正当評価せねばならないホラー映画の傑作

1980年 監督/ ショーン・S・カニンガム

本作を知ったのはまだ小学生の頃。狼男や半魚人、ジョーズなどのモンスター系ホラーを好んでいた10歳の少年に、突如暴力的な洗礼を喰らわせたのが『13日の金曜日』でした。

パックリと開いた傷口から血が噴き出る、身体を銛や弓矢が貫く、斧が顔面を割るなどなど、これまでに見たことの無い斬新な映像表現に熱狂しました。『13日の金曜日』は、それまでのホラー映画と一線を画す超過激な残酷描写で、"スプラッター"というサブジャンルを世に知らしめたのです。


斬新な特殊メイクを手がけたのはトム・サヴィーニ。本作の二年前にジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』で前衛的な特殊メイクを披露していましたが、本作でその技術とセンスをより進化させ、センセーショナルな映像作りに大きく貢献しました。


本作の大成功により続編『13日の金曜日PART2』が公開される頃には、各社がこぞってスプラッター映画を量産し、映画界にスプラッターホラーブームを巻き起こしました。

間も無く作品の要となる特殊メイクによる残虐シーンは映画の主役となり、観客はより過激な映像を求めるようになりました。

かくいうボクもその一人で、第1作のようなミステリー要素やサスペンス性を排除し、よりショーアップされた続編『13日の金曜日PART2』『13日の金曜日PART3』『13日の金曜日 完結篇』の方を好みました。

というよりも第1作が持つ陰湿な怖さが肌に合わず、いつからか拒絶していたのです。


しかしこの度、ちょっとした気まぐれで30数年ぶりに本作を再鑑賞したところ、これまで抱いてきた作品への印象を完全に変えられてしまいました。その最たる理由はショーン・S・カニンガム監督の演出力です!闇に潜むサイコキラーの息遣いすら聞こえてきそうな緊張感みなぎる映像に戦慄し、作品を楽しんでしまったのです。

これまで本作にはトム・サヴィーニの特殊メイクに乗っ取られた感を抱いていましたが、いやいやカニンガム監督の演出力たるや相当なものですよ!『13日の金曜日』は紛うことなきスプラッター映画ではありますが…


これはサイコホラーの傑作じゃないか!!




【この映画の好きなとこ】


◾️タイトル

ガラスがパーンと派手に割れるのではなく、ガチャンと静かに割れる不気味さと緊張感。故意か不明だが、本編の女性死体が窓ガラスを破り投げ込まれるシーンを連想させる。

派手すぎない不気味さ



◾️風景画

不気味な静寂に包まれたクリスタルレイクキャンプ場の描写が圧巻で、傑出したカットが目白押し。風景画だけで不吉な空気感を醸し出せるのは相当な腕前。

多分奥にあの人がいる

白波がざわつかせる不穏なカット!これ一番好き

カニンガムってマジ映像派じゃない?



◾️

顔面向けて斧が振り下ろされる印象的なシーン。注目したいのは斧がランプシェードをかすめるリアルで細やかな演出。揺れる照明が劇的演出にも一役買っている。

斧のシルエットもインパクト大!

揺れるランプシェード!上手い!



◾️ジェイソンの声〜考察 ※ネタバレ

雨に紛れ微かに聞こえるジェイソン少年の助けを求める声。ボーヒーズ夫人によるものと解釈するのが一般的だろうが、ジェイソンの怨霊が森を彷徨っていると考えるとより怖く、より面白い。そう考えれば超自然的なラストにも無理なく繋がってくる。

個人的にはここが一番怖くて好き



◾️暗闇

圧倒的暗闇。否が応でも疎外感を増幅させる雨。人が消えていく恐怖。以降のシリーズ続編で確立するVSジェイソンのバトルアクションでない、本当にホラー映画だった頃。

真っ暗闇で重厚感マシマシ

最後の一人となる絶望的恐怖!



◾️絶望

ボーヒーズ夫人の登場で安堵させてから奈落の底に突き落とす名人芸。ベッツィ・パーマーの演技力が想像を掻き立てさせるのだが、もしかしたら亭主も殺してるのでは…。

愛息子を思う悲しい物語なのである

このカットが残酷で悲しいものに見えてきた



◾️湖上にて〜考察 ※重要なネタバレを含む

ジェイソンが登場する第2作への続投を打診された特殊メイク担当のサヴィーニは「ジェイソンは死んでいるのにバカバカしい」と断っている。"第1作の最後に登場しているのに?"と長年思っていたが、あのシーンは主人公の悪夢だったという結論に今回辿り着いた。そう考えるとサヴィーニの発言も容易く理解出来る。もしもこの第1作だけで完結していれば、本作はもっと神格化されていたかもしれない。そう考えるとジェイソンが登場する続編の製作は確かに冒涜と言える。

もしくはジェイソンの怨霊と考えていいかもしれない

映画史上最も効果的なオーバーラップのひとつ



今回鑑賞してこれまでの『13日の金曜日』とは俄然印象が変わりました。ジェイソンが主役となり、ただ人を殺すだけの続編(ただそれが好きなことに変わりはありませんが…)とは別格のホラー映画であり、子を思う母の愛の物語でもあり、シリーズ続編とは切り離して観るべき孤高の作品です!

結論。本作においてジェイソンは死んでいるとボクは考えます。


第1作以降カニンガムは製作にまわり監督業を他者に任せていますが、この演出力を眠らせるのは惜しいなあ。もっと映画を撮るべき、撮らせるべきですよ。

またインパクトある楽曲を提供したハリー・マンフレディーニもシリーズ作品以外にもいくつかのホラー映画を手がていますが、ホラー以外でも絶対いい仕事をするはず!もっと仕事あげてくださいよ!


シリーズは2002年に公開された第10作『ジェイソンX』が目下の最新作(2003年のクロスオーバー作品『フレディVSジェイソン』、2009年のリブート作品『13日の金曜日』もありますが)となっていますが、ようやくシリーズ最新作の製作が決定したようです。他にもA24が前日譚のドラマシリーズを製作するなど、まだまだ13日の金曜日人気は衰えていません。

新作でもジェイソンの殺戮劇が繰り返されるんだろうけど、なんか本作に影響されたのか違う物語が観たくなってきたなあ。

新たな傑作の誕生を期待していますね!




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