再びキャメロンに浸る
1994年 監督/ ジェームズ・キャメロン
この作品が公開された1994年は、007シリーズファンにとって絶望の5年目でした。1989年に公開された第16作『消されたライセンス』以降、製作会社のイオンプロダクションは権利裁判を抱え、製作再開までの6年間を裁判に費やさざるを得なかったのです。
二年に一度帰ってくる世界一有名なスパイ、ジェームズ・ボンドはこの期間姿を潜め、ファンは長いボンドロスの渦中に置かれていたのです。
そこに目をつけ、スパイ映画市場に参入したかは不明ですが、フランスのスパイコメディ映画『La Totale!』(1991年・日本未公開)を観たアーノルド・シュワルツェネッガーがジェームズ・キャメロン監督にリメイク話しを持ちかけ実現したのが『トゥルーライズ』です。
シュワルツェネッガー演じる主人公のハリー・タスカーは、タキシードを着こなし驚異的なアクションを披露する敏腕エージェント。それは否が応でもジェームズ・ボンドを連想させるものでした。
それで文句なしに楽しませてくれればまだ良かったのですがっ!!
スパイコメディのリメイクだから、当然『トゥルーライズ』はスパイコメディをベースにしたアクション映画。しかし、ボクが抱いた公開当時の感想は、"これをキャメロンがやる必要あるのか?"だったのです。
ジェームズ・キャメロンといえば『ターミネーター』『エイリアン2』のダイナミックな映像と怒涛のスペクタクルで世界中の映画ファンを熱狂させた映像派。それだけあって『トゥルーライズ』のアクションシーンは、さすがのキャメロンクオリティで映画ファンを唸らせるものでした。
しかし、"これがコメディでなければ、緊張感100%の手に汗握る傑作アクション映画になったのではないか?"と思わずにいられなかったのです。アクションシーンが際立つほど、作品に生じる奇妙なアンバランスに違和感を覚えたのです。
そして今回約30年ぶりに本作を鑑賞しましたが、アクションシークエンスは衰え知らずの完成度を誇っており、現代映画でもキャメロン演出には簡単に敵わないものだなと感心しつつ、胸躍らせ楽しみました。
同時に問題のコメディパートが醸し出すアンバランス感も健在でしたが…
しかし!それでも今回は面白さが勝り、なんと2回も観直してしまったのです!
もしも、この奇妙なアンバランスこそが『トゥルーライズ』の魅力なのだとすれば、本作を好きになる日は、もうそこまで来てるのかもしれない。
【この映画の好きなとこ】
◾️スペンサー・トリルビー
(チャールトン・ヘストン)
登場シーンといい、容姿といいまるで007の悪役!圧倒的存在感で名優チャールトン・ヘストンが魅せる!もっと見たかった!
敵じゃなくシュワの上司役です!念のため
◾️オープニング
登場シーンはまんま007シリーズ第3作『ゴールドフィンガー』。007シリーズのお家芸スキーチェイスで幕を開けるが、捻りの無さは007へのリスペクトか?
潜水スーツを脱ぐとタキシード姿てとこも007!
背面で滑りながら銃を撃つとかナイス!
◾️バイクVS馬
高級ホテルで展開される馬とバイクの破天荒チェイス。フロントからエレベーター経由で屋上まで馬が追跡するなんて、キャメロン以外の誰が考えようか!
バイクを追いかけホテル内を疾走!
エレベーターのギュウギュウ感マジウケる
屋上で無茶するヤツ(無茶をさせる破天荒キャメロン)
◾️ささやかなスリル
妻ヘレンの浮気は誤解だったが、ささやかな人生のスリルを求めている事に気づくハリー。スパイの仕事に加担させ満足させようとする気持ちに愛情の深さを知る。
ジェイミー・リー・カーティス 愛の咆哮が素敵
さりげないけど深い愛情がこもっていると思う
◾️笑うテロリスト
テロ首謀者アジズのコメディシーンはどれも秀逸。ここ一番という場面でオチをつけるセンスが素晴らしい。アジズが真剣である程におかしさが込み上げてくる。
カメラの前では常に何かが起こる!?
このしつこさがマジ最高
◾️セブンマイルブリッジ
洋上道路で撮影された爆破シーンがど迫力!これがミニチュア撮影だというのだから更に驚く。暴走するリムジンからの脱出劇も含め、本編中もっとも印象深いシークエンス。
このど迫力!コレがなんとミニチュアだって!!
カッショクペリカンのギャグわらた
暴走するリムジンのアクションスゴい
◾️空中戦
荒唐無稽なアクションを実写化!ハリアーを使いながらも、派手な空中戦ではなく高所のスリルで魅せるクライマックス。ハリアーの重量感はいかにもキャメロン作品らしい。
砲弾が海面着弾からビルをかする変態描写!!スゴい!
これはもう馬鹿騒ぎだ!!
度肝抜くアクションとコメディの融合で締め
どかーん!!
キャメロン監督は、1997年公開作品『タイタニック』の後に『トゥルーライズ』の続編を企画し、シュワルツェネッガー、カーティスの主演続投で脚本も完成させていました。
しかし、2001年にアメリカ同時多発テロ事件が起きたことからキャメロンは、「テロリズムを題材に明るい映画は作れない時代になった」と続編制作を断念しました。
製作予定が白紙になったことから、キャメロンは2本のドキュメンタリー映画を製作した後、2009年に『アバター』を発表。その後シリーズ化され現在パート3の公開が控えており、その後更に2本の続編製作が予定されているそうです。
しかし、アクション映画ファンのボクからすれば、『アバター』に固執せず、現代アクション映画を新しい次元に誘うような実写作品を作って欲しいと願わずにいられません。
なぜなら、キャメロンはその突破口を開くことの出来る稀有な映画作家の一人だから。
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