シリアスなテーマだけど、もたらしてくれるのは笑顔と温かい涙
アカデミー作品賞受賞も納得の傑作!!

2018年 監督/ ピーター・ファレリー

黒人差別が根深く残る1962年のアメリカ南部。その土地でコンサートツアーを決行する黒人天才ピアニスト、ドン・シャーリー。その運転手と用心棒を兼ねるイタリア系アメリカ人トニーとの友情を描いた実話の物語。

いやー素晴らしかった!(友達がいなければ)涙流して泣きましたよ!!ホント温かい涙が頬伝うヤツです!

監督が、『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』などのおバカ映画を得意とするピーター・ファレリーだとは恐れ入りました!こんな素晴らしい作品を作れるなんて、いやもう脱帽です。

残酷な差別描写で観るものを打ちのめすんですけど、それ以上に温かな気持ちにさせてくれます。さすがにコメディセンスは抜群ですね。ホント幸せな映画。

アカデミー賞受賞の脚本はもちろんだけど、演出、編集も素晴らしい。一番のお気に入りは省略がメッチャうまいとこ!シーンの結末を見せず、あとで驚かせる省略。もうひとつは、常套句を排除した省略。意外性と軽快なテンポで突き進みますねー。

助演男優賞受賞のマハーシャラは当然だけど、主演男優賞、トニー役のヴィゴがとって然るべきじゃあないですかー?20kgも体重を増やしただけでなく、ホント魅力的なキャラを創造してくれましたよ!みんな大好きでしょ!?


【この映画の好きなとこ】

◾︎ケンタッキーフライドチキン
ケンタッキー州入りした事から、ケンタッキーフライドチキンを買い子供のようにむしゃぶりつくトニー。皿とフォークが無いことから、ケンタッキーフライドチキンのお裾分けを断るドン。
手をベッタベタにしながらも平気でハンドルを握り、豪快に笑いながら食べるトニーが大好きです
恐る恐る手掴みで食べるドンもいいなあ。
このシーン観たら100%の人ケンタに走りますよね?食べ残した骨の処理や、プラカップの回収まで見事!

◾︎スタインウェイのピアノ
黒人ミュージシャンを見下す地元施工業者が、指定された高級ピアノ"スタインウェイ"ではない安物のピアノを設置。自身も黒人差別者でありながら、ドンの演奏に心を奪われたトニーが、初めて怒りを露わにするシーン。ここも上手な省略がされてます!

◾︎妻への手紙
電話代節約の為、ツアー中手紙を書くトニー。
文才の無さに呆れたドンが文章を作り、それを読んだ妻や家族が素敵な文章に心奪われる展開に。
ドンは、トニーの持つ家族への愛情を。トニーは、音楽のみならず本当のアーティストであることを再認識。
尊敬と信頼がより強くなった事を如実に物語るシーン。

◾︎黒人専用バーでの演奏  ※ネタバレ
物置の楽屋を与えられ、レストランの利用を断られたドンとトニーが演奏を拒否し、出て行った黒人専用バーで、クラシックではなく、ジャズを地元バンドメンバーと披露するシーン。演奏を心から楽しむドン。最高の盛り上がり!
ドンの持つ大金を狙った強盗の顛末も見事!
普通の映画だと、金を奪われ危険な目に遭うんだけど、そんな平凡な事してません。

◾︎Merry Christmas
激しい雪の中、ドンとトニーの車を停止させるパトカー。以前、同様の場面があり、黒人へ敵意むき出しの警官に逮捕された事から、嫌な予感しかしないんだけど…いい警官もいるんだ、
雪を凄く綺麗に撮っています!これは大スクリーンで観られてホントによかった!

◾︎ラストシーン
ツアーを終え無事帰宅したトニー。一度は誘いを断るも、シャンパン片手に現れたドン。トニーの妻が放つ一言に、劇場が笑いで包まれ、最高に幸せなハッピーエンドを迎えます。

自身はどの土地に赴いても、上質なもてなしを受けるセレブミュージシャンでありながら、あえて差別色強い土地でのコンサートツアーを行い、"人の心は変わる"ことを信じ続けたドン。
映画では2ヶ月として描いているけど、実際は一年半にも及ぶツアーだったらしいですね。ホントに嫌な思いたくさんしたんだろうなあ。
映画で描かれているエピソードは、ほとんどが実際にあったことなんですね。まさか、ロバート・ケネディとも繋がっているなんて!
トニーとドン、2人の友情はお互いが他界するまで続いたんですね。よかったー。

コレ、必見です


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