応門十哲 長澤芦雪 「黄初平図」(84) | okuda8888のブログ

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長澤芦雪 「黄初平図」 紙本

                横55㎝×縦133.5㎝

 

応門十哲の一人、長澤芦雪の「黄初平図」である。黄初平は中国東晋時代の仙人で、一人の道士に気に入られ、40年間道教の修行し、その結果白い石を1万頭の羊に変じる術を得るようになった。

 

 

この絵では、足元の白い石を羊に変えつつあるという点、黄色い服を着ている点などから仙人「黄初平」を描いていると分かる。

 

 

しかし、黄初平が描かれる時は仙人となった壮年を描くことが多いが、この絵は不思議なことに若者を描いている。

黄初平は道士に連れていかれる前は、羊飼いをする若者であった。手に持つ鞭は羊飼いの生活を表しているのであろう。

右手を額に置き、困惑している表情に見えるのは、自らの道士になる運命への不安の表情であろうか。

 

また、使用されている印は六角形の縁取りの中に「魚」を配した、芦雪の代表的な印である。

この印には有名なエピソードがある。芦雪が応挙の門人になり、通っていた若い頃、朝小川の氷に囲まれ不自由にしていた小魚が、夕方帰りに見ると氷も解け魚は自由に泳ぎ回っていた。この話を師の応挙に話すと、画家も同じようなもので、師について学んでいるうちは不自由に感じるかもしれないが、師の教えを十分に習得すると、後は自由な精神で自分らしい絵が描けるようになると諭されたことを縁として、芦雪はこの印を作った。六角形の線が氷で、氷に魚が閉じ込められていることを印にしたのである。

 

後年芦雪は右方の縁が欠けた印を38歳頃から使い始める。従ってこの絵は芦雪38歳以前の若い頃の作と言える。

 

 

囚われることなく、伸び伸びと描いている線も魅力である。鞭は一気加勢に描き躊躇する気配はないが、絵の中でしっかり納まっている。

普通壮年の仙人を描くところ、若い牧羊の時の黄初平を描くなど、意表をついた表現である。

後年長澤芦雪を伊藤若冲などとともに「奇想の画家」と呼ばれるようになった芦雪の真骨頂を示す絵である。