恐ろしい日本の一面を見た気がした(黒い海) | 坂道のない街(書評サイト)

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成毛さんが今年一番のノンフィクションになるとFacebookでおすすめされていたので手にした本。

 
確かに、前半は小説を読んでいるかのように引き込まれた。
第58寿和丸の漁船転覆事故。
この本を読めば事故ではなく、間違いなく事件であると確証が持てるが、国は事故として処理できるように事実を歪めて結論づけていることに驚いたし、平和な日本で恐ろしい一面を垣間見た気がした。
官僚組織は人事や組織改革などで目まぐるしく人が入れ替わるし、担当している職員が少なくただでさえ激務なので、組織人として理解できなくもないが、遺族の立場でみると、じゃあ人を増やしてちゃんと捜査しろよとしかならない。何より選挙で選ばれた人たちはそんな組織を動かすためにいるのではないだろうか。
事故にあった漁船の酢屋商会社長の野崎。彼は遺族のケアはもちろん自己原因追求のために色々手を尽くしてきた。ところが東日本大震災に見舞われて大事な漁船を失う。挙げ句の果てには国の歪められた事故の結論。
 
著者が取材を通して行き着いた米国潜水艦追突説は、過去の潜水艦事故の歴史を見ても確からしく、今後も追求していくとのことだ。
 
自分が知らなかった事件なので、この本をきっかけにこの事件は関心を持って追い続けていきたいと思った。一方で、書籍としては、後半は第58寿和丸の事故とは直接関係のない、派生した話が中心だったことから、展開がなく残念だった。
正しい事故原因が解明されることをただただ祈るのみである。