが描かれましたが、本作はもう少し時間が進んでいて、スーの妊娠から始まりました。
リードは喜びとともに、自分たちが宇宙線を浴びて変化してしまった身であることから不安も覚え葛藤します。
出産も間近になったころ、シルバーサーファーが現れてギャラクタスによる地球滅亡が宣言されます。
4人は宇宙船で飛び立ちギャラクタスに面会します。
このギャラクタスは神にも等しい力を持ちながら常に飢餓状態にあるという巨人で、1967年のアニメ版動画を見ると西洋の甲冑風のコスチュームですが、今回は鎧武者を連想させるデザインになっていました。
ちなみにアニメ版の日本タイトルは、リードがゴム人間であることから「宇宙忍者ゴームズ」という原型をとどめないものになっており、Wikiによるとギャラクタスはテッカーメンという名前に変えられていたそうです。
本作ではアニメにおけるザ・シングの決めゼリフが小ネタになっていますが、日本放送のアニメでは吹き替えた関敬六の持ちネタ「ムッシュムラムラ!」に変えられていました。
地球を見逃すためにギャラクタスが出してきた交換条件は、これから生まれる2人の子供を差し出すこと、ギャラクタスによれば子供は底のない飢餓を満たすほどの力を持っているというのです。
要求が飲めるわけもなく、追撃するシルバーサーファーからの脱出と、宇宙空間での出産が緊張感たっぷりに描かれます。
地球に戻った4人は地球よりも自分の子供を取ったと民衆から非難されますが、スーは怒れる民衆を見事に説得、彼女の政治力が発揮される見せ場になっていました。
リード博士は「妖星ゴラス」(1962)を上回る地球規模の計画を発案、世界が一丸となって準備を進めていきます。
この作品の特徴はレトロ感覚の世界観が用いられていることで、例えば女性のメイクは大きな付けまつげバチバチでアイシャドウも濃いめの人が多かったりします。
4人の生活が描かれる場面は、ちょっと昔のホーム・コメディを連想させる絵柄になっていました。
テレビはブラウン管で、音声はアナログレコード盤へ書き込みと、このあたりは先日観たアニメ「BULLET/BULLET 弾丸疾走編」に似ています。(あくまでもこの部分だけですが)
テレビには1967年のアニメ版が放送されていて大人気という設定なので、もしかしたらベトナム戦争に突入しなかったパラレルワールドの60年代アメリカなのかもしれません。
続く「アベンジャーズ/ドゥームズデイ」がどのような時代設定になるのか楽しみです。
内容的には正統派のヒーロー物の魅力に満ちていて、このあたりも原点回帰を感じさせます。
シルバーサーファーの決断とか、赤ちゃんの能力発揮とか、奇をてらわずに期待通り進めてくれるので安心して観ることができます。
「ミッション:インポッシブル」シリーズのホワイト・ウィドウも印象的だったヴァネッサ・カービーが、民衆を説得する場面や、子供を助けるため死力を出し尽くす場面で見せ場をさらっていました。
ペドロ・パスカルもなかなか渋くて、これまでにない大人の魅力を持った二人になっています。
ヒューマン・トーチことジョニー・ストーム役のジョセフ・クイン(ちょっと山本耕史似な気がしました)の若々しさも良いコントラストになっています。
ついでにいうとシルバーサーファーはシャーロット・ランプリング似という印象を受けました。
余談ですがYouTubeの速水もこみちが4つの能力でピザを焼くコラボ動画も楽しめました。
野菜を切るのに透明になる必要性は感じませんけど。