平田玉蘊 「鉄線花に蝶」図 紙本
玉蘊の「鉄線花に蝶」図である。鉄線花は江戸時代後期にあっては、あまりなじみのない花ではなかったろうか。それを玉蘊は積極的に描き、モダンな絵として完成させている。
紫の大輪の鉄線の花は、華やかでもあり、清楚でもある。花だけではアクセントに乏しいので、玉蘊は黄色い蝶(モンキチョウか)を一羽配している。
モンキチョウだけを拡大してみたい。
小さく描かれた蝶であるが、拡大してみみると玉蘊が細部まで蝶の表情をよく捉えていることが分かる。向かって右の羽根を意識的に小さく描くことで、蝶が飛んでいるダイナミックさをうまく表現している。
この絵は尾道の豪商亀山家に伝わったものと言われている。玉蘊の新しい画題に挑戦しようとする気概と、女性らしい繊細な感性が表れた絵と言えよう。