平田玉蘊 晩年の山水画 (129) | okuda8888のブログ

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平田 玉蘊 「山水図」   絹本

 

平田玉蘊晩年の山水図である。晩年の彼女の心境が覗われる作品である。

 

 

画面に描かれているのは、高い山の麓に廬を作り、童子を従え隠遁している隠者を描いている。テーマは中国の山水画であるが、描かれた自然は日本の自然と言えよう。

 

 

夏の盛りで暑いのであろう。隠者は片肌を出し、団扇で仰いでいる。童子は廬の近くの川に水を汲みに行っているようだ。質素なわら葺の建物で、お茶を嗜んでいる隠者は達観しているかのようで、晩年の玉蘊の理想が描かれているようにも感じられる。

 

 

この作品の落款には「六十有七女子 玉蘊」とあり、六十九才で亡くなった玉蘊の晩年(六十七才)の作と分かる。印の「玉蘊」「女子」は晩年作に見られる印である。

 

この絵の魅力の一つは、夏雲の描き方にある。山の春かかなた、一筋の滝とともに、山の上に湧き立つ入道雲を描いている。この雲ににより夏の季節をよく表すととに、玉蘊が見た景色を描くという「写実」的手法が徹底されているようである。

 

 

晩年の玉蘊は、ただ伝統的な枠の絵ではなく、隠者の表情や夏雲に見られるように、精神世界を描く絵を追求し続けていたと評価できよう。