「カスケード」フローティング・ポインツ
この傑作を聴いていて、宇多田ヒカルの『BADモード』を聴き直さなければならないと思った。『BADモード』は海外の敏腕クリエターやプロデュ―サーを起用したアルバムだったが、当時リミックスという手法が下火だったのに加え、個人的な興味がボカロや韓流にあったため時代遅れな感じがぬぐえなかったのだ。かつてポストモダンという言葉が喧しく騒がれたことがあったが、それにのっかればミックスであれ、ボカロであれ、カリスマ性を多方向に分散させた「小さな物語」といえるだろう。ただ、リミックスによって曲を変容させる手法より、メディア自体を多様化させるやり方の方が面白いし、真新しく見えたとしてもおかしくない。プライベートな風情のジャケットを改めて眺めているとACクック、スクリレックスと並んでクレジットされているのは、フローティング・ポインツの名前。誤解を恐れず言えば、『BADモード』は宇多田流ハウスアルバムである。本作『カスケード』は1曲の中に多くの物語を詰め込んでおり、一見イエスやピンクフロイドのような「大きな物語」にも聞こえるが、実際には『BADモード』からハウスやエレクトロの成分を取り出して拡張させたアルバムなのだ。
