こんにちは、税理士の柿白です。

今年の夏は本当に暑いですね滝汗

みなさま、熱中症等にはくれぐれもご注意くださいね。

 

さて、本日は親子間での金銭貸与についてお話したいと思います。

住宅を購入する場合など、両親や祖父母に潤沢な資金がある場合、金融機関ではなく親族からお金を借りる方がいらっしゃいます。子供や孫の負担を少しでも減らしてあげようという大変有難い行為ではありますが、税務上は注意することがいくつかあります。

 

結論から申し上げると、税務署から「贈与」と疑われる可能性がありますあせる

また、相続発生時に残金がある場合は、相続財産として計上が必要になります。

また、大きな資金移動が発生しますので、相続税の税務調査のリスクが高まりますびっくりマークびっくりマーク

 

金融機関や他人からお金を借りる場合は、当然、金銭消費貸借契約書や借用書を作成します。しかし、親族間の場合はこのあたりを省略するケースがあります。税務署は当然お役所ですので、形式(契約書)を重視します。

借りたのであれば、それを証明するものは?

贈与をしたのであれば、それを証明するものは?

基本的には「契約書」が証明するものになりますので、必ず「契約書」は作成しましょう。

 

それでは、契約書があれば問題ないのでしょうか?

形式を満たしていても「実態」として問題があれば贈与と疑われる可能性があります。通常であれば、毎月いくらと決めて月々返済することが一般的です。しかし、借りたが全く返済をしていないような状況の場合、実際には「借りた」のではなく、「贈与」を受けたのではないかと疑われてしまいます。したがって、返済計画をしっかりとたててそれにしたがって返済をしていく必要があります。また、振込等によって返済の証拠を残すことも重要です(現金支払いは返済の事実の証明が困難です)。また、通常はあり得ないと思いますが、返済が不可能な借入(返済完了時期が150歳、収入で到底返済できない金額など)の場合は、「贈与」とみなされてしまいます。

 

利息はとらなくて良いの?

親族間での借入について、必ず利息をとらなくてはいけない、利息相当分は贈与に該当するという意見をよくみますが、あくまでも親族間で課税上弊害がないと認められる場合は、利息をとらなくても問題はありません。ただし、親が銀行から借りて子供に無利息で貸したりした場合などは、利息相当分は贈与税の課税対象になります。

 

親族間の貸し借りは、相続税の現場でも過去に何件か遭遇したことがあります。税理士の立場からすると、税務調査のリスクが高まるな…ショボーンという印象を受けます。しっかりと返済を行い、相続発生のだいぶ前に完済しているような状況であればよいですが、返済途中で相続が発生した、数年前に返済がストップしている場合などは要注意です。

 

返済途中で相続が発生した場合は、残金が貸付金として相続財産になります。

しかし、金融機関のように貸付残高を証明してくれるものはありませんので、そもそも申告書に計上されている貸付金は正しい金額ですか?と税務署は疑いたくなります。また、現金返済などをしていると、本当に返したのですか?という懸念があります。

疑念があればあるほど、また、多額の資金移動があればあるほど、当然、税務調査のリスクは高まります。

 

数年前に返済がストップしているケースもあります。資金繰りの都合上、ストップをしていることもあると思います。

一方、特に資金を潤沢に持っている親の場合は、本来は可愛い我が子にお金をあげたいくらいです。ただし、贈与税の問題であったり、教育上の問題であったりで貸し借りにすると思います。

例えばですが、2,000万円のお金を借りた。毎月返済を行い、残りは1,000万円になった。親として、ここまでしっかり返済してくれたから残りはもう返さなくていいよ、というケースもあると思います。その場合は税務上どうなるのでしょうか。子供は債務免除を受けていますので、贈与税が課税されます。ただし、このような場合に贈与であることを認識し正しく贈与税の申告納付をしている方はほとんどいらっしゃらないと思います。

 

上記の例は、実務上もあり得る話ですが、非常に判断が難しい事案となります。なぜなら、前述のとおり、親族間の場合は、それを証明するものがないケースがほとんどだからです。貸し借りは継続しているがたまたまストップしているだけなのか、債権放棄があったのかどうか。本来であれば債権放棄の合意書等を結ぶべきですが、口約束だけの場合は証明できません。

 

もし、10年前に返済がストップしていて相続財産に貸付金として計上をしなかった場合は、税務署は何といってくるでしょうか?「貸付金に該当しますので、残金を相続財産に計上してください」と言われる可能性が高いです。なぜなら、贈与税の時効は6年(悪質な場合は7年)だからです。贈与に該当する場合は、課税できません。

 

では、5年前に返済がストップしている場合は、どうでしょうか。「贈与に該当しますので、過年度分の贈与税を支払ってください」と言われるかもしれません。場合によっては、貸付金として相続財産に計上するよりも多額の税金になるかもしれません。もちろん、税務署の判断として事実がどちらか(贈与なのか貸付なのか)が最も重要ですが、その事実を証明するものが無い限りは疑われてしまいます。

 

贈与税の問題は、ほとんどが相続税の税務調査で調べられます。不動産の場合は登記が動くことによって税務署は把握することができますが、金銭の場合は贈与時に調べたり把握されることはまずありません。

親族間での金銭貸与ができる方は、相続税の申告対象の方がほとんどだと思います。前述のとおり、相続税の申告や、税務調査のリスクを考えると、親族間での金銭の貸し借りはできるだけやめた方が良いと思います。

近年は利率も過去に比べると極端に低く、また、住宅ローンであれば団信などもあります。

上記のようなリスクを考えると、金融機関から借入を行い、子供や孫へは贈与をしてあげた方が良いと思います。

 

贈与税・相続税申告は岡崎市・三河の税理士法人クレサスへご相談ください。