ずっと読みたかった韓国人作家、ハン・ガン。どれも面白そうで、悩んだ末に、信頼している斎藤真理子さんが訳されているのと、元気と時間があるので長編小説を、ということで『ギリシャ語の時間』を手に取りました。

 
主人公は二人。言葉を話せなくなった女と、視力を失っていく男。二人が出会うのは、古代ギリシャ語の教室。何かを埋め合わせるように、男は講師として、女は生徒として、古代ギリシャ語という、ずーっと前に死んだ言葉に向き合い続けます。
 
それで最終的に、女も男も、失ったものが回復するかといったら、そうはならない。ならないのに、何かそういうわかりやすい形ではない回復が、人間の中で訪れることがあるんじゃないか、といううっすらした希望のようなものを感じるラスト。
 
まで、非常に緻密で繊細な、絹のようなやわらかい手触りの言葉で、気の遠くなるような長さにつむいでいく。
 
衝撃の結末とかはなくて、静かに回想していくタイプのこういう作品、すごく好み。他の小説も読んでみようと思う。
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●おもしろかった韓国文学(隠居の本棚より)
 
 
 
 
 
 
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●文庫でてます