テレビ朝日の「題名のない音楽会」を毎週録画して観ている。

「徹子の部屋」と並ぶ同チャンネルの長寿番組ではないだろうか。

 

今日はフルート奏者のCocomiがゲスト。説明するまでもなく、あの木村拓哉と工藤静香の長女である。

現在、桐朋学園大学に在学中で、先日には有名クラシックレーベルからデビューしたばかりという。

 

有名な親を持つ彼女の実力がどのようなものか、まずはお手並み拝見(なぜか上から目線)との軽い気持で見始めたのだが、その考えはすぐに改まった。「これは本物だぞ」と。

 

1曲目の「アヴェ・マリア」は、彼女の人柄まで偲ばれるような澄んだ音色がひたすら真っすぐに響き、すっと心に入ってきた。1曲目が終わった後のトークでは、いささか緊張した面持ちで、それが初初しくもあり好感が持てる。

 

Cocomiはフルートの魅力を「直接息を吹き込むことで、歌うような音色を生み出すことができる」と話す。母の工藤静香は当時では歌の上手い歌手だったし、父の方も長年アイドルとして歌っていたのだから素質があるのもうなずける。

 

2曲目は「愛の小径(こみち)」という歌曲をチェロとピアノと一緒に演奏。ここでは先の曲から一転、愛の歌を表情豊かに吹き上げる。歌詞の世界とも相まって、感動で涙が浮かんだほどだ。演奏だけではここまでの感動はなかったと思う。詩や言葉の力の強さを感じる場面だった。

 

3曲目は「エストレリータ」という、これまたチェロとピアノとによる歌曲の演奏。チェロとの掛け合いが楽しく美しい。

 

最後は「ヴォカリーズ」というラフマニノフの曲。もとは母音だけで歌う歌曲のようだが、それをフルートの陰影ある音色で表現した。

 

実を言うと小学校高学年から中学までの数年間、フルートを習っていたことがある。

もともとはピアノを習っていたのだが、転校を機にピアノを辞めてしまった私に母が薦めてきたのがきっかけだった。

理由は「リコーダーの演奏が上手いから」。たしかに、学校の先生から「★▲さんのリコーダーは、まるでオカリナの音色のようね」と褒められたり、学芸会で演奏したこともある。

 

しかし、いざフルートを習ってみると、リコーダーとはまったく異なるものだった。

まず、音の出し方がまったく違う。フルートの音が鳴るまでに1カ月はかかったと記憶している。

 

そして、これがいちばん大変だったのだが、肺活量がものすごく必要な楽器なのだ。

私は当時、体力には自信がある方だったが(体力測定で握力と背筋の記録がクラス一番だったこともある)、こと肺活量の測定だけはまったく目盛りを上げることができなかった。

 

それでも渋々教室に通い続け、初めての発表会ではリストの「愛の夢」を演奏した。

この曲はピアノの演奏では音色豊かな曲にきこえるが、フルートだとひたすら同じ音を長く吹く場面の連続で、肺活量のない私にとっては地獄のような一曲なのである。

 

それきりフルートは辞めてしまい、楽器とは無縁の生活を送り今に至る。

今日、番組でCocomiさんがフルートを吹く姿を見て、「私も続けていれば、これくらい吹けるようになったのかな?」(←そんなわけない)と想像したりした。

 

今、いちばん下の妹の長女が中学の部活でフルートを吹いている。

あれからなぜか捨てられなかったフルートを姪に譲ったのも何かの縁だろうか。

 

今日の放送は事前に知らせておいたのだが、観てくれただろうか。

姪には私のように途中で辞めたりせず、大人になるまで続けてほしいものだ。

でも、きっと彼女なら大丈夫だろう。なぜなら、幼い頃から習った水泳で肺活量は鍛えられているはずだから。