アジアインフラ投資銀行は中国のバブルの下支え!?※アジアインフラ銀発足! | Old James Bond 通信

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―― 大学教授・宇賀神大介の熱血講義録!――

 私の人生は、ほぼ3分の2が 経過した。3月31日は、ある意味で

その節目である。今、振り返ると、私の人生は 戦いの連続であった。

そして、この戦いには、マルクス主義 との戦いが 多く含まれている。

私の職場は、日本の中でも 異常にマルクス主義者が 多いところで

あった。日本共産党は 論外だが、社会民主党と匹敵し 民主党より

多いといって、過言ではない。よって、どれほど私が苦労してきたか、

お分かりになるであろう。マルクス主義者にはアンチ・マルクス主義

者が匂いで分かるらしく、本当に様々な 嫌がらせを受けたが、私は

それらにことごとく反発してきた。


 カール・マルクス(1818~1883年)ほど、悪い意味で20世紀の

世界に大きな影響を与えた人物は他に例を見ない。そして、それは

21世紀の現在に至るまで まだ続いている。勿論、私も学生時代に

はマルクス主義に興味を 持った。マルクス経済学の入門書を 数冊

読み、マルクスの主著である 『資本論』も 一応全巻目を通してみた。

その結果として、『資本論』は それなりによく出来た文献ではあるが、

マルクス主義は 資本主義の自己矛盾拡大、崩壊、そして労働者に

よる社会革命という結論 より逆算して、実に巧妙な論理展開をした

「大嘘」だと考えるようになった。マルクス主義に対抗する いわゆる

分析哲学の文献もたくさん読み、その考えはますます強固になった。

例えば、マルクス経済学が 教える「国家独占資本主義」とは、一体

具体的に何を指すのかいまだに少しも分からない。右翼と目される

政治・経済評論家の中には、新自由主義とか新古典派の経済学が

教える自由主義経済や 世界経済の枠組みとなるグローバリズムを

批判し、そうした自由主義を放任すると格差が国内的にも国際的に

も拡大し、自由市場経済は破綻する と主張する向きもあるようだが、

それは マルクス経済学の論法と何ら変わらず、右翼ではなくむしろ

極左としかいいようがない。


 1990年ごろ、第2次大戦後 東西を隔てていた「ベルリンの壁」が

崩れ、旧ソビエト連邦(ロシア)や旧東ヨーロッパ諸国が 崩壊すると、

マルクス主義に基づく社会主義(共産主義)体制の国家は、一気に

減少してしまった。日本の近隣諸国では、中国と北朝鮮だけが残る。

このままでは立ち行かなくなる と判断した中国共産党は、1992年、

それまでの改革開放路線を加速させ、社会主義市場経済へと移行

した。これは、共産党一党独裁 の下で 自由市場経済を採る という

国家体制で、実験にしては大変 面白い。しかし、誠に失礼であるが、

結果的に 共産党幹部や高級官僚の汚職・蓄財、貧富の格差・公害

など外部不経済の放置 という、社会主義(共産主義)と資本主義の

それぞれの悪い部分をつなぎ合わせたような体制 となってしまった。

それらの解決が、中国の緊急課題である。


 現在の中国経済は、中国通貨・人民元の過剰な流通量を 背景と

する公共投資、設備投資、住宅投資などへの投資依存経済である。

これらは無駄な施設・設備、過剰生産量、不良債権などを発生させ、

よくいわれるところだがバブル(泡)である。国際通貨基金(IMF)は

中国に 不良債権の処理を 促している。要するに、バブルの始末を

早くせよ ということに他ならない。そのような中で、中国が主導する

アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立計画 なるものが 登場してきた。

中国の思惑がどこにあるのか 憶測の域を出ないが、「中国共産党

アジア投資銀行」にだけはなって欲しくない。確かに、アジア諸国で

は インフラストラクチャー(経済・社会基盤)が 貧弱で、その整備が

急務であるから、「建前論」としては歓迎すべき話では ある。しかし、

この種の国際金融機関としては、日本とアメリカが 主導するアジア

開発銀行(ADB)という銀行がすでに存在し、中国も 出資している。

アジアインフラ投資銀行設立計画 には、東南アジアから 中近東に

かけての アジア諸国の他に、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアを

含めたヨーロッパ諸国、また韓国、オーストラリア、ロシア、ブラジル、

エジプトといった国々が 参加を表明した。これらの国々が相次いで

参加を表明した理由、もしくは その思惑は、何となく分かる。ただし、

日本とアメリカは参加に慎重な姿勢を崩していない。





写真 : アジアインフラ投資銀行のロゴ!



 アジアインフラ投資銀行設立計画 の1つの大きな背景に、中国の

過剰な、というより 異常な外貨準備高が考えられる。現在のそれは

日本円に換算すると約450兆円であり、現在の日本の外貨準備高

約150兆円の3倍という異様さである。しかも、2000年代に入って

から 急増している。外貨準備高の急増には 主に2つの理由がある。

第1は、輸出に有利な 人民元安に誘導すべく、積極的な 為替介入、

すなわちドル(アメリカ国債)買いなどをして その介入自体で外貨が

増えたこと、人民元安により輸出も急増し 代金のドルなどの外貨が

増えたことである。アメリカはこのことを盛んに批判している。そして

第2は、バブルを当て込んだ投機資金(いわゆる「ホットマネー」)が

大量に流入したためである。外貨準備高と見合った 人民元が発行

され、それもバブルに一役買っているはずである。


 要するに、アジアインフラ投資銀行設立計画とは、実は「バブルを

少し下支えしよう」といった類の話にすぎない。バブル崩壊の兆しが

見え、建設資材は余り、中国の建設会社やエンジニアリング会社は

中国外のアジア諸国にマーケットを求め始めた。しかし、それよりも

さらに問題だと思うのは、伊藤忠商事がタイの企業と共同で中国の

国営投資金融企業に 約1兆2千億円を出資する という計画である。

これも、バブルを下支えしようといった話としか 聞こえない。伊藤忠

商事には、親中派で知られる 丹羽宇一郎氏という悪名高い人物が

いる。民主党・菅政権下で中国特命全権大使に任命され、「日本は

中国の属国でよい」と暴言をいった人物である。総合商社はいわば

合法○○○のような組織で、「会社のためなら何でもする」といわん

ばかりの社員もときおり見掛ける。勿論、伊藤忠商事は民間企業で

あるから、どこにいくら投資をしようとそれは自由である。ただ、この

出資計画は日中関係が微妙な時期だけに、日本政府も問題視して

いるとは思う。


 しかしながら、上記のごとく、さすがに中国の経済急成長も陰りを

見せ始め、外貨準備高も減少し始めている。約15兆円の流出との

ことだが、闇の流出が20~30兆円とも いわれている。中国も少し

大人になり、中国政府は経済成長鈍化、外貨準備高減少を素直に

認めている。今後、中国経済への投資資金、投機資金が ますます

引き揚げられ、経済成長鈍化との悪循環にも陥れば、中国経済 は

バブル崩壊へ 雪崩を打つ局面に入るだろう。バブルが崩壊すれば、

経済は勿論、政治、社会などもガタガタになる。外貨準備高減少の

穴埋めに、中国は外貨借り入れを増やしている。しかし、こういった

一時しのぎの真似を延々と続けられるはずもない。もともと 中国は、

独自の近代技術を ほとんど持たず、どんな方法で入手したのかは

別として、外国の技術に依存して製品を安く作り 輸出で儲けてきた

国である。賃金が上昇し中国に工場を置いておく必要がなくなれば、

日本を始め 諸外国は投資資金を引き揚げるであろう。以上に加え、

アジアインフラ投資銀行設立計画 に日本とアメリカが参加しないと

なると、金融債を発行して資金を賄うこともあり得る。その場合には、

債券の格付けは低いものとなろう。


 上海の大学教授が、このアジアインフラ投資銀行設立計画を評し、

「21世紀の孫子の兵法」といったそうだが、私にいわせればそれは

「お山の大将」にしか見えない。もとより、私も中国とは 友好関係を

築きたい。しかし、2013年1月の中国海軍による日本の護衛艦へ

の火器管制レーダー照射の一件 などは、もはや戦闘行為に等しく、

とても その気にはなれない。国内の経済・社会が混乱すると、ガス

抜きを図ろうと 対外強硬姿勢に打って出るものである。中国がそう

ならないよう、切に望む 次第である。上記 アジアインフラ投資銀行

設立計画については、安倍首相、またアメリカのオバマ大統領には

ぜひ腹を据え、参加を敬遠して頂きたい。


 なお、付記すると、中国はアジア版ヨーロッパ連合(EU)に当たる

「東アジア経済共同体」構想を提唱している。日本は戦前~戦中に

「大東亜共栄圏」を標榜して 大東亜戦争(太平洋戦争)を 戦ったが、

それは敗戦により頓挫した。いうまでもなくヨーロッパ諸国と アジア

諸国では事情が全く異なり、「東アジア経済共同体」構想は現段階

では時期尚早というべきであろう。


【注 記】


※中国経済というのは 非常におかしな経済で、民間資本(会社)が

育って いない、独自技術が育って いない、中間所得階層が育って

いない と、3つの「育って いない」が揃った経済です。これは、明治

以来に見る 日本の経済成長の軌跡と 全く異なり、図体だけ大きい

未熟な発展途上国 並みの経済です。このような経済の成長が続く

道理がありません。すでにバブル崩壊の兆しが見え、この先 10~

20年で 中国経済は必ずや行き詰まるでしょう。さて こうなったとき、

アジアインフラ投資銀行は一体どうなるか‥‥。


※よく いわれる通り、アジアインフラ投資銀行設立計画 というのは、

日本政府 流の「綺麗な」表現を使えば、統治(ガバナンス)や 融資

基準が何か「不透明」なようですが、私一流の「汚い」表現を使えば、

それは 「デタラメ」ということに他なりません。計画段階でデタラメな

国債金融機関が開設されても上手くゆくはずもなく、その内、多くの

参加表明国 とりわけヨーロッパの金融先進国などが呆れて離反し、

中国自体の経済崩壊とも相俟って、10~20年も待たず 同銀行が

瓦解することは、目に見えています。


※仮に アジアインフラ投資銀行に数千億円を出資するのであれば、

日本とアメリカが 主導する アジア開発銀行の増資、海上自衛隊の

本格的空母建造に充てたほうが、よほどアジア地域全体の「平和と

発展」に寄与するでしょう。


※中国は当初アジアインフラ投資銀行資本金の50%を出資すると

いっていましたが、最終的には、25~30%にトーンダウンしました。

残りの70~75%は、インド、ロシア、韓国、‥‥の順に出資すると

のことですが、この陣容ではどのような銀行になるか、大体 想像が

付くというものです。


(12月22日付記)


※世界各国の中には、内実はボロボロな くせに、外面上のハッタリ、

面子(めんつ)、強がり、ゴリ押しだけで行動している、おかしな国

存在します。さて、その国とは一体どこでしょうか?


(12月24日付記)


※私は 某国を「一発で」崩壊させる効果的な方法を知っていますが、

もとより、それは私の望むところではなく、そのような不穏当なこと

申すべきではありません!!


※陳 破空・著『品性下劣な中国人――彼らが世界中から嫌われる

理由――』(扶桑社新書)という本を読みました。なぜかその本では、

中国の方々をケチョン ケチョンに貶しています。しかしながら、私の

知っている中国の方々は、品性下劣どころか 品性高潔で立派です。

おそらく、現在の中国の国家体制、つまり、共産党一党独裁体制

諸悪の根源で、多くの中国の方々の品性にも 歪みを生んでいるの

だろうと考えます。中国経済が悪化し続ければ、いずれこの体制も

崩壊に向かうでしょう。それと同時に「民主化革命」が実現できれば、

中国が生まれ変わって、中国の方々の品性も生まれ変わる絶好の

チャンス到来です!(※貶して=けなして。)


(12月25日付記)


※本12月25日に、中国主導の アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、

極めて物静かに正式発足しました!!