ロブ・ボッティン (1959年〜)

アメリカの特殊メイクアップアーティスト

少年時代のボクの夢は特殊メイクアップアーティストになることでした。しかし、当時の日本映画界における特殊メイクは、それこそが特殊分野であり、専門学校もないことからその道を諦めてしまいましたが、そんな夢を見させてくれたのが特殊メイクアップアーティストのロブ・ボッティンです。


初めてボッティンの存在を知ったのは、1981年公開のジョー・ダンテ監督作品『ハウリング』です。当時ボッティンは、宣伝チラシや映画雑誌の記事で監督や主演俳優よりも大々的に名前を取り上げられていました。特殊メイクという見せ物を映画の主役に押し上げたボッティンは、時代の寵児として映画界に旋風を巻き起こしていたのです。

ボッティンの師匠であったリック・ベイカーでさえボッティンの仕事には驚きを隠せなかったようで、『ハウリング』と同時期製作で自身が参加していた『狼男アメリカン』の変身シーンを急遽作り直したと言えばこの凄さが伝わりますよね。


そしてボッティンは1982年のジョン・カーペンター監督作品『遊星からの物体X』で、『ハウリング』を凌駕する数々のクリーチャーを創造。人智を超えたデザインは世界中のホラー映画ファンを驚愕させ、ボッティンの名前は広く認知されるようになりました。

『遊星からの物体X』で特殊メイクの神と崇められるようになったボッティンですが、師匠であるリック・ベイカーのようにアカデミー賞のメイクアップ賞を受賞することはありませんでした。しかしひとつだけ確かな事が言えます。


ボッティンは、誰の真似もしないし誰も真似出来ない。唯一無二の造形家である。


80年代に活躍した特殊メイクアップアーティストは他にもたくさんいますが、オリジナルの想像力を持った人間は、ロブ・ボッティンと『エイリアン』のH.R.ギーガーだけだと思います。

凡人には理解し難い想像力。いったいどんな頭してるの?そんなボッティンを特殊メイクの神と崇めるボクが、特に好きな彼の作品を紹介したいと思います!




【神の創造物傑作選】


モンスター・パニック1980年

  脳みそ剥き出しで、腕が異様に長いグロテスクなデザインはいかにもボッティンらしい。とにかく気持ち悪くしようという気概を感じるボッティンの独立デビュー作品。

かつての半魚人のスマートさの真逆を行く!
異様に長い腕がカコイイ!
『エイリアン』のパクリだからやりたくなかったらしい



ハウリング1981年

機械仕掛けの特殊メイク分野を本作で初披露。口が裂ける、爪が指を突き破る、顔面が脈打つなど非凡なセンスで新しい狼男を創造。半獣人のデザインに終止符を打った。

コレからしてもう最高にカッコよくて
獣から人間の腕に逆戻りも心底驚いた
うおーーーーーーーーーーー!!超カッコえーー!!



遊星からの物体X1982年

本作におけるボッティンの狂える才能は、CG全盛の現代映画でも未到達地点にある。撮影期間に1年以上一日も休まず働き続けたボッティンは、撮影終了後に即入院となった。

かわいいワンコもこの通り
こんなこと普通思いつきますか??
いっちばん好きなノリスモンスター!!さいっこう!!



トワイライトゾーン/超次元の体験1983年

コミックキャラクターを三次元化したようなデザインでボッティンは新境地を拓いた。不気味で邪悪なキャラクターも、コミカルなデフォルメでどれも魅力的に見せた。

ボッティンの作品はどれも歯茎とギバが最高
ペットとしてお迎えしてもいいかも
なんで『グレムリン』やらなかったんだろ



イーストウィックの魔女たち1987年

本編最後に登場するジャック・ニコルソン演じる悪魔の正体をクリエイト。短い場面ながら圧倒的なインパクトを残した。デザインと共に造形技術も上がって来ている。

これはもうボッティン印ですな
ただでさえアレなジャック・ニコルソンがさらに…
これは森の妖精なのか!?カワユス



トータル・リコール1990年

大量の個性的なミュータントを生み出した他にも、随所でボッティンの腕が振るわれている。CG夜明け前の作品であり、ボッティンの集大成的作品とも言える。

今度はシュワちゃんイジリ

これもボッティン考案なのだろうか?

グロくも神々しい



ボッティンは80年代の映画界で大暴れしたあとの90年代でも、『氷の微笑』『セブン』『ミッション : インポッシブル』『ファイトクラブ』など名だたる作品で活躍を続けました。しかし、その作品名でお分かり頂けるようにモンスターの登場しない非ホラー、非SF作品ばかりです。残念ながら80年代に巻き起こった世界的ホラーブームは、90年代に終息を迎えました。ボッティンはそれでも映画界に身を置き続けましたが、リアルな変装用のマスクを作ったり、血みどろ死体ばかりを作るのはボッティンの仕事ではないのです。ボッティンの武器はなんといっても"狂える想像力"なのですから。


やがて、時間とコストがかかる特殊メイクよりもCGが好まれる時代が訪れた時、ボッティンは活躍の舞台が無くなったことを悟り、工房を閉鎖し映画界を去りました。


しかしひとつ思うのは、ボッティンが『遊星からの物体X』をキャリアの頂点と考えていたのではないかということです。それ以降のキャリアで自身でも"物体X超え"は達成出来ていないし、他に超えて来る者も現れない。そう考えるとボッティンも"やりきった"と認めたうえで勇退を決めたのではないかと思うのです。

そう思えば密かにボッティンの弟子になる事を夢見たボクも、ボッティンのいない映画界を憂うことなく、彼の作品を繰り返し楽しめるという訳です。


Rob  Bottin Forever.




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