「神さまは、午前中しか神社にいらっしゃらないと聞いたことがあるのですが、
本当ですか?参拝や祈祷は、午前中でないと駄目なのですか?」
と、先日、お詣りになったかたからご質問がありました。
午前中しか神社に居ない『宮司』、というのはあるかもしれませんが(笑)、
神さまは、そのようなことはありません。いつでもいらっしゃいます。
そもそも神さまは、我々のように体がひとつしかない存在ではなく、
神在月(10月)として出雲大社にお集まりになっていると言われるときでも、
本来の鎮座地にも同時に、神さまはいらっしゃいます。
ただ、一般的に、お詣りや祭典は「太陽が出ているうちに」行うのがよい、
という考え方は、あります。
また、祭壇や神棚などは、
「神さまに、東または南(=太陽の方角)を向いていただくのがよい」
という考えで設置を致します。
天照大御神は太陽神であられますし、明るい陽の光のもとにあることで、
神さまの御加護が得られる、という感覚が、神道にはあるのです。
その意味では午前中限定ということは全くなく、午後も明るいので、含まれます。
一方で、午前中、とくに早朝ならではの良さ、というのも勿論あります。
朝早いほど、空気が清浄で、あたりも静かです。
何にも煩わされず、神さまの前で祈ることができるのは、
早朝のお詣りの良いところです。
多くの神社や、神社庁などでの講習会では、「朝拝」と「夕拝」が行われます。
朝、最初に関係者が御神前に並んで拝礼して一日を開始し、
夕方、その日の仕事や勉強を終える前に、また集まって皆で拝礼をします。
では逆に、完全に夜になってからは、お詣りしてはいけないのでしょうか。
明確に「悪い」ということはないと、私(=宮司)は思いますが、
明るい時間帯に較べると、望ましいとも言えません。
防犯の観点からも暗闇は危険ですし、
丑の刻参りや、ある種のお百度参りなど、夜陰に乗じて行う習慣も昔からあり、
これらは呪術的で、特別な雰囲気が漂います。
やはり神社は、昼の顔と夜の顔が異なるという印象を私は持っています。
大祭の前夜祭や、大晦日から日付が変わった直後の初詣、
あるいは月を愛でる観月祭、など、
夜に暗くなってから参拝客で賑わい、夜店が並ぶような日は特別ですが、
それらは年に数えるほどの、例外的な行事であって、
普段はやはり、神社は明るい時間帯にお詣りするのが良いと思います。