「コレだけ!」なのである

1979年 監督/ ジョージ・ミラー

1979年のオーストラリア映画『マッドマックス』が公開されてから45年以上もの年月が経ちますが、いまだその人気が衰えることは無く、昨年にはシリーズ第5作『マッドマックス : フュリオサ』が公開されたばかり。

1985年公開の第3作『マッドマックス / サンダードーム』から30年を経て製作されたシリーズ第4作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で70歳を迎えるジョージ・ミラー監督が再び世界を熱狂させ、再び世界を震撼させたことは記憶にも新しいと思います。そして同時に、ミラー監督は1979年に生んだヒーローが現代でも生き残れることを証明したのです。


これまでに製作されたマッドマックスシリーズの5作品には、それぞれの世界観とそれぞれの面白さがありますが、世間一般的には『マッドマックス2』と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が圧倒的支持を受けており、この2作品がシリーズの最高傑作に位置付けられていることも映画ファンにとっては周知の事実だと思います。


しかし、ボクに言わせればこの第1作だけが

『マッドマックス』なのです。


第1作は主人公マックスの狂気が描かれた凄惨な復讐劇です。第2作以降の作品は、いずれもアクション映画として高い水準を保つ作品ですが、第1作のような怒りや狂気を孕まない物語である為、好みが別れてしまうのも当然のことです。

第1作でのマックスは復讐を遂げる為にドラマを突き動かす存在でしたが、復讐を遂げた第2作以降では家族や仲間を失った世捨て人の偏屈者として描かれています。生に対しての執着があるわけでもなく、旅先で巻き込まれた時に腕を振るうだけですが、マックスの偏屈ぶりはメル・ギブソンにとっての最高のハマり役です。そのキャラクターで前作を超える人気を博したと思うし、ボクも第2作のマックスが大好きです。

ただ、それでも第1作のドラマと復讐者の咆哮にシビれたボクにとって、第2作以降はどうしても感情移入が難しいのです。

もしかしたら、第1作のマックスという亡霊を追い続けているボクも、ある意味さすらいの偏屈者なのかもしれませんが…。





【この映画の好きなとこ】


◾️マックス・ロカタンスキー (メル・ギブソン)

精悍なマスクに潜む狂気。『怒りのデス・ロード』準備中に飲酒運転・暴言で逮捕され、3年の保護観察処分となり出演出来なくなったメルギブには「バカ!」を100回言いたい!

ボクにとってのマックスはメルギブだけなのに!!



◾️アスファルト

第3作以降のカーチェイスは砂漠で行われているが、ボクにとってのマッドマックスは絶対的にアスファルトの路上!落下=絶命の公式があるからスリルも倍増するのだ!

徹底したローアングルで攻めるミラー演出!
痛みが伝わるよね



◾️ファッション

警官は革ジャンに革パンツ、インナーは水色のTシャツで統一していたが、フィフ隊長だけはSM趣味を匂わせるセンスで『マッドマックス2』の世界観を先取りしていた。

水色のTシャツが正義のシンボルカラーでもあった
隊長さすがです



◾️V8インターセプター

M.F.P.の追跡専用車両でクライマックスにマックスが乗車。エンジン剥き出しのフォルムが抜群にカッコいい。『マッドマックス/サンダードーム』以外全ての作品に登場。

装甲車のようでもある
剥き出しのエンジンなんて誰が考えたんだろう



◾️オープニング

M.F.P.の追跡専用車両を盗んだ暴走族ナイトライダーと、それを追いかけるマックスらの激しいカーチェイス。12分もの長尺だがミラー監督はその演出力で一気に見せた。

究極のあおり映画でもある
随所でマックスをチラ見せ!カコいい!
派手なクラッシュてんこ盛り!



◾️罠に落ちたグース

マックスの相棒的存在であるグースへの逆恨みから凄惨な処刑を行うナイトライダー。転倒した車内に閉じ込められるグース。漏れるガソリン。擦られたマッチ…。

このシーンは少年少女にトラウマを植え付けた
一本のマッチをここまで恐ろしく描くとは…



◾️集中治療室

集中治療室で昏睡状態のグースを描くシーンは、本作で最も強烈なインパクトがあった。直接的描写を避けながら、その凄惨さを想像させるミラー監督の演出に心酔した。

シルエットだけで怖い
観客も心拍数が上がる
『バーニング』より遥かに強烈だった!



◾️ジェシーとスプローグ

マックスの妻子が轢死させられる凄惨なシーンだが、ミラー監督はここでも直接的な描写を避けて演出。駆け寄るマックスを遠景で捉える演出が秀逸。

まさかこの2人を狙うなんて
アクセルを全開にするナイトライダー

死人のように立ち尽くすマックスも強烈



◾️復讐の鬼、または怒れるヒーロー像

敵の銃弾を受けてなお立ち向かうヒーロー像は少年の心を掴む。ズタボロの身になりながらも、怒りを増幅させ追い詰める姿に恐怖の美学がある。

脚を撃ち抜かれ
腕を轢かれ (このショットガン欲しい)



◾️路上にて

ナイトライダーの首領トーカッターを執拗に追い詰めトレーラーと衝突させるマックス。その後、手下の雑魚一匹逃すまいと徹夜で車を走らせるシーンに戦慄。

猛スピードの追撃がスゴい
飛び出すトーカッターの目
どかーん!!
戦慄の徹夜運転



◾️エピローグ

最も非力な手下に行う凄惨な処刑。本編最後の見せ場にした事で、関係者全員許さないというメッセージが高まった。グースが味わった恐怖を倍返しにする手段も効果的。

グースの弔い合戦だ!
手錠は10分だが、お前の足なら5分で切れる(親切)
ひえー!!すまんかった!!





本作を初めて観たのは確か小学6年生の頃でした。それまでに観た事もないようなバイオレンス描写に慄き、それを上回るマックスの非情さに震えました。善と悪が対立する構造は子供にも分かりやすく、鮮烈な記憶として『マッドマックス』をボクの心深くに刷り込んでくれたのです。


『マッドマックス』は、すべてを奪われた男のヘビーな復讐劇であり、「どうぞアクションを楽しんでください」という類の作品ではありません。しかし、本作で展開されるカーチェイスは最高のアクションであることも事実です。

映画の楽しみ方は無限ですが、この『マッドマックス』もその最たる例だなと思うと、まだまだ本作の魅力は伸びそうだなと感じたのでした。