カマシ・ワシントンの「The Epic」や「ケンドリック・ラマーの「To Pimp a Butterfly」への参加をはじめ、新世代ジャズのキーマンとして引っ張りだこのサンダーキャットだが、過去にブレインフィーダーからリリースされた2枚のアルバムは、やや物足りなさを感じる内容だった。どちらもそれなりに良くできたアルバムではあるのだが、サンダーキャットがゲストとして参加していたフライングロータスの「Cosmogramma」(2010年)のようなエッジの効いたビートミュージックを期待する耳には、そのサウンドは軽すぎて肩すかしを食らったような気になってしまった。しかし、物足りなさを感じたのはサウンドだけではない。収録時間の短さもサウンドの軽さをさらに際立たせる要因となっていたように思う。1st「THE GOLDEN AGE OF APOCALYPSE」も、2nd「APOCALYPSE」も、1曲1曲の収録時間が短く、トータルでも40分に満たないボリュームであり、淡泊な印象を受けずにはいられなかったのだ。もっとも近年では、ジャズやエレクトリックミュージックにおいて、アルバム収録時間は短くなる傾向にあり、特にサンダーキャットに限ったことではないのだが・・・。
サンダーキャットのファーストアルバムのタイトルは「THE GOLDEN AGE OF APOCALYPSE」、セカンドアルバムのタイトルは「APOCALYPSE」。APOCALYPSEとは黙示録のことだが、本作のタイトルにはAPOCALYPSEの文字が使われていない。しかし、ジャケットの写真が映画「地獄の黙示録(原題:APOCALYPSE NOW)」のパロディである。サンダーキャットの黙示録へのこだわりはいつまで続くのだろう。
一方、旧エスペシアで冨永悠香と共にヴォーカルの柱を担っていた脇田もなりは、2016年11月に1stシングル「IN THE CITY」をリリースし、ソロ活動をスタート。今年2月に2ndシングル「Boy Friend」をリリースしている。「IN THE CITY」のプロデュースと作曲を手がけるのははせはじむだ。また、「Boy Friend」のプロデュースと作曲を手がけるのは、前回のブログで取り上げたマイクロスターの佐藤清喜である。どちらも星野みちるとの仕事で楽曲派から支持を集めるプロデューサーだ。
「IN THE CITY」はサルソウル風の疾走感あふれるディスコナンバーだが、マイケル・フォーチュナティーを意識したと思われるメロディにハンドクラップが合いの手を入れるなど、ミラーボールが回転する80年代のディスコをイメージしている。さらに、新曲の「Boy Friend」はシニータの「TOY BOY」を彷彿とさせるストック・エイトキン・ウォーターマン風の軽快なナンバーで、よりダイレクトにユーロビートを題材にしているのが特徴だ。
そこで気になるのは、どちらのシングルも、マニア好みのプロデューサーを起用しながらも、プロデューサーのカラーが最小限に抑えられているように映ることだ。「IN THE CITY」は、星野みちるの楽曲で聴ける親しみやすいはせはじむメロディとは一線を画しているし、「Boy Friend」も佐藤清喜にしては、カラッとしていてケレン味のない仕上がりだ。なぜだろうか?おそらく、そこには「カッコイイ」と「カワイイ」のはざまで揺れる脇田もなりというヴォーカリスト=表現者を楽曲により現前させるという意図があったに違いない。プロデューサーたちに求められているのは、自らの個性を主張することではなく、彼女にふさわしい世界観を提供することなのだ。