起こるべくして起こったといえるのかもしれない。
とうとう、トメが警察に保護されるという事態が発生した。
きっといつかは・・と覚悟はしていたけれど、
あっという間に現実になっている。
それは某日夜のことだった。
まもなく22時、というほろ酔い時間に夫のケータイが鳴ったからドキリ。
警察からの電話だった。
21時30分頃、ひとり夜道を歩いていたのを心配したご親切な誰かが
ニンチさんかもしれないと通報してくれたのだった。
「引き渡すので来てもらえますか」との要請だったけれど、
私も夫もアルコールが入っていて動けない。
そう伝えると、まさかの「GPS」が役立った。
GPSで、自宅に戻ったことを家族が確認できれば、引き渡し扱いにするという。
そういう裏技があるんだね(特例的に、かも)。
保護された場所は、最近何度かトメがうろうろしていた界隈だった。
自宅からそう遠くはなく、距離だけなら大したことはない。
けれども問題は、「夜21時半」という時間帯である。
都会と違って、田舎はもう真っ暗、人通りなんて皆無に近いのに
なぜ、なんのために、そんな夜中に外に出かけてしまったんだろう?
コンビニにでも行きたかったのか、いや、逆方向だからあり得ない。
普通なら、パジャマに着替えて寝る準備をしていてもいい時間なのに、
しっかりバッグも持って、家の鍵もかけて、一体どこへ行こうとしたんだろうか。。
警察官によれば、保護した時、
「家の住所は言えたが、名前は言えなかった」らしい。
トメの性格からして、わざと別の名を言ったのかもしれない、とも思う。
そして、鼻の頭と上唇にキズがあり、少し出血もあった。
どこかで転んだのか、はたまた家にいる時に既にぶつけていたのか?
聞いたところで本人が覚えているはずもない。
警察としては、ケガがあるのにこのまま帰宅させて
夜中に容態急変なんてことになってはマズイらしく、大袈裟とも思ったが
「一応、救急車を呼びます」と手配してくれた。
結果、軽い擦りキズ程度というお墨付き(?)を得て、まずは安堵。
その後、身動きできない私と夫の代りに、従妹夫婦がかけつけてくれて
身元引受書を記入提出したのち、警察と救急隊は撤収となった。
この間、トメ宅は警官3名+救急隊2名+親戚2名 の大賑わい。
これだけの人数が、あの狭いトメの部屋に集結していたなんて、
さぞや、トメが落ち着かなかっただろうと思う。
従妹夫婦が「また外に出てしまうのでは」と心配して、
しばらく家に留まってくれようとしたが、それは丁重にお断りして
むしろ早くトメを一人にして、静かな環境にしてくれるよう頼んだ。
結果、その後はGPSの位置情報が動くことはなかった。
きっと、同様のことはまた起こるだろう。
警察沙汰になったのだから、もう、トメひとりを自宅に置いておくのは危ない。
できればショートステイさせたいところだが、それは施設側から断られた。
トメには「脱走の前科」があり、「体を張った介護拒否」の実績も多々ある。
ショートステイ中、もしもの時に家族が駆けつけ、引き取ることができなければ
受け入れてもらうことはできない。
だったら、しばらくトメ宅に、私か夫が待機すればいいのか?
それは無理だ。仕事の都合もあるが、それ以前に、あんなクサイ家にいたくない。
それに、何日くらい一緒にいれば大丈夫、なんて保障もない。
家族が面倒みられないから介護サービスを使いたいのに、
介護サービスを使う条件に、家族が面倒をみることが含まれる、という
どうしようもないジレンマ。
もうこうなったら、何が何でも、入院だ。
トメの意向は、可哀そうだけど無視!
ケアマネにも、主治医からの紹介先に入院希望の旨を伝え、了承を得た。
頼りにならない夫のことは、頼りにしなければいいのだ。
淡々と、粛々と、とにかく前に進めていこう。
がんばれ、私。