凝縮されたセンス

1965年 監督/ テレンス・ヤング

007シリーズ第4作。現在公開中のBOND IS BACK IN THEATERS 2023にて鑑賞しました。


今回のお目当てはズバリ、トム・ジョーンズの主題歌とモーリス・ビンダーのグラフィックアートが至極の陶酔にいざなってくれるタイトルシークエンスです!その3分間だけを観る為に劇場まで足を運んだのです。それ程『サンダーボール作戦』のタイトルシークエンスは素晴らしく、映画一本分の料金を払ってでも劇場で観たいと思わせる魅力を纏っているのです。

つまり、裏を返せば『サンダーボール作戦』の本編にはまるで関心が無いということです。実はこの作品、ボクの私的007シリーズランキングではワースト5にランクインされる程苦手な作品なのです。


本作を好きになれなかった理由はいくらでもありますが、一番の理由はアクションが凡庸であること。シリーズ初の海洋アクション作品とあり、バハマ諸島の景観や大規模な水中戦が展開されますが、どれも単に殴り合う、撃ち合うといったものばかりで、007シリーズ特有の"奇抜ながら洗練されたスタイル"が本作では身を潜めています。

第二にチェイスシーンが無かったこと。シリーズにはこれまで車、バイク、ボート、或いは飛行機などでのチェイスがほとんどの作品に登場して来ました(もう一作の例外が『カジノ・ロワイヤル』)。チェイスシーンが盛り込まれなかった事により、作品としての中弛みを感じずにはいられませんでした。


だから『サンダーボール作戦』は嫌い。


そして、今回初の劇場鑑賞。

お目当てのタイトルシークエンスで、予想以上の爆アガりと陶酔に席を立てず本編を眺め続けていたら、画の美しさと音楽の素晴らしさに魅せられてなんだかズルズル。ふと気がつけば『サンダーボール作戦』の世界にどっぷりと浸っていたのです!


なんてこった!!


スクリーンで観る『サンダーボール作戦』は、もはや美術鑑賞でした!シリーズ第1作『ドクター・ノオ』、第2作『ロシアより愛をこめて』を監督したテレンス・ヤングが戻って来たのですから当然と言えば当然!これまで本作を子供向け作品と誤認識しておりましたが、『サンダーボール作戦』はリッチでゴージャスな"大人の007"でした!!

マジすみませんでした!!




【この映画の好きなとこ】


◼︎音楽

情緒に溢れたジョン・バリーの音楽は、"作品の優れたストーリーテラーである"と評しても言い過ぎでは無い。『サンダーボール作戦』は体感する映画である。

ボンドがカジノに現れる短い場面で使用されたスコア。バリー先生はホントにジャズが上手い



◼︎ロケーション

バハマ諸島の美しい海と風景を筆頭にフランスの古城や、カーニバルなど異国情緒満載。作品全体が美しいトーンで統制されている。

街並みの色合いまで完璧な気がする
サメもウミガメもマンタも!なんでもいる
カーニバルの熱気!



◼︎美術

美術担当ケン・アダムの仕事ぶりは絶好調で、特にスペクターの会議室と水中スクーターのデザインは出色の出来。作品の性質を見極め、計算され尽くしている。

無機質で冷たいスペクター会議室(または処刑場)
スペクターの水中スクーター!カコイイ!欲しい!
スペクターと相対的温度感のMI6会議室もすばらし



◼︎アバンタイトル

ジェットパックでボンドが舞い上がる様は、笑いと重厚な迫力が入り混じるカオスな名シーン。無茶苦茶な設定ながら圧倒的パワーで観るものを感動させる。

重厚カット
笑うけどスゴい



◼︎タイトルシークエンス

爆音で鳴り響くイントロと水中に現れる女性のファーストカットには、思わず立ち上がり叫びたくなる程!劇場で楽曲と映像を全身で浴びる快感は、もはやコンサート会場の域!

シリーズでいっちばん好きだ!!



◼︎ボンドファッション

コネリーは何気に短パンが似合う。衣装担当のセンスが抜群で、どのシーンでも最高に洗練されたボンドが拝める。お洒落ボンドランキングにおいてはトップ3に入ると思う。

コネリーはやっぱ胸元をはだけるのが似合う
短パン履いたボンド他にいたっけ?
サングラスもバッチリだ!


◼︎ドミノ (クローディーヌ・オージェ)

シリーズで最も好きなボンドガール!その美しさと可愛らしさは、もはやリアルバービー人形!ドミノだけのカットを集めた珠玉の動画を是非ご覧ください!




◼︎ディスコボランテの暴走

いかにも60年代の合成映像だが、大スクリーンで観ると半端ではない臨場感が味わえる。これはもうスリルに飲み込まれるが勝ち。

岩場をかすめながら暴走!
岩場がグングン迫る戦慄のカット!
最後に大爆発!気持ちいい!



おまけ★

カーニバルパレードのど真ん中でオシッコするわんこを発見!かわいい😍

劇場の大スクリーンで観て初めて気づいた



いやあ素晴らしい!最高に楽しかった!!

劇場を出たあとは、"サンダーボール作戦のテーマ"がエンドレスで脳内演奏されてました!まるで夏休みの映画祭りを楽しんだ小学生みたいでしたよ!

今回の鑑賞では、多くの隠された魅力(ボクが気づいていなかっただけともいう)を知ることが出来た為、シリーズのワースト5からランクアップするどころか、シリーズでも特に好きな部類に昇格しちゃいましたよ!


『サンダーボール作戦』は間違いなく劇場向きの作品です!どんなに好きな作品でも自宅鑑賞と変わらない印象の作品て結構あるんですよ。テレンス・ヤング監督程の名匠であれば、やはり劇場の大スクリーンに映された画を意図して撮影しているわけですからね。やっぱり劇場で観てホントによかった!

都内ではすでに上映終了となっている本作ですが、神奈川県では2月から上映開始。

まだまだ追いかけられるな!





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