現在まで続く人種の壁を越えたバディムービーのハシリなのか!?
1967年 監督/ ノーマン・ジュイソン
刑事モノを筆頭に、名作、ヒット作には黒人と白人のコンビものが多いですよね。なぜ黒人白人のコンビはこうも魅力的なのか。迫害や差別で隔てられて来た壁を乗り越え、手を取り合い共に歩み始める姿への感動と、その一歩を踏み出す勇気への称賛が込められているからではないかと思うのですよ。人間は弱者を虐げる残酷性を持っています。しかし、ゆっくりだけど、幾つもの時代を重ねながらゆっくりゆっくりだけど、人間は変われるんだなあと思わせてくれるのがこの作品です。そして、時代と共に人間が変わって来た理由のひとつとして、少なからずこのような映画の貢献があったのだろうと思いたいです。

黒人差別が根付く1960年代アメリカ南部の田舎町で起きた殺人事件を舞台に、黒人差別や権力への不審を抉る脚本、演出が秀逸です!小さな(と言っては失礼なのですが)殺人事件をきっかけにアメリカの闇がジワジワと浮き彫りにされます。

シリアスなテーマながらも"商業映画"として成立させている大きな要因がクインシー・ジョーンズの音楽です!この人の音楽抜きだと結構重苦しい作品になってたと思いますよ!うだるような暑さにクインシーの音楽って最高すぎます!



【この映画の好きなとこ】

◾︎ビル・ギレスピー(ロッド・スタイガー)
黒人差別主義であるも、次第にバージルの能力と人格を認め、自身が傷つく前に、そして町民に殺される前に町を出るよう勧める人格発展途上人。最後まで手厚いフォローをするわけでは無いのは時代ゆえの事、わかるよ!
バージル(左)とギレスピー(右)

◾︎オープニングタイトルシークエンス
映画と同タイトルの主題歌 In The Heat of The Night がめっちゃ雰囲気!開始一秒で心鷲掴みにされます!クインシー・ジョーンズが作ってレイ・チャールズが歌うんですから最高に決まってます!


◾︎最初の容疑者バージル
強盗殺人事件が起きた夜、駅のベンチで列車待ちをしていた黒人男性が、高額のお金を所持していただけで、尋問すらされずに容疑者として警察署に連行される。こんな時代があったなんて…
警官を若き日のウォーレン・オーツが演じてます
黒人差別扱いに慣れているバージルは取り乱す事なく冷静を保つが、怒りの炎を灯した目がラストまで続く!

◾︎綿花畑の作業員
安い賃金でワタを摘む黒人労働者ばかりの風景を目にしたエリート刑事バージルの胸中は穏やかじゃないんだろうな。
心痛むよね
「お前には縁の無い所だな」と皮肉まじりのギレスピー


◾︎容疑者エンディコット邸訪問
自身が容疑者とされている事に腹立て平手打ちをくらわすエンディコット。しかし思いがけずバージルに打ち返され「本来なら撃ち殺している所だ」と罵る。結局のところ、エンディコットも根は黒人差別主義なのだ。
まさか、ぶたれたの…??
エンディコットの心無い言葉に、召使の黒人も一瞥をくれ無言で立ち去る


◾︎ギレスピーのめざめ
「ヤワだな。前署長なら白人に手を上げた黒人は正当防衛で射殺していた」心無い市長の言葉に目の前でガムを吐き捨て車で立ち去るギレスピー。
何かが変わっていく瞬間

◾︎囲まれたバージル
黒人という理由だけで車で煽られ、武器を持つ集団に囲まれたバージル。駆けつけたギレスピーに抑制された集団は「黒人びいき野郎」と罵るも、ギレスピーの鉄拳制裁に崩れ落ちる!
ザ・卑怯の図
こういう時警官てカッコいい

◾︎ギレスピー宅での夜
ギレスピーの自宅に招かれ、酒を酌み交わすふたり。酔っぱらって打ち解け合うなんてそんな平凡なシーンじゃないので要注意!ここ深いです
このシーン、2人のオールアドリブなんですって!

◾︎ラスト ※ネタバレ
真犯人の逮捕、自供があって、なんともアッサリな幕。続く翌朝への大胆なジャンプカットが斬新!そして列車に向かうバージルのトランクをギレスピーが持つんですよ!これは当時のタブーなんでしょうねきっと。ここに最大級の敬意が込められています!黒人差別が抜けきれないながらも、心のこもった"Thank You, Bye Bye"が刺さります!決して劇的では無いものの、リアルな照れくささと切なさがマジ刺さります!心からの笑顔を見せるギレスピーと、本編最初で最後の笑顔を見せるバージルに胸が熱くなる事必至です!!
きっと
なにかが
かわってくね! このあと肩を落として歩くロッド・スタイガーの演技が絶品です!!

監督を務めたノーマン・ジュイソンは、この作品に第40回アカデミー作品賞、主演男優賞を始め、5部門もの受賞をもたらしました。そして本作を皮切りに、以降『華麗なる賭け』『屋根の上のバイオリン弾き』『ジーザス・クライスト・スーパースター』と、まさに絶好調な作品を発表し続けたのです。昔は地味と感じた本作でしたが、大胆な構成や編集、そして暗く重い作風になりがちな題材を鮮やかにまとめた前衛的作品である事がわかります!そう、凄腕なのです!

シドニー・ポワチェが演じた黒人刑事バージルは人気キャラクターとなり、二本の続編とテレビシリーズが生まれました。映画同様、現実社会でも好意的に受け入れられた事実は喜ばしい限りです!

現在も黒人差別批判の映画が作られ続けている事は、過去の過ちを認め、共に明るい未来を目指している事の証し!時に映画は世の中を変えるんですね!

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