実父がすごすぎて | ヨメトメ戦記

ヨメトメ戦記

2014年10月アルツと診断されて以降、ガンとして独居を貫いたシュートメと、トメ嫌いな鬼嫁の毒吐き記録。独居で約10年踏ん張ったが、2023年12月頃から急激に進行、ついに2024年6月、認知症専門病棟に医療保護入院となる(現在入院中)

私の父は昭和ヒトケタ生まれ、卒寿を過ぎているが実に丈夫だ。

入れ歯で硬いものが苦手になったり、

耳がとんでもなく遠かったり、年齢なりの衰えはあるものの

いわゆる「持病」というものはない。

昔、大腸がんと口腔がんの入院手術歴があるが、

とっくに経過観察期間も終了し、無罪放免状態である。

 

父の年齢なら普通は、血圧だとか、なにかしら服薬のあるのが普通だろうけど

今のところ一切、薬は処方されていないのだから恐れ入る。

「オレが毎日飲んでんのはな、コッチ。これが一番のくすりダ!」

おちょこを持つ手振りで、ニヤリ。このポーズがお決まりだ。

父よ、呑兵衛の遺伝子は、正しく私にも受け継がれているよ。

おいしく飲んで、長生きして、百薬の長を証明してね。

 

さて、その父。

以前からうすうす感じてはいたけれど、この頃とみに再確認することがある。

それは父の「記憶力」だ。

母亡き今、父娘の会話がふえたこともあってか、驚かされることが増えた。

 

私ですら、この頃は芸能人の名前がすぐに出てこなかったりするのだが

父は年齢の割に記憶力が素晴らしい。先日も

「前にお父さんとふらっと入った店、ホラ、あのまぐろ丼食べたとこ、

なんていう店だったっけ・・」

と私がモヤモヤしていると、ほどなく父がズバリと店名を言ったのだ。

「ん? 酒田の〇〇〇屋、のことが?」

すごい! 

 

また、父が某団体の総会に出席した日の翌日の電話で

「今年は会食無しで、〇〇寿司の仕出し弁当だった。それが豪華でよ~」

というので、どんな弁当だったのか軽い気持ちで尋ねた。すると、

「田の字型の弁当箱で、寿司屋だからまずは握りダロ、

それからその横が天ぷら、下の段の左には漬け焼きの魚が入ってて

ブリだと思うがよく浸かって、いい味だっけよ~。

あどはローストビーフ、これが柔っこぐで、いやんべ(いい塩梅)だけ」

・・・すご!!!! メニュー解説、完璧じゃん。

うちの夫なんて、昨晩のメニューすら忘れることあるぞw

 

ほかにも、些細なことだが感心するのは、メモ魔であること。

「昨日は祥月命日ださげって、〇〇君夫婦が花持ってきてくれた。

おとといは、〇〇さんから白菜とネギもらったがら鍋にした」等々。

そういう記録があると、実に助かる(お礼とか)。

 

料理の腕もめきめき上がってきた。

冷蔵庫にこの食材が残っているから今夜はアレを作る、とか

主婦並みによく考えて献立を考えていることにびっくり。

ムスメとしては、里帰りした時くらい料理してあげようと思うのだが、

逆に、手料理で迎えられることが多い。

もともと基本的な料理はできる人だったけれど(←母の仕込みで)

おでんの大根はキチンと面取りして、とぎ汁で丁寧に茹でていたり

釣果で作ったしめ鯖やら、イナダのなめろうやらを用意してくれたり

嬉々として「男の腕まくり」を実践している。すばらしい。

 

近年、「耳の遠い人は認知症になりやすい」という説を目にするけれど、

父にはまるで当てはまらない気がする。

補聴器ありでも真横で大声で喋ってやっと聞こえるほどの強度の老人性難聴なんだけど、

今のところニンチさん的な気配は皆無だ。

「早寝早起き病知らず」の言葉通り、判で押したような元気な毎日。

朝食後のウオーキングと晩酌を欠かさず、隅々まで新聞を読み込んで、

晴れた日には庭仕事をし、雨雪の日の暇つぶしはもっぱら「数独」。

誘われれば、釣り仲間と船釣りに出かける。

パッと見は瘦せ細ったヨボヨボ爺さんだが、中身はまだまだイケメンだ。

 

母が亡くなってまだ3か月余り。

「急に一人暮らしになって、寂しいでしょうね」とか

「お父さん、大丈夫? 元気そうでも中身は堪えてるんじゃない」とか

いろんな方に心配していただいた。

本当にありがたいと思っている。

だけど、私の目には、父がそんなに凹んでるようには見えない。

ひと様が思うよりずっとしっかりしているし

おそらく、もうとっくに「妻離れ」している。

無理しているのでもなく、強がりでもなく。

 

一般的に、妻に先立たれた夫は弱っちくなり、

夫に先立たれた妻はたくましく生きていくものらしいけれど、

わが父の場合は、後者のパターンに近いかな。

チクチク小言をいう人がいなくなって、

どこかノビノビしているというか、羽を伸ばしつつあるというか。

そうはいっても超高齢者。

頑張りすぎない程度に、元気で、自由に暮らしてもらえればと思う。

 

前記事で、周囲に迷惑かけてまで長生きするのは勘弁だという意味で

トメへのストレスを書きまくったけれど、

父のように、ボケずに元気で暮らせるなら、長生きも悪くない。

先日の里帰りで

「この調子なら100歳まで大丈夫なんじゃない?」

と褒めちぎったら、

「いや。あと2~3年でいいわ。お前たちに迷惑かける前に死ぬから。

ボケたり病気になったりしたら、施設さ入るワ」

とあっさり。

 

そういう気持ちでいてくれるって、お父さんらしくて好きだわ。

あんな母と、こんな父のムスメだもん

トメと相性がいいわきゃない(笑)

 

 

お父さん作。器選びと盛り付けには一言いいたい気持ちもあったけど

そんなことはどーでもよくて。

ここまで用意していてくれたことに感激して、日本酒クイクイだ里帰りの夜。