こんにちは!税理士の柿白ですニコ

相続税の税務調査のリスクを減らす方法(生前対策編)、今回で最終稿となります。

前回からの続きです。

 

⑧親子での金銭の貸し借りはできる限り行わない

 以前のブログでもご案内しましたので、ご参考にしてください。形式(契約書などの書面)と実態(返済履歴)がしっかりと整っており、相続発生時点で完済していればよいですが、残金が残っている場合や、数年前まで返済がある場合などは、税務調査のリスクが高まります。

 

⑨金地金をお持ちの場合は、資料等の保管・管理をしっかりと行う。

 金の価格が高くなっており、保有している方も増えています。昨今では、金については現物(金のインゴットや延べ棒)を保有することなく、純金積立や金の投資信託などもあります。現物以外については、残高証明書等で相続発生時点での金の証明が可能です。一方、現物で保有している場合は、証明書がありません。したがって、購入時の請求書領収書は必ず保管をする必要があります(相続税論点以外としても売却時:譲渡所得税には必須資料です)。また、購入についても通帳からの振込をしてしっかりと履歴を残すべきです。

 相続税の税務調査リスクを減らすには、現物以外の純金積立の方がよいです。繰り返しになりますが、残高証明が発行されますし、取引の履歴も残ります。また、現物ですと盗難等のリスクもあります。ただし、現物以外は信用ができない滝汗という人もいると思います。タンス預金と同じ理屈ですが、現物ですと正しい金の残高を申告書に計上してもどうしても証明力が弱まってしまいます。したがって、資料等の保管管理は徹底する必要があります。

 

⑩相続が発生した時に揉めないように対策をする(未分割での申告→還付申告を極力避ける

 相続税の申告期限は死亡の日の翌日から10か月以内です。遺産分割協議に期限はありませんが、相続税申告が必要な場合は、通常、申告期限内に分割協議を行い申告を行います。では、相続人間で揉めてしまい申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればよいのでしょうか。相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありませんあせるそのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。いわゆる、未分割での相続税申告となります。

 この場合のデメリットとしては、相続税の特例である、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」が適用できません。したがって、遺産分割協議ができている場合(特例使用時)と比べると多くの税金を支払う必要があります。また、納税資金の問題が生じます。一般的には、遺産分割協議により、被相続人の預金等を解約し納税を行いますが、未分割の状態ですと、被相続人の預貯金が使用できませんので、相続人自身の預金によって納税をしなくてはなりません。これは非常に大きな負担となりますショック

 未分割申告をした後の流れですが、遺産分割協議が整ったのちに、改めて実際に分割した財産の額に基づいて修正申告または更正の請求を行います。この時に、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例により、また、法定相続分よりも少なく相続した方は、いったん納めた相続税が還付されることになります。相続税に限りませんが、還付申告を行う場合、税務調査のリスクが高まります。還付申告(更正の請求)は納税者に認められた当然の権利ですが、いわゆる国庫財産(税金)の返還作業となりますので、そもそも、その申告書が正しいものかどうかというチェック(税務調査)をされる可能性が高まります。

 したがって、税務調査のリスクを減らすためには、還付申告はできる限り避けた方が良いということになります。相続税申告では、期限内に遺産分割協議を成立させて正しい申告書を期限内に提出することが最も重要です。遺産分割で揉めないようにする方法はあるのでしょうかはてなマーク当然ですが、絶対に揉めない方法はありません泣

 しかし、揉める部分を極力減らす方法はあります。それは遺言書を作成することです。遺言書があれば、相続人で遺産分割協議を行う必要は一切なくなります。名義変更の手続きも遺言書によってすぐに行うことが可能です。しかし、遺言書があっても「遺留分」という権利はありますので、遺留分侵害額請求を受けた場合には応じる必要があります。これは相続人に認められた権利ですので、どんなに優秀な弁護士に依頼したとしても従わざるを得ません。この場合には、遺留分を算定し、請求者に対して金銭の支払いを行います。遺言書がなく、遺産分割協議の場合は、すべての遺産について0ベースから誰が何を相続するかを決定する必要があります。一方、遺言書がある場合は、遺留分を主張されなければ、そのまま名義変更、相続税申告が可能ですし、仮に、遺留分を主張された場合は、遺留分の支払いを行えば終了です。遺言書がある場合は、揉める部分(話し合いが必要な部分)が限りなく少なくなります。すなわち、申告期限までに完了する可能性が高くなります。

 揉めないために、生前から家族仲良くし、遺産についてもよく話し合っておくことも当然大事ですが、実際に相続が発生した場合は関係なく揉めてしまうこともあります。現時点での法律において、揉めない相続への有効な対策としては遺言書を作成することしかありません(近年は民事信託を利用し遺言書と同様の効果を得ることも可能です)。

 残されたご家族が相続で揉めるということは誰も望まないことだと思います。遺産分割協議で揉めてしまい、何十年も経過している、相続人の相続が発生し子や孫の代まで未分割が続くこともあります。遺言書があれば、そこまで揉めてしまうことは避けることができます。ぜひとも、遺言書の作成をお勧めします。税理士法人クレサスでは、遺言書の作成もお手伝いしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

以上、3回にわたり、相続税の税務調査のリスクを減らす方法(生前対策編)をご案内しました。

少しでもご参考にしていただければ幸いです。

 

岡崎市・西三河の税理士 税理士法人クレサス