遠藤周作「影に対して」 | OKPARIS王様のBOXSTEP投資

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6月18日(火)


遠藤周作「影に対して」

遠藤周作没後発見された未発表原稿数作品を
短編集として刊行され、令和5年に文庫化された



表題作「影に対して」

勝呂(遠藤周作)は小説家を志すも評価を得ず
翻訳の収入で
かろうじて妻子の生計を維持

窮地には父親の資金支援を得る

勝呂の両親は、その少年時代に離別
本心では母親から離れたくないが
母親は音楽家を志し(家庭に埋没せず)、将来の担保がない

一方、父親は教師で安定生活を望め
将来の不安はない

父親の親権を選択させるプロセスは
詳細に語られているわけではないが

(こどもである主人公の五感の範囲に限定)
両親の話し合いで決められたこと

そして
母親が天上に先立つ

勝呂少年の両親離別にまつわるエピソードが
連綿とつづられて
両親の心理・勝呂の心理のあやを
見せてくれる

ということになるが

修飾をはぎ取ると
家庭裁判所書記官(ケースワーカー)の
家事審判事件の報告書

ひとつのケースにとどまっている

ひと様ののぞき見を誘う、というのは
いかがなものか、という読後感

読んでいるときは
ネスカフェのTVコマーシャルの顔が
念頭にうかぶので

老人が自身の少年期を綴りこむ
気持ち悪さがあった

(解説によれば40歳台の制作と明らかにされている)

収録の「影法師」の方は
母親の半生を左右し
「僕」の人格形成に影響をあたえた
スペイン人神父を軸に、その末路までが描かれていて
短編小説としての熟度はずっと高く
未発表だった理由がわからない、神父の実存への配慮か。