東京の鍛冶と江戸時代の包丁の巻(ベタが基本の理由) | ogricat-creationのブログ

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趣味の写真と、包丁を研ぐことなどを書いていこうと思います。
カメラはソニーのα7Ⅲを使用しています。

かつお節削り器の台を調整して中々調子よく鰹節が出来ていました。

理想のかつお節は不明ですが薄くてピカピカの削り節です。

久しぶりに菜切り包丁を研ぎました。写真は日本橋の「木屋」さんで購入した重房銘の包丁です。重房銘の包丁はこの他に2本所有しています。他の包丁は信州で刀鍛冶をしているかたから縁があり譲って頂いた柳刃と出刃包丁ですが、そちらは古い物に成ります。柳刃包丁は重房に送り鞘を作って頂きました。包丁の形が独特で通常の鞘では収まりません。

鉋を研いで包丁を研ぐ事も上手に成った様に感じます。基本的な事は同じなのだと思いますが、刃の作り方などが少し違うように思います。

基本的には両刃です。刃は軽いハマグリ刃となります。

さて、今日の本題と成ります。

突然鰹節が削れない様に成りました。全く鰹節が掛かりません。

原因は恐らく研ぎに有ります。下の図ですが理想が30度ならば、30度で研ぎ進めれば最終的に理想の刃になると考えました。実際に最初は良かったと言えます。
*図では分かり易い様に極端に書いています。元の刃角が25度です。それを45度にしたい場合は緑の線の様に研ぎ進めればいずれは45度の刃に成ると考えました。
 

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しかし、研ぎ進めるうちに(と言ってもほんの少しだけです)手振れにより刃が丸くなったのだと思います。

*ベタに付けて研ぐ事と、刃先を30度に立てて研ぐでは難しさが違うのだと思います。結論から言えばベタに研ぐ事の方が簡単と分かりました。

 

下の図ですが、研ぐ際の圧力を表しました。ベタに研ぐ場合は均等に力が配分されます。しかし図の右の様に刃先だけ研ぐ場合どうしても手振れや砥石の凹みにより刃先の維持が困難になるのだと考えました。

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上の図の中は砥石が凹み丸刃(マルハ)になった様子です。ベタの場合は均等に力が入るためにある程度砥石の平面が維持されます。しかし刃先だけを研ぐ場合技術が伴わないと力が入り砥石が凹みます。

*今回は研ぎに成れたせいでいい気に成り力任せに研いだ結果とも言えます。

一番下の図ですが、力配分のまずさから段刃になった様子です。

 

これはまずいと考えました。実際に刃先が丸く成ったことも分かりました。ダイヤモンド砥石で(300番と1000番)研ぎ修正をしました。

切刃も丸く成っています。どうしましょうか?

 

かつお節削り器の台を出すとクレアが飛んできます。大好きな鰹節が貰えると思うからです。しかし2度研いでも削れません。鰹節が滑ってしまいます。

私「ごめんね、クレア」

妻に言いました。

私「刃物屋さんに行って来ます。かつお節削り器の刃を見て貰い相談してみます」

妻「あいよ」

刃物屋さんに行き相談しました。裏切れの事なども気になっていました。

結論としては、ほんの15分程度研いで直してしまいました。

私「ビックリです。どうしてそう簡単に直るのですか」

店主「そんなことないよ」

私「刃が丸く成ったことが原因ですか」

店主「そんなことも無いと思うけどね。でもすこし段がきつかったのかも知れないね」

少し段が有ったり、ハマグリでも大丈夫との事です。今回は段がきつく以前紹介した、逃げ角が無くなった為との事です。

*今回はかつお節削り器を持参しましたので台も見て貰い調整して頂きました。

私「4日くらい前に台は調整しました」

店主「台頭が高いね」

ガリガリ

 

店主と包丁談義などしたのですが、下の包丁をみせて頂きました。江戸時代の包丁との事です。

店主「”大半”とは鉄の名前だよ」

私「そうなんですね」

 

刃物に使われる鉄の中で地金の質の話をお聞きしました。

鉋には波鉄(正しくは並鉄と書きます)と釜地とある事や包丁には極軟が良いなどです。

*カンナには波鉄が良いが現在では希少との事です。良い鉋には釜地が使われるとの事です。釜地の特徴として粘りが少ないため鑿や包丁には粘りの有る極軟が使われるとの事です。

注意:会話には気を付けていますが、私の聞き間違いもある場合があります。専門用語が多く理解をしていないためご了承ください。

店主「包丁をみてよ。粘りが有るでしょう」

私「確かに硬そうには見えないですね」

店主「昔は玉鋼を使って鉋刃を作ったけどコストが掛かるんだよ」

*玉鋼で作った鉋なども見せて頂きました。

地金は柔らかい方が良いとの事です。考えてみればハガネは一定の基準が有ります。炭素の含有量などで青や白などとも聞きます。今まで地金にはフォーカスを当てませんでしたが鉋を見るうちに良く地金の話題を聞く様に成りました。

私「地金は柔らかい方が良いのですか」

店主「だって研ぐのも楽でしょ」

私「確かに」

 

 

帰宅してクレアにかつお節を削ってあげました。

本日のまとめ

 日本包丁研ぎ協会の藤原理事長からも以前、昔の刃物の方が硬くなかったとお聞きしました。現在の主流なのでしょうか硬い刃物が多くなっているそうです。

 

私「以前に大阪の金物屋さんから玉鋼の剃刀を買いました」

店主「そうなんだ」

私「5000円程度だったかな」

店主「本物では無いよ」

私「え、、、でも本物ですかと聞いたら本物だよって言われました」

店主「その値段では買えないよ」

さて、今度みてもらう事にしたいと思います。

 

お店には「千代鶴是秀氏」の書が掛けて有ります。店主が生まれ一歳のお祝いに書いて頂いたそうです。小刀も有るとの事です。

私「東京の刃物ってどうなんですか」

店主「段違いで上だよ」

私「そうなんですか。新潟や堺、三木など聞きますが」

店主「当時は東京鍛冶と比べるとレベルが違ったよ」

私「今はその東京が途絶えたのですね」

店主「そうだね」

昔は、東京の本所には鑿鍛冶が、三ノ輪には鉋鍛冶が沢山有ったそうです。そして店主の使っている道具の話を聞くと、

店主「これを作った鍛冶は亡くなっているよ」

と聞きます。良い職人が少なく成っているのかもしれません。

私「切り出しを一つ欲しいのですが」

店主「この切り出しが良いよ。昨年末で廃業したよ」

また一件良い鍛冶屋が閉じたのかもしれません。