さとうもか 〜ドリーミーポップスの奇跡 | Future Cafe

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「GLINTS」さとうもか

 

 

 さとうもか。おいしそうな名前である。シュガーベイブと上白石萌歌をつい連想してしまった。昨年8月の配信なのにダウンロードしたっきり、うっかり聴きそびれていた一枚が、さとうもかのサードアルバム『GLINTS』だ。きらめきを意味するタイトル通りに、全編がサビのようにきこえるごきげんな表題曲①「Glints」を聴いて、すぐに聴かなかったことを後悔した。②「オレンジ」は、筆者のツボであり、このブログでは何度となく登場しているフリッパーズ・ギター路線ど真ん中のポップスで、しかもあざとくないところが素晴らしい。この冒頭2曲を聴いただけで、完全にやられてしまった。

 続く③「Poolside」や④「愛ゆえに」もリラックスした雰囲気で悪くない。⑥「Strawberrry Milk Ships」はオールディーズというかA&Mポップス風で、スティールパンの音色が涼やかな南国気分満点の⑧「アイスのマンボ」と並んで、ハッピース(笑)な気分にしてくれる。⑦「あぶく」や⑨「My Friend」、⑩「ラムネにシガレット」のようなアンニュイな楽曲は、ときにaikoを、ときにユーミンを彷彿とさせる。

 このアルバムを聴いて、筆者を含めた中高年リスナーが喜びそうなシティポップや渋谷系の影を見出すのはたやすい。歌詞の中にも渋谷系のキーワードのひとつである〈カメラ〉やシュガー・ベイブの〈土曜日の夜〉を連想させる〈金曜の夜〉という言葉が出てきたりする。だけど、さとうもか本人はそれほど意識はしていないだろう。そこが、シティポップや渋谷系のフォロワーとは決定的に違うところだ。以前、あいみょんがテレビ番組でお気に入りの楽曲を紹介するという企画でフリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」を取り上げて、アートワークや映像も含めて洒落た作り込みに感心したというようなことを語っていて、オザケン単体じゃなくてフリッパーズ・ギターというところが“そこなの?”と意外に思ったが、きっとそれくらいのライトな感覚なのだ。(スピッツへの偏愛は特別かも知れないが)

 ファースト『Lukkewarm』、セカンド『Merry go round』、最新シングル「Love Buds」も聴いてみたけど、打ち込み主体の最新作はイメージが異なるが、『GLINTS』ほどシティポップや渋谷系風でもない。洋楽も邦楽もフォークもテクノも分け隔て無く聴いてきた新しい世代のシンガーソングライター。それが、さとうもかなのだろう。だからこそ、冒頭の2曲は筆者にとって奇跡のようなポップスなのだ。

 とはいっても、繰り返し聴くならファーストやセカンドの方が深みがあって飽きないのだろうが。