Future Cafe

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音楽レビューのようなもの〜TECHNO、JAZZ、BREAKBEATS etc

「A Little   more」アンヘル

 

2025年のシャネル新作香水のCMが原点回帰といった趣で,目が離せない。主役は、CMソングも手がけるシンガーソングライターアンヘル。作品からフレンチポップの新鋭と決めてかかってしまうところだったがベルギーのアーチストらしい。
鮮やかな色彩感覚は「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」のころのジャック・ドゥミー映画を思わせもするし、金髪が眩しいアンヘルは若き日のドヌーブみたいだ。そう連想してしまうのも私の年齢によるもので、実際にはK-POPあたりからの影響かも知れない。ローラン・ガルニエを筆頭に数多くのテクノ系アーティストしたFコミュニケーション、ポップハウスの王様ダフトパンクなどが記憶に新しいところだが、忘れてはならないのはそうした間にもラパレイユフォトなどフレンチポップの伝統を踏まえたレーベルが存在し、ハイセンスな作品を世に送り届けてきたということ。

フレンチポップだからといってフランスとは限らない。ベルギーのクレプスキュールレーベルはイザベルアンテナなどフレンチポップポップスの進化型とも言うべきアーティストを育ててきた。アンヘルの登場もクレプスキュールあってこそといえるだろう。

 

「L'll Like You」ILLI

 

 

 

  BTSの成功以来、アメリカばかりに顔を向けてきたK-POPが、ようやくわれわれ歌謡曲ファンのもとへと帰ってきた。 デビュー曲が大バズリしたILLITの新作EP「I’ll Likel You」は、そんな気にさせられるアルバムだ。

 電動キックボードで走るメンバーたちの姿をとらえたシャレオツ写真が印象的なジャケットに見られるセンスは、90年代に北欧ポップブームをけん引したスェーデンのウェストファブリケーション等を思い起こさせもする。 だが、この辺りのオシャレ感覚は時としてセンスエリートの失笑を買いやすいのも事実だろう。 音楽的にも共通している点が多いが、これは、ファッションにおる辺境ならではの面白さと言えなくもない。

そんなことを考えながら1曲目を聞いていると、2曲目のイントロで聞き覚えのあるメロディが流れてきた。 このモノローグはフランソワーズ・アルディの歌唱で有名な「さよならを教えて」に違いない。 このようなフレンチポップスへのオマージュは、むしろ日本のお家芸であり、歌謡曲や渋谷系の常套句であった。かつて 韓流は日本の孫引きが多かったが、SNS時代の今は流行らない。 孫引きとは書いたものの、近年では逆転現象も起こっている。

 これはK-POPの新しいトレンドになるかもしれない。そう思ったのは、日本人メンバー3人によって構成されたTwiceの

別動隊MISAMOの『HAUT CTURE』に出会った時。 パリコレをはじめ、ファッション誌のパロディのようなデザインが、新藤三雄を連想させるセカンドだ。 アップテンポなハウスナンバー「RUNWAY」、ドリミイーで耽美な「Daydream」、ワイルドなヒップホップ「Money In myPokhet」など、多彩な展開は近年の韓流では珍しい。

 「New Look」はレジェンドモデルTwiggyへの憧憬を歌った安室奈美恵のカヴァー曲だがそれより以前の75年にピチカートファイブが「Twiggy Twiggy」の中で「Twiggyみたいなポーズで~」と歌っている。 別に、渋谷系には先見性があったといいいたいわけではない。 昭和がエモいとか懐かしんでいるうちに大きく水をあけられていることになる可能性もなくはない。ムーブメンを自ら仕掛けて世界へおろしていく。フレンチポップスも安室奈美恵もそのためのパーツに過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

                                       

                                                                                                                                       

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

    

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

                                                                                                                                                                                                                         

 

 

 

 

 

 

 

「カスケード」フローティング・ポインツ

 


この傑作を聴いていて、宇多田ヒカルの『BADモード』を聴き直さなければならないと思った。『BADモード』は海外の敏腕クリエターやプロデュ―サーを起用したアルバムだったが、当時リミックスという手法が下火だったのに加え、個人的な興味がボカロや韓流にあったため時代遅れな感じがぬぐえなかったのだ。かつてポストモダンという言葉が喧しく騒がれたことがあったが、それにのっかればミックスであれ、ボカロであれ、カリスマ性を多方向に分散させた「小さな物語」といえるだろう。ただ、リミックスによって曲を変容させる手法より、メディア自体を多様化させるやり方の方が面白いし、真新しく見えたとしてもおかしくない。プライベートな風情のジャケットを改めて眺めているとACクック、スクリレックスと並んでクレジットされているのは、フローティング・ポインツの名前。誤解を恐れず言えば、『BADモード』は宇多田流ハウスアルバムである。本作『カスケード』は1曲の中に多くの物語を詰め込んでおり、一見イエスやピンクフロイドのような「大きな物語」にも聞こえるが、実際には『BADモード』からハウスやエレクトロの成分を取り出して拡張させたアルバムなのだ。

 

 

「Odyssey」Nubya Garcia

 

 

 コロナ禍以降、鳴りを潜めるかのように、(エズラ・コレクティヴなど一部のアーチストを除いて)沈黙を保ち続けて来た南ロンドンのジャズシーンから女性サキソフォニストのリーダー作が登場した。まるで、浜崎あゆみのような雰囲気のポートレイト写真のアルバムやテーマ曲の「オデッセイ」にみられるけれんみたっぷり王道感全開のアプローチ、新進気鋭のエスペランサ・スポルディングの起用。ここまで聞いて、新世代サキソフォニスト、カマシ・ワシントンの名を連想する人も少なくないだろう。

 実際のところ、このアルバムではドラマチックなストリングスとボーカルによって奥行きのあるゴージャスな世界観を作り出すことに成功しており、そうした意味においてはカマシ・ワシントンへの挑戦状といった側面がある事は否めない。①「Dawn」や②「Odeesey]」などは、ヌバイアのコンポーザーとしての才能が遺憾なく発揮された力作といえるだろう。ロバート・グラスパーなどを聞いていても思うのだが、ある作品のクォリティを決めるのはプレイヤーとしての技能ではなくコンポーザーとしての力量なのではないか。こんな極論めいたことを口にするだけで、インプロビゼーション至上主義のジャズ評論家化諸氏の顰蹙を買うだろが、とりわけ「いま」というこの時代にあっては、チャーリー・パーカーのアドリブより、ギル・エバンスのアンサンブルの方が重要度が高いつても過言ではないだろう。

 もちろんダブステップ以降のビートを取り入れた③「Solstice」やジャマイカのダブを現代jazzジャズとして進化させた⑫「Tiumphane」など聴きどころは豊富だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 NHK大河ドラマ「光る君へ」は音楽の使い方が面白い。主人公の紫式部と藤原道長をめぐる物語だから、背景となっているのは平安時代だ。使われているのは、ドラマのBGM然としたサウンドだけではなく、コンテンポラリー・ジャズやネオ・クラシカル。背景とミスマッチかといえばそんなことはなく、むしろ違和感が音楽と時代背景の双方にコントラストを持たせ、お互いを際立たせているとさえいえるだろう。(「鎌倉殿の13人」のスピンオフ紹介でも、ギタリスト、ポール・ギルバートの名前がクレジットされていたから、大河ドラマではこの手の異種格闘技的なサウンド使いは最近の傾向なのかもしれない)。烏帽子をかぶたった大臣たちが、夜な夜なコンテンポラリージャズの調べにいざなわれるように集い、語り合うシーンは一興だ。

 それと同じような体験をわれわれにもたらしてくれたのが、パリオリンピック2024の開会式だ。

その舞台となったのは、セーヌ川とその周囲に点在するノートルダム寺院、シテ島、マリーアントワネットが幽閉されたコンシェルジュリー、市庁舎、造幣局、ルーブル美術館、駅舎を改築したオルセー美術館、コンコルド広場、パンドリー橋、トロカデロ広場、エフェル塔など歴史的建造物の数々だ。

 バンドネオン奏者をフィチャーした昼間の部ではいかにもパリらしいクラシックやポップス、ワールドミュージックがかかり、かいちっくなかには日本でもヒットした映画「ラ・ブーム」の挿入歌「愛のファンタジー」のアレンジもあった。サティの起用もその延長線上にあるといえるだろう。その他にも、ビゼーのオペラやレディガガのパフォーマンス、フレンチカンカン、ミュージカル「レ・ミゼラブル」、男女のラッパーなど、盛り沢山。

 問題は夜の部だ。ブラックボックス「RIDE ON」をサンプリングしたイタロハウス、何度も登場するパリ・オリンピ

ックのテ-マはミュンヘンディスコ風に装飾された。その間隙を埋めるようにながれるUKガラージュ、きらびやかなフレンチハウス。あたかもユーロのサウンド博覧会といった趣である。他国への目配りをうかがわせるランバダや拡大するEUに対応したヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」も。ダンサーたちの動きとシンクロするかのように、それらのサウンドは、古色蒼然としたパリの街を極彩色に、モダンに、浮かび上がらせる。ジャズの音色が平安時代をよみがえらせたように。ただ違っているのは中沢進一「アースダイバー」に倣えば、最深部にっカタコンベを擁し、ナポレオンやハプスブルク家の記憶をミルフィーユ構造の中に内在させたパリは、もともと懐がふかく、モダンとの相性も良いこと。パドロ・アルドモバルの世界観も、ディバイン風ユニセックスの巨漢も軽々と飲み込まれてしまう。歴史の舞台が現代の舞台と重なるところはさすがはパリだ
 そして、ネットフリックスの連続ドラマ「地面師たち」。土地の所有者になりすまし、大金をせしめる地面師たちを豊川悦司、ピエール瀧、綾野剛、小池栄子が演じたドラマのサウンドトラックを手がけたのは石野卓球だ。ピエール瀧の演技力は同じネットフリックスの「サンクチュアリ」でも証明済みだが、薬物に手を染めた役者に再チャレンジの機会が用意されているのは良いことだと思う。石野卓球とピエール瀧による事実上の電気グルーブの

再結成というわけだ(解散とはひとこともいってないが)。      

 惜しむべくは、その使われ方。任侠ドラマとテクノの融合は、「光る君へ」やパリオリンピックに通じる新鮮さがある。それなのに無機質な音のグリッドが、乾いたサスペンスを盛り上げるところまで達していない。