新しい学校のリーダーズ 〜 令和を駆け抜ける新感覚歌謡 | Future Cafe

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「若気ガイタル」新しい学校のリーダーズ

 

 

 JKの制服姿で歌い踊る4人組ヴォーカル&ダンスユニットの動画が気にはなっていたものの、アルバムが出ていることも知らず、ちゃんと聴いたこともなかった。海外でもネットで注目されているという話を耳にして、一応チェックをしておこうと思い、アップルミュージックで検索してみて、すでに2枚もフルアルバムを出していることを知った。しかも、ファーストアルバム『マエナラワナイ』は2018年のリリースというから、じつに3年も前のこと。YOASOBIのときもそうだったが、私自身のセンサーがSNS時代のスピード感についていけていないのを実感する。プロデュースは、全曲、H ZETT Mとなっているが、ジャズ系のロックを多く手がける鍵盤奏者で、東京事変やPE'Zとも仕事をした実績もあるらしい。

 PVから受けるイメージで、どうせありがちなメンへラ系のラップだろうと高をくくっていたのだが、ディープ・パープル「ハイウェイ・スター」のイントロをアレンジした「席替ガットゥーゾ」で幕を開けるファーストアルバムを聴いて彼女たちに対する印象はがらりと変わった。何でもかんでも昔が良かったとは思わないが、これは70年代東映が誇るピンキー・バイオレンス映画の代表作〈恐怖女子高校シリーズ〉や〈女囚さそりシリーズ〉のアングラ世界をクエンティン・タランティーノの『キル・ビル』以降のセンスでリクリエイトした新感覚歌謡なのだと。実際、収録曲の「毒花」は2017年に剛力彩芽主演でオンエアされたTVドラマ『女囚セブン』の主題歌として作られたと言うから、そのような感想はあながち昭和男の妄想ではなかったようだ。栗山千明演じる『キル・ビル』のゴーゴー夕張も武器を持ちセーラー服を着ていたから、新しい学校のリーダーズは、70年代東映映画の孫引きと捉えることもできるだろう。ゴーゴー夕張は東映ドラマ『スケバン刑事』の系譜をなぞっているから、70年代東映映画のひ孫引きといった方が正確かも知れないが・・・。2010年に始まったAKB48の『マジすか学園』も同様の系譜だ。

 とはいえ彼女たちのワールドを構成しているのは昭和的なノスタルジーだけではない。それは、彼女たちのパブリックイメージの一部に過ぎない。「試験前夜」は、ア・サーティン・レイシオやポップグループさながらのポスト・パンク/オルタナティブ・ファンクだし(日本のガールズバンド、Chaiにも似ている)、「チラチラチラミー〜試験当日〜」のように荒削りなブレイクビーツとチープなテクノを組み合わせた曲も興味深い。「楽園にて、わたし地獄」や「ストリッパーに栄光を」の楽曲としての美しさには目を見張るべきものがある。禁断の多数決や富士山のご当地アイドル3776、椎名林檎、パフィー、小島真由美、ザ・スリッツ、ザ・レインコーツなど、さまざまな名前が浮かんでくるが、はっきりと言えることはギターやピアノ、ドラム、サックス、トランペットの確かな技術と意表を突いた導入が彼女たちのアルバム最大の魅力になっていると言うこと。とりわけ、ライトハンド奏法などを組み込みながらスピーディに展開するハードロック調のギターは破壊力抜群だ。「SNS24時」では、間奏ごとに用意されたサックスソロ、トランペットソロ、ギターソロが最高にスリリングなリレーを聴かせる。

 今年3月にリリースされた「フリークス」は、ラッパーにWarren Hueを迎え、EDMとアシッドハウスとヒップホップを融合した曲で、これまでとはいささか毛色が異なる曲に仕上がっている。ミュージックビデオもエド・シーランを意識したかの如く、相撲レスラーが登場するB級映画ノリで海外うけを狙っているようだ。