んちゃ!道は長く険しい大沼です。
昨日の夜は稽古後にファミレスに行った。
美味しいディナーを食べるため。
ではない。
セリフを叩き込むためだ。
深谷くんの世界に近づきたい。
早く台本を手から離したい。
腰を据えて臨まねば。
台本を開くとセリフの山が雪崩のように押し寄せる。
一つの山を登り切った先にはまだまだ山が続いている。
セリフの連峰だ。
(よし、やるぞ)
討ち入りのような神妙な面持ちでファミレスに入る。
メニューの表紙にはオマール海老の写真が。
(最近のファミレスは、フォアグラだったりオマール海老だったりリッチだなぁ。美味しそうだなぁ)
「ご注文が決まりましたらお呼びくださ…」
「ドリンクバーをお願いします」
問答無用だ。
戦闘モードだ。
鉢巻はしていないけど、心の中は受験勉強だ。
お腹を満たしてしまうと頭がぼんやりしてしまう。
大丈夫、ここは深夜のファミレスだ。
重い食事をする人はいないだろう。
僕は台本を開き、ブツブツと小声でセリフを唱え始めた。
「ふんっ!ぬはぁっ!!あぅっ!」
間違える度に小さくそんな声が漏れ出る。
セリフの連峰の登山は険しい。
お腹も減った。
思うように進まないが、険しい道のりを懸命に登っていた。
1:30を回った頃。
隣の席に座っていたおじさんのテーブルに熱々のハンバーグが置かれた。
ジューーー。
まさかの深夜1:30に、ハンバーグ師匠だ。
ジューーー。
ジューーー。
「ふんっ!ぬはぁっ!!あぅっ!(ダ…ダメだ…!なんて…なんて美味しそうな匂いと音なんだ…!!)」
突然のハンバーグ師匠の登場に、戦意を失い、僕はすごすごとファミレスを後にした。
さぁ、今日も稽古。
山登りに勤しみます。