平田玉蘊(ぎょくおん) 「椿に鶯」 紙本 大作
50㎝×11㎝
平田玉蘊60歳の作品、「椿に鶯」である。
落款に「丙午 夏日 玉蘊 」とあるので、弘化3年(1846年)玉蘊60歳、晩年期の作品と分かる。
画題は「椿と鶯」であるので、初春をイメージするが、これを描いたのは夏ということで、季節のギャップが面白い。
椿の枝は右から伸び、左下で屈折して上部に勢いよく伸びる。椿の葉は墨の輪郭に緑青の色を載せ、椿の葉の厚みを上手く表現している。
鶯のくすんだ茶色を渋く表現するとともに、椿の花は赤くどっしりと描いている。玉蘊の壮年期の花鳥画に比較し、全体にゆったりと花を正対して描いているように思われる。
玉蘊60歳代で残っている作品は少ない。壮年期のように注文に応え、どんどん制作した時期とは違い、無理せず、ゆったりと絵に向かい合っていたのであろうか。