「Danger」Espesia
「Boy Friend」脇田もなり
昨年、3人のメンバーが卒業し、空中分解寸前だった大阪・堀江系ガールズグループのエスペシアが、既存メンバーの冨永悠香と森絵莉加の2人に新メンバーのミア・ナシメント を加えた新体制で活動をスタートした。2016年12月にリリースされた新曲「 Danger」は、これまでのフュージョン指向の流れを汲みながらもややハードなナンバーで、なんと歌詞はオール英語。80年代のイメージに寄りかかりすぎることなく、スタイリッシュな表現をめざす新生エスペシアの決意を感じさせる楽曲だった。ジャミロクワイのようなところもあり、「STAY TUNE」でブレイクを果たしたSuchmosあたりの感覚に近いかも知れない。
それは、エスペシアのトレードマークだったレトロかつキッチュなイメージを封印したミュージックビデオにも表れている。ブラジル人も加入し、ビジュアル面でも洗練された印象を打ち出して、いよいよ本格的に動きだそうという矢先の2017年1月、新生エスペシアは早過ぎる解散を発表することになる。何があったのかは謎だが、余りにも中途半端な幕切れだ。
一方、旧エスペシアで冨永悠香と共にヴォーカルの柱を担っていた脇田もなりは、2016年11月に1stシングル「IN THE CITY」をリリースし、ソロ活動をスタート。今年2月に2ndシングル「Boy Friend」をリリースしている。「IN THE CITY」のプロデュースと作曲を手がけるのははせはじむだ。また、「Boy Friend」のプロデュースと作曲を手がけるのは、前回のブログで取り上げたマイクロスターの佐藤清喜である。どちらも星野みちるとの仕事で楽曲派から支持を集めるプロデューサーだ。
インドネシアのバンド、イックバルのライブにシークレットゲストとして出場した際に、星野みちるが所属するVIVID SOUNDの関係者が居合わせて、挨拶を交わしたのが
ソロデビューのきっかけだというから、彼女は旬のプロデューサーと巡り会う幸運を持ち合わせていたのだろう。とはいえ、それはあくまでもマニアに愛されるという偏った幸運であり、ヒット曲を生み出すという幸運ではないのだが・・。
「IN THE CITY」はサルソウル風の疾走感あふれるディスコナンバーだが、マイケル・フォーチュナティーを意識したと思われるメロディにハンドクラップが合いの手を入れるなど、ミラーボールが回転する80年代のディスコをイメージしている。さらに、新曲の「Boy Friend」はシニータの「TOY BOY」を彷彿とさせるストック・エイトキン・ウォーターマン風の軽快なナンバーで、よりダイレクトにユーロビートを題材にしているのが特徴だ。
そこで気になるのは、どちらのシングルも、マニア好みのプロデューサーを起用しながらも、プロデューサーのカラーが最小限に抑えられているように映ることだ。「IN THE CITY」は、星野みちるの楽曲で聴ける親しみやすいはせはじむメロディとは一線を画しているし、「Boy Friend」も佐藤清喜にしては、カラッとしていてケレン味のない仕上がりだ。なぜだろうか?おそらく、そこには「カッコイイ」と「カワイイ」のはざまで揺れる脇田もなりというヴォーカリスト=表現者を楽曲により現前させるという意図があったに違いない。プロデューサーたちに求められているのは、自らの個性を主張することではなく、彼女にふさわしい世界観を提供することなのだ。
「カッコイイ」と「カワイイ」のはざまで揺れるということ。今にして思えば、それこそがエスペシアのコンセプトではなかったのか。新曲「 Danger」により、「カッコイイ」の世界観をアップグレードし、脇田もなりのソロプロジェクトと併走するはずだったエスペシアが解散してしまうのは、本当にもったいない気がする。

