地中海を舞台にしたサスペンス「AUTOPSY」(検死) | 隅の老人の部屋

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オリジナル・タイトル;Tarot
製作年:1973
監督;ホセ・マリア・フォルケ
脚本;ラファエル・アスコナ、ホセ・マリア・フォルケ、ジェームズ・M・フォックス
音楽;ミッシェル・コロンビエ
出演:スー・リオン、フェルナンド・レイ、グロリア・グレアム、クリスチャン・ヘイ

(ネタバレあり)

フランス・スペインの合作で、「Angela」「Game of Murder」「The Magician」など複数の英語タイトルが存在する模様です。
Imdbには日本タイトル「人間解剖」と記載されていますが、これは間違い。
「人間解剖」(1974)は全く関係ないフェイク・ドキュメンタリーで、本作は日本未公開です。

 

 

個人的に長年幻だった作品で、それはなぜかというと同じくミッシェル・コロンビエが音楽を担当したサスペンス映画の秀作「相続人」(1973)のサントラ・アルバムが、本作とカップリングになっていて音楽だけは昔から聞いていたからです。
半世紀も経ってから本編が見られるとは思っていませんでした。

バイクで旅するアメリカ人の観光客アンジェラ(スー・リオン)は、マーク(クリスチャン・ヘイ)という若者に声をかけられ、大きな邸宅へ行く。
それは盲目の老人アーサー(フェルナンド・レイ)の相手をするという仕事だった。
マークはアーサーの雑用係だった。

一方、マークはアーサーの家政婦、ナタリー(グロリア・グレアム)とできている。
アンジェラは報酬を受け取らずに帰っていった。

アンジェラは、自分の行動を追いかけるようになったマークと肉体関係を持つ。

街でマークがナタリーとデートしているところを目撃したアンジェラは、
アーサーと接触してディナーをともにする。

アンジェラ、アーサー、マークの3人で舟遊びをしても、アーサーの目が見えないことをいいことにして、アンジェラとマークがいちゃついたりする。

やがてアンジェラはアーサーに求婚される。
アーサーの財産を狙うマークは、アンジェラをたきつけて結婚を受けさせてしまう。
当然、結婚後もアンジェラとマークは関係を続ける。
アンジェラの趣味はタロット占い、ある日アーサーを占うと死神のカードが出てしまう。

外出途中で気が変わり、引き返したアーサーは、風呂場で戯れるアンジェラとマークに気づく。
アンジェラに近づいたアーサーはキスをしながら、ポケットから拳銃を取り出し突きつける。
マークがアーサーに飛びつき、銃が暴発した。
アンジェラが泣き叫んで止めるのも聞かず、マークはアーサーの顔を風呂に突っ込んで殺してしまう。

犬の世話をしていた家政婦の一人、コニーは銃声を聞くが、なぜか気にしない。
外出していたナタリーが戻り、アンジェラが彼女とコニーに話しているすきに、
マークが死体を運び出す。
死体をプールに投げ込んで事故死に見せようというのだ。

コニーが死体を発見し警察が呼ばれた。
アンジェラは心労で寝込んでしまう。
洗面台でアーサーのサングラスを見つけたナタリーは邸内を調べて回る。

ナタリーは警察の質問にはとぼけて帰らせ、アンジェラとマークにサングラスを突きつけて脅迫する。
マークは、アンジェラに気のある友人の芸術家モーリスにアンジェラを連れ出して元気づけるようそそのかし留守中のアトリエにナタリーを連れていく。
ナタリーを殺して、彼女が突然休暇を取って旅に出たまま消息を絶ったことにする筋書きだった。

マークはナタリーを絞殺しようとする。
だが、ナタリーはアーサーの拳銃も見つけてバッグに忍ばせいた。
マークは返り討ちにあって射殺される。
ナタリーはマークの死体を埋めてしまう。

翌日、警察がやって来た。
ナタリーはまたしてもごまかそうとするが警察は真相に気づいていた。
検視の結果、アーサーの肺にあった水からアンジェラがバスタブに入れていた入浴剤が検出されたのだ。
二人は警察に連行されていく。
屋敷には犬たちと戯れるコニーだけが残されたのだった。

作品的にはゆるいサスペンスで、残念ながら凡庸な出来です。
キャスティングはそれなりで、ヒロイン役のスー・リオンはスタンリー・キューブリックに見いだされ「ロリータ」(1961)でタイトルロールを演じました。
Wikiによると1973年に服役中の殺人犯と結婚したことからハリウッドメジャーのオファーがなくなり、インディーズ作品やヨーロッパ映画に出るようになったとのことです。

フェルナンド・レイは、「フレンチ・コネクション」(1971)シリーズや「哀しみのトリスターナ」(1970)、「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(1972)などのルイス・ブニュエル監督作に出演したスペイン出身の名優です。

グロリア・グレアムは「地上最大のショウ」(1952)や「オクラホマ!」(1955)などに出演し、ハリウッドの内幕を描いた「悪人と美女」(1952)ではアカデミー助演女優賞を受賞しています。

人物描写も中途半端で掘り下げが浅く、せっかくの名優陣が無駄づかいになってしまっています。
ヒロインはそれほど金に興味があるわけでもなく、悪女どころか巻き込まれて気の毒な人になってしまいました。
前半のドラマをもう少しスピーディーに進めて、結婚からあとの登場人物たちの駆け引きをじっくり描き込んだら、もっと面白くなったのではないでしょうか。